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卒業後
1312 星暦558年 桃の月 11日 書類作業(4)
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「毎年1枚使う事にして、横長な紙の左側へ商品の名前を列挙して、残りの右側スペースに縦線を引いて取り敢えず10年分収益を書き込めるようにしたらどうかな?
10年過ぎてまだ収益があったら横に紙を張り付けたらいいし。
費用に関してはどうせ商品の特質とか何を試作したかとかで色々変わるから比較する必要はないってことで無視。
毎年の収益だけ見比べるようにしようよ」
シャルロが手ごろな紙を手に取り、横向きにして商品名を書き並べ始めた。
「確かに毎年1枚10年分と割り切って考えれば、横に揃える手間が減るか」
アレクがシャルロの書き込んでいる紙を見ながら頷いた。
「だったらこの工房を始めた頃からの表を各年ごとに作らないとだな。
去年の分をシャルロ、一昨年の分を俺がやるとして、555年、554年、553年、552年の4年分が必要か」
最初の頃はあまり大した開発はなかった気がするが。
初年度は空滑機《グライダー》の開発と、あれの貸し出し事業と、あとは遺跡発見やその手伝いで一杯だった気がしないでもない。
資金節約のために会費を払わずに魔術院の当番とかもやっていたし。
あと、空滑機《グライダー》の貸し出し事業は特許収入とはまたちょっと違う気がする。何年か前にあれも日常的な運営を任せていた従業員達が買い取りたがったから殆どの所有権は売り払ったので、収入がぐっと減った代わりに費用も無くなった。
まあ、そこら辺の書き出しはアレクに任せよう。
「最初の2年分のはまとめた表がある。
3年目になってなんか色々ごちゃごちゃになって諦めたんだ。553年と554年のだけ商品を書き出すのはすぐできるが、毎年の収益も書き込んでいく必要があるな」
アレクが工房の奥に書類を取りに戻った。
キーナ達の部屋に持って行ってなかったのか。
まあ、あっちは契約関連の書類と、支出の領収書とかが多くて、アレクが個人的にまとめた資料とかはこっちなのかな?
と思っていたら、アレクが紙を数枚持ってきて作業机に置き、扉の方に向かった。
「過去4年分の収入関係の資料が必要だから、運ぶのを手伝ってくれ」
あ、やっぱあっちに色々あるんだね。
工房を始めてからの特許申請の写しは全部ここにあるけど、収入関係の詳細や収支報告書はあっちなんだろう。
そう考えると、俺とシャルロの作業(勉強?)用の2年分の資料はアレクが前もって持っておいてくれていたのか。
という事で、アレクが555年と554年に特許申請した商品を書き出している間に俺とシャルロも去年と一昨年の分を書き出した。列挙して1年分の収入を書き込み終わったので、俺の(というか一昨年の)にシャルロが去年分の収入を書き込むように渡す。
俺はアレクが過去に作った552年と553年の表を同じ形式で写しなおして一昨年の収入にあった金額を一昨年の年の列に書き込もう。
「ほい、去年の収入で該当するのをこれの去年の列に書き込んでくれ」
書き込み終わった552年のをシャルロに渡す。
なんかこう、仕事が分散できるし毎年の収入の流れが目に見えて良い感じだが、書類があちらこちらに散らばって後の整理が大変そうだ。
とっ散らかしちまった一昨年の書類をまとめて特許収益の書類だけ別にしておき、555年の書類の山を再度手に取って553年の商品の収入を書き込んでいく。
「こっち終わったよ~」
シャルロが声を掛けてきたので、ちょっと待ってもらってから553年と552年の表を交換した。
「なんかこう……きりがない感じだな」
「え~、でもまだ6年分だからなんとかなるでしょう。
早い段階で思いついて良かったじゃん」
シャルロがのほほんと書類を捲りながら言った。
そうか??
まあ、10年とか20年分を表に書き出して確認するなんてことになるよりはましだが。
と言うか。
「そういえば、国税局って過去の間違いは何年分までさかのぼって罰金を取るんだ?」
要はこういう比較チェックをするのって国税局への報告が間違っていないかなんだろ?
遡らない年度の分までやらなくてもいい気もしないでもない?
