レイスコープ ~アーサー・ワトキンスとレイライン~

よっしー

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第一話(3)

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 天高くサークルを描いて均等に並べられた巨石群、ストーンヘンジ。
 そのストーンヘンジにバスから下ろされたアーサーたちは丁度、中心に集められていた。

「皆さん。ここ、ストーンヘンジは紀元前2500年から紀元前2000年の間に立てられたと考えられています。そして、それを囲む土塁と堀は紀元前3100年頃まで遡り、古代英国を代表する遺跡です。回りの巨石は高さ7mほどの巨大な門の形の組石トリリトン5組を中心に、直径約100mの円形に高さ4、5mの30個の立石メンヒルが配置されています。夏至の日に、ヒール・ストーンと呼ばれる高さ6mの玄武岩と、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇ることから、設計者には天文学の高い知識があったのではないかと考えられています。誰が何故、どんな目的で、この偉大な遺跡を作ったのかは未だに解明されてはいません。さて、皆さんはどう思いますか?」

 生徒たちの前に立ち、長々と講義し始めた教師の質問に何にかの生徒は手を上げる。

「はい、宇宙人が作ったんだと思いま~す」

 一人の生徒がふざけて言った一言に関を切ったように笑い声が響き渡り、他にも(今考えついたのだろう)、様々な仮説が好き勝手に飛び出してくる。

「いい加減にしなさい!偉大な古代英国の歴史を侮辱しているのよ!真面目にしないとお仕置きしますよ!」

 不真面目な生徒たちの態度に遂に怒りを爆発させた教師は、良いですかとさらに説教を始め出す。
 こうなっては話が長くなってしまう。
 生徒たちは、やり過ぎたかと後悔に顔を歪めたが何人かの幸運にも後ろに並んでいた者たちはこっそりと隠れて離脱していく。
 勿論、その中にはアーサーの姿もあった。














「まったく、わざわざ遺跡まで来たのにお説教で時間を消費するなんて、冗談じゃない」

 アーサーはまだ説教の声が聞こえてくるヘンジから離れて気ままに周囲を散策していた。

「ちょっと」

 そこにクレアから声を掛けられた。

「やぁ、さっきぶりだね。君も脱出できたんだ」
「お陰さまでね。ところで、貴方は本当にアルフレッド・ワトキンスの曾孫なの?」

 早々に質問と言うよりも詰問してくるクレアにアーサーは、困った様に頭をかいてクレアを見詰める。

「僕の曾おじいさんの筈だよ。昨日、ちょうど父さんが曾おじさんの事を話しててね。何だか、有名な人だったんだって」
「貴方は「アーサーだよ。アーサー・ワトキンス。良かったら、名前で読んでよ」
「・・・わかったわ、アーサー」
「僕は自己紹介したんだから、君もすべきじゃないかい?」

 アーサーの言葉にクレアは片方の眉をピクッと動かす。
 少し苛つかせたかなと、内心で態度の冷たい同級生の女の子に意地悪し過ぎたと後悔(表には出さないようにしたが)した。
 
「クレア・モルガンよ。クレアで良いわ」
「よろしく、クレア」
「さっきの質問の続きだけど、アルフレッド・ワトキンスの曾孫って証拠はあるの?」
「証拠になるかはわからないけど、これでどうかな?」

 そう言ってアーサーは鞄から、露光計を取り出す。

「曾おじいさんが発明した露光計ってヤツだよ」

 取り出した露光計をクレアに見せる。
 
「これってワトキンス露光計?本物なの?」
「え?ああ、うん。本物だと思うよ。でも、これって失敗作みたいなんだ」
「失敗作?」
「そう。これって覗いても何も見えないんだよ。まぁ、何か見えても使い方なんて知らないんだけどね」

 キャップを外して実演しようとストーンヘンジの方に露光計を向けて覗き込む。
 すると、レンズの向こう側にはアーサーが思っていなかった光景を写し出した。

「えっ!?」
「どうしたの、アーサー?」
「何だよ!これ?いったい、何が見えてるんだ?」

 アーサーは何度も露光計を外したり、また覗き込んだりしてストーンヘンジの周囲を見渡す。

「アーサー、それを少し貸して!」

 クレアは、いつまでもらちが明かないとアーサーから露光計を取って自身も覗き込んだ。

「これは!信じられない!これが、そうなのね!」

 青いガラス越しに見える光景にクレアは大きく目を見開いた。
 ワトキンス露光計はストーンヘンジを中心に青い光が一定の方向へと行っている光景、まるで巨大な大河の中に居るように錯覚してしまう世界を、その小さなレンズに写していたのだ。

「本当に、本当にあった!アーサー、貴方の曾お祖父様も私のお祖父様も間違って無かったのよ!」
「えっ?いったい何が間違ってないって?」
「アルフレッド・ワトキンスが、貴方の曾お祖父様が提唱した説『レイライン』のことよ!」

 興奮した様子で話すクレアにアーサーは話の内容よりもクレアの笑顔に見とれてしまい、あぁと曖昧な相づちを打つ反応しか出来ないでいた。
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