レイスコープ ~アーサー・ワトキンスとレイライン~

よっしー

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第一話(2)

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「皆さん、今から行く所ではお行儀よくするんですよ!」

 授業の一貫で街の近くにある遺跡へと向かう狭いバスの中で周囲に響く甲高い声で教師が生徒たちに注意を促す。
 勿論、生徒たちはそんな教師の声など聞こえていてもまったく気にはしない。
 それぞれが気の合うグループで塊、好き勝手に話している。
 アーサーも仲良い友達と色々な話題で花を咲かせていた。
 
「おい、ワトキンス!お前、昨日は誕生日だったんだろ?ちゃんと祝って貰えたのかよ?お前ん家って貧乏だから、ケーキもどきの一つでも出たのかよ?」

 突然、アーサーの座る席を後ろから蹴られて意地の悪い声と共にクスクスと含み笑いが聞こえてきた。
 途端にアーサーは眉間にシワを寄せて後ろを振り向くとクラスで一番の問題児のトンプソンが見下した眼で笑っていた。

「何とか言えよ」
「君には関係ないだろ」
「おいおい、俺は心配で聞いてやってるんだぜ?何だよ、その態度?」

 どうせ、ケーキすらも食えなかったんだろうとニヤニヤして訪ねるトンプソンにケーキくらいあったさと小さく反論する。

「へぇ~、貧乏人でもケーキが買えたのかよ!大丈夫かぁ?お前の親父の給料、底着いたんじゃないのか?ハハハ!」

 下品な笑い声に アーサーは言い返したい気持ちをぐっと堪える。

「ちょっと、うるさいわよ!こっちは車に酔ってるんだから静かにしなさいよ」

 そこに新たに不機嫌そうな声が聞こえてきた。
 アーサーが視線を向けると向かいの席に座る女の子が鋭い眼差しでこちらを見ていた。

「何だよ?文句でもあるのかよ?」
「大有りよ。貴方のそのうるさいダミ声でただでさえ気分が悪いのにさらに悪くなるわ」
「なっ!」

 問題児トンプソンに臆すること無く、クレームを言う。

(彼女は確か、クレア・モルガンだったかな?)

 親の都合か何かで最近、アーサーの学校に転校して来た女子で同い年には見えないくらいに整った容姿をしており、一、二週間くらい経過しても何度となく仲間内の話題になっていた。

「何だよ、お前!車酔いとかダセェ奴だな!第一、車の中でそんなの読んでる方が悪いだろ!」
「うるさい!黙りなさい!」

 ピシャリと言い放ち、クレアはトンプソンを睨み付けた。
 整った容姿の人間に睨み付けられると、その迫力は大したものでトンプソンは少し怯んだ様子で小さな声で何だよと悪態をついて元の椅子に座る。
 やっと静かになったかとフンと鼻をならすとクレアは手元に持っていた本を再び開いて読書を始める。








「あの、」
「なに?」

 数分後、周囲の生徒からちらほら寝息が聞こえ出したのを見計らってアーサーは意を決して声を掛けるとクレアは本から、視線を外さずに答える。
 とりあえず、無視されなくて良かったと内心で胸を撫で下ろす。
 クレアは転校してきてから本ばかり読んでいて、たまに話し掛けても無視されることで有名だった。

「さっきは、ありがとう」
「なにが?」
「あの、さっきのトンプソンの奴を黙らせてくれて」
「別に、あいつがうるさいから読書に集中出来なかったから注意したのよ。貴方を助けた積もりはないわ」
「それでもさ。ところで何、読んでるの?」
「本よ」
「じゃなくて!どんなジャンルの本を読んでるの?」
 
 クレアはハァとため息をつくと本を閉じてアーサーをチラリと見詰める。

「知ってどうするの?」
「それは・・・まぁ、そうだけど」

 まさか、そんな風に返答されるとは思わずに戸惑ってしまい困惑して視線をクレアの本へと落とす。

『The Old Straight Track 著:アルフレッド・ワトキンス』

 曾祖父の名前。
 アーサーは思わず、アッと声をもらす。
 そういえば、父が昨夜語った曾祖父の話で何冊か本を書いていたと言っていた。
 その中にはクレアが持っているタイトルの本の名前も合った様に思える。

「今度は何?」
「その本の作者のアルフレッド・ワトキンスって多分だけど、僕の曾おじいちゃんなんだ」
「何ですって!」

 驚いた様子でクレアは目を見開き、アーサーを見る。
  
「それは本当なの!?貴方の曾お祖父様が、あのアルフレッド・ワトキンスなの?何か証拠はあるの?」
「証拠?」
 
 いきなり証拠と言われてもどうするべきか困っていると不意に今朝、机の上の荷物を鞄に詰めていたのを思い出した。
 もしかしたら、光集計も入れてしまったんじゃないのかと思い、クレアにちょっと待ってと一言言って荷網に置いてある鞄を取ろうとした。

「皆さん!バスが到着しましたよ!起きなさい!さあさあ、バスを降りなさい!ほら、そこ!ヨダレを吹きなさい!みっともない!」

 そこで教師のかな切り声が響き渡った。
 丁度、鞄を取ろうと立ち上がっていたアーサーはさっさと外に出ようとする他の生徒たちに背中を押されて外に押し出されて行く。

「ごめん!また、後で見せるよ!」

 




 

 
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