シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

1314 星暦558年 桃の月 11日 書類作業(6)

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「あれ、そういえば沈没船の中身をオークションにかけた時の収入に関する税金は?」
 シャルロが手を止めたまま次の疑問を挙げた。
 ……。
 そういえば?
 卒業以来ほぼ毎年、それなりに何か新しい商品を開発できたと思ったら俺たちは遺跡発掘のお手伝いか沈没船探しをしている。遺跡発掘の手伝いはまだしも、沈没船をみつけた時は大抵は売った時にそれなりな金が入っている。
 あれの税金ってどうなっているんだ?
 はっきり言って、今までは金を受け取っても全部工房の収益として認識されていてアレクがまとめて国税局に報告して税金を払っていると思って安心していたんだが。個人の収入というものもあるとなると、もしかして脱税しているのか、俺?!
 別に何が何でも税金を払わねばとは思っていないが、下手に脱税していたことがばれて軍や国に違法行為を見逃してもらう代わりにこき使われる羽目になるのは嫌だぞ。

「元々、アファル王国の公的オークションは手数料と一緒に税金も引いた後の金が払い込まれるんだ。
 大金が手に入ったと散財した者が、年初明けに税金を払えなくて破産申告するなんてことが過去にはちょくちょく起きたから」
 アレクが教えてくれた。
 ははは。
 確かに、オークションに物を売るのなんて大抵は一発限りの収益だ。
 それを使い切って、後から税金を払えと言われても払うような資金がない人間だって多そうだ。

「そんじゃあ俺たちは特に心配しなくていいんだな。
 ちなみに、いつかパストン島の利権分の金を引き出した場合、それに対する税金とかってあるのか?」
 俺の個人的収入は長や知り合いからの人に言えない裏金っぽい灰色な依頼か、沈没船か、パストン島の利権ってことになる。
 灰色な依頼は国に知られることはない筈だし、軍や国税局とかからの依頼は税金はかからないと聞いたから、心配はいらないだろう。
 で、沈没船もオークションで売った際に税金を払っているとなったら残るはパストン島の利権だ。
 手続きが複雑そうで面倒だから取り敢えず他に収入がある間は引き出すつもりはないが、何かの際に必要になって使った後に、税金を払えと言われて慌てる羽目にはなりたくない。

 いざとなれば国を捨てるという手もあるが、そうするとパストン島の利権も取り上げられそうだからなぁ。
 平民と貴族や豪商の間に横たわる理不尽に我慢が出来なくなって国を捨てるっていうのは構わないが、税金が払えなくてっていうのは流石に避けたい。

「貴族が領地の収入から国税を払った残りで服を買っても税金を掛けられないのと同じで、土地や街の利権の税引き後の利益を引き出すのには税金はかからないよ。
 じゃないと二重課税になるだろ?
 貴族たちが黙っちゃいないさ」
 アレクが笑いながら言った。

 確かにね。
 俺達平民が文句を言ってもプシっと国税局に叩き潰されそうだが、領地持ちの貴族は治安保持や他国からの防衛のためにそれなりに戦力を持つからな。
 国が税金を取るのに貪欲になりすぎると、しっぺ返しは物理的に痛くなりそうだ。
「そっか。
 じゃあ、これを纏め上げれば安心ってところだね!」
 シャルロが収入を書き込み終わった553年の紙を作業机の真ん中に置いた。

「だな。
 それじゃあこれとこれもやってくれ」
 アレクが554年と555年の紙を俺とシャルロに渡してきた。
 早いな!!!
 かなりあやふやにしか覚えていない俺と違って、アレクはちゃんと大体いつ何を開発したか覚えていて、それを確認して書き出しているだけなのかね?

 まあでも表になっていて書き出されている商品名に該当する収入が魔術院かシェフィート商会からの計算書に記載されていないかざっと確認して、あったら書き込むだけだ。それほど大変じゃないからこれならまあ良いかな。
 これを毎年の計算書と一個一個見比べながら年ごとの収入が妥当か吟味するなんて、面倒過ぎて俺にゃあ無理だ。

 取り敢えず全部書き出し終わった後にどのくらい年ごとに増えたり減ったりしているかとかを確認して、アレクに何か変な動きがあるか聞けばいいだろう。

 ……来年はこの作業をキーナ達に頼んじゃいけないのかな?
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