ひさめんとこ

zausu

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5章~ひさめんとこのお母さんのお仕事~

その6

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「よし、決まりだな。じゃあ悪いがまた穂香を呼んでくれないか?」
「はい。解りました」
穂香は部屋のすぐ近くに居た。
「穂香さん。もういいそうです。こちらの方へ」
「了解しました」
クールにそれだけ言って部屋に入る。
バタン、と、ドアを閉めた瞬間。
「ちょっとしゃちょー…、眠いときに人前に出さないでよー…何回か思わず素が出そうになったんだけど…」
「…」
この切り替えの早さはある意味尊敬できる。
「眠いと人格が変わるのか…」
「あー、穂香。今度からお前が会社に居るときはこの人が…世話というか面倒というか見張りというか…まぁそんな感じの事をするから、よろしくな」
「はい、よろしくお願い致します穂香さん」
「へー…、よろしく…えっ…と…」
「そういえば今まで名前聞いてなかったな…名は何と言うのだ?」
「え…えっと、笑いませんか?」
「笑わない笑わない」
「よっぽど変じゃない限りはな」
「…木木木木木…」
「は?」
「だから…木木木 木木木もり きりんです…」
「…」 「…」
笑いが起こった。

「笑わないって言いましたよね…?」
「いや…しかし…すごい名前だな君は…木木木木木木…くすっ」
「好きでこんな名前な訳じゃないですよぉ…」 
「あー!眠気が少し飛んだ!でも長くて呼びにくいからりんちゃんでいい?」
「はい…それでいいです…」
「へへー、よろしくー」
その時穂香が見せた笑顔はとても純粋で無邪気で、
「…は、はい」
どうしても照れてしまう林ちゃんだった。
「あ、そこも林ちゃんになるんだ」
「え?何の話ですか?社長」
「いや、何でもない」

そんなこんなあって、普段通りの仕事に三人は戻った。(内、一人は仮眠室)で、終業時間間近に、
木木木もりさん」
「あ、はい。なんですか穂香さん」
「少々お話ししたいことが、着いて来て下さい」
「は、はい。解りました」
なんか失敗をしたのだろうか?
「…おい、あいつ穂香さんから呼び出されたぜ」ヒソヒソ
「新入りの癖に生意気な…」ヒソヒソ
「でもさっき結構親しげだったわよね」ヒソヒソ
「うん。社長室までおんぶしてたわ」ヒソヒソ 
「認めん!認めんぞ!穂香さんはみんなのものだ!」ヒソヒソ
「なに言ってるのあんたは…」ヒソヒソ
「…」
(なんか回りの視線が痛いなぁ…)
たくさんの先輩からの熱い視線を受けながら部屋を出る。
「それで…お話とは一体…?」
穂香はピタッと足を止めた。
「いやー、これから色々とお世話になるじゃん?だからさーこれから家に来ない?夕食ぐらいならご馳走するよ?(綾香が)」
「ほんと凄いですねその切り替えの早さ…でもいきなりお尋ねするのはご迷惑じゃないでしょうか?」
「いーのいーの!連絡いれれば多分大丈夫!」
「は、はぁ…しかし…」
「上司命令よ」
「…それは強制という意味ですか?」
「さぁ?どうかしらね?」
と、いいながら穂香は握りこぶしを作り林ちゃんに見せる。
「怖いんですけど…でも…そうゆう事なら…遠慮せずに」
「はーい、決定!それじゃあ後でね!駐車場で待ってるから!」
「…はい」

で、終業時間。
「お、終わらない…」
今日中に仕上げないといけない書類がまだ半分も完成していない。昼に社長と話してて時間が足りなかった。という言い訳を自分の心の中でしては空しさを感じる。
「はぁ…穂香さん、約束破っちゃってすみません…」
「私がどうかしましたか?」
「!?」
後ろに穂香が立っていた。
「遅かったので様子を見に来てみれば…なるほど、そうゆう事でしたか」
「はい…すみません…だから今日は…」
「少し貸してください」
「え?」
穂香はPCの前に立つと、
タタタタタタタタタタタタタタ
(ちょ、タイピング早っ!)
(ていうかこれって仕事的にOKなの!?)
などと考えている間に、
「…よし、終わりましたよ」
「え!?まだ一分たってないですよ!?」
半信半疑でPCの画面を見ると、
「終わってる…」
「さぁ、早く来て下さい」
「あ、はい。解りました…」
(この人は一体何者なんだ…)

「で、ここが私の家!」
「はぁ…そうですか…」
「それじゃあ、着いてきて」
「は、はい…」
緊張してきた。
穂香は鍵を開けた。

ドアの鍵を開ける音が聞こえた。時間帯的に母さんだろう。と、偶然玄関の近くに居た隼輝と紫園は思っていた。
「ただいまー」
「あぁ、お帰り母さ…ん…?」
後ろに見知らぬ人がいる。男だ。
「…」
紫園が無言でドアに近寄り、
バンッ!
と、ドアを閉めた。
そして一言。
「「誰だ今の」」
ユニゾンだった。
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