「何を言っているんだ。
国税局よりも、これは私たちがどこかで横領されていないかとか騙されていないか等を確かめるための作業だ。
相手が破産していたら取り返せないが、間違いを探し出すのに時効はない」
アレクが書類から顔を上げてきっぱりと言い切った。
あ~。
横領の返還債務とかに時効があったとしても、アレクなら向こうから『返させてください!!』って泣いて頼むまで絶対に調べまくって追い詰めそう。
まあ、俺だって誰かに俺らの工房の収入を騙し取られていたとしたら、相手がぎゃふんというような悪事の書類とか探すのに頑張るけどさ。
いざとなれば、悪事でため込んだ資金を直接回収してきても良いんだし。
10年過ぎてまだ収益があったら横に紙を張り付けたらいいし。
費用に関してはどうせ商品の特質とか何を試作したかとかで色々変わるから比較する必要はないってことで無視。
毎年の収益だけ見比べるようにしようよ」
シャルロが手ごろな紙を手に取り、横向きにして商品名を書き並べ始めた。
「確かに毎年1枚10年分と割り切って考えれば、横に揃える手間が減るか」
アレクがシャルロの書き込んでいる紙を見ながら頷いた。
「だったらこの工房を始めた頃からの表を各年ごとに作らないとだな。
去年の分をシャルロ、一昨年の分を俺がやるとして、555年、554年、553年、552年の4年分が必要か」
最初の頃はあまり大した開発はなかった気がするが。
初年度は空滑機《グライダー》の開発と、あれの貸し出し事業と、あとは遺跡発見やその手伝いで一杯だった気がしないでもない。
資金節約のために会費を払わずに魔術院の当番とかもやっていたし。
あと、空滑機《グライダー》の貸し出し事業は特許収入とはまたちょっと違う気がする。何年か前にあれも日常的な運営を任せていた従業員達が買い取りたがったから殆どの所有権は売り払ったので、収入がぐっと減った代わりに費用も無くなった。
まあ、そこら辺の書き出しはアレクに任せよう。
「最初の2年分のはまとめた表がある。
3年目になってなんか色々ごちゃごちゃになって諦めたんだ。553年と554年のだけ商品を書き出すのはすぐできるが、毎年の収益も書き込んでいく必要があるな」
アレクが工房の奥に書類を取りに戻った。
キーナ達の部屋に持って行ってなかったのか。
まあ、あっちは契約関連の書類と、支出の領収書とかが多くて、アレクが個人的にまとめた資料とかはこっちなのかな?
と思っていたら、アレクが紙を数枚持ってきて作業机に置き、扉の方に向かった。
「過去4年分の収入関係の資料が必要だから、運ぶのを手伝ってくれ」
あ、やっぱあっちに色々あるんだね。
工房を始めてからの特許申請の写しは全部ここにあるけど、収入関係の詳細や収支報告書はあっちなんだろう。
そう考えると、俺とシャルロの作業(勉強?)用の2年分の資料はアレクが前もって持っておいてくれていたのか。
という事で、アレクが555年と554年に特許申請した商品を書き出している間に俺とシャルロも去年と一昨年の分を書き出した。列挙して1年分の収入を書き込み終わったので、俺の(というか一昨年の)にシャルロが去年分の収入を書き込むように渡す。
俺はアレクが過去に作った552年と553年の表を同じ形式で写しなおして一昨年の収入にあった金額を一昨年の年の列に書き込もう。
「ほい、去年の収入で該当するのをこれの去年の列に書き込んでくれ」
書き込み終わった552年のをシャルロに渡す。
なんかこう、仕事が分散できるし毎年の収入の流れが目に見えて良い感じだが、書類があちらこちらに散らばって後の整理が大変そうだ。
とっ散らかしちまった一昨年の書類をまとめて特許収益の書類だけ別にしておき、555年の書類の山を再度手に取って553年の商品の収入を書き込んでいく。
「こっち終わったよ~」
シャルロが声を掛けてきたので、ちょっと待ってもらってから553年と552年の表を交換した。
「なんかこう……きりがない感じだな」
「え~、でもまだ6年分だからなんとかなるでしょう。
早い段階で思いついて良かったじゃん」
シャルロがのほほんと書類を捲りながら言った。
そうか??
まあ、10年とか20年分を表に書き出して確認するなんてことになるよりはましだが。
と言うか。
「そういえば、国税局って過去の間違いは何年分までさかのぼって罰金を取るんだ?」
要はこういう比較チェックをするのって国税局への報告が間違っていないかなんだろ?
遡らない年度の分までやらなくてもいい気もしないでもない?
「何を言っているんだ。
国税局よりも、これは私たちがどこかで横領されていないかとか騙されていないか等を確かめるための作業だ。
相手が破産していたら取り返せないが、間違いを探し出すのに時効はない」
アレクが書類から顔を上げてきっぱりと言い切った。
あ~。
横領の返還債務とかに時効があったとしても、アレクなら向こうから『返させてください!!』って泣いて頼むまで絶対に調べまくって追い詰めそう。
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