ひさめんとこ

zausu

文字の大きさ
上 下
41 / 131
5章~ひさめんとこのお母さんのお仕事~

その7

しおりを挟む
「あのー?穂香さん?思いっきりドア閉められたんですけど?」
「うーん、困ったわねぇ…反抗期かしら」
ドアが少しだけ開いた。
「…母さん」
「あら隼輝。いきなり閉めるのはひどいんじゃないの?」
「隣の人は誰だ…?」
「え…?」
声を潜めて、
「連絡したんじゃないんですか?」ヒソヒソ
「…あー…」
「あー…じゃなくてですね…」ヒソヒソ
「隼輝。この人はただの会社の…えっと…後輩?」
「…何で連れてくるんだよ…」
「まぁそれはあとで話すから、とりあえず中に入れて」
「はぁ…わかったよ…」
「…失礼します…」
なんだか視線が痛い。気がする。

「あら、お母さん?その方はどなた?」
「綾香心配しないでよー、ただの会社の後輩ー」
家に帰って気が緩んだのかどんどん口調がゆるくなっていく。
「でさー、突然で悪いんだけどこの人の分の夕飯用意できる?」
「えぇ、出来ますよ。少し待っててくださいな」
にっこり微笑みながらキッチンへと向かっていった。
「…お子さん多いんですね…」
「そうねぇー結構多いわね」
「ママおかえりー!」「お、おかえり、なさい」
「ただいま、明良、杏子」
「あれ?このおにーさんだれ?」
「ママのお友だち、仲良くしてあげてね」
「はーい!」「う、うん」
そう言うやいなや、明良がりんちゃんの近くにかけよって、
「わー!すっげー!デッケー!パパと同じぐらいだー!」
ピョンピョン跳ねながら楽しそうに会話をする。
その様子を、
「…」
10Mくらい離れたところから見ている杏子。
「…ほんとに多いんですね…あと何人いるんですか?」
「あと二人ーその二人は…」
バンッ!
二階から音が聞こえた。
「…何の音ですか?」
「あー…多分…」

二階。
「痛てて…」
地面に仰向けに倒れている和真。
「ふざけんな!この変態カズ兄!」
顔を真っ赤にして怒っている閑柯。
「背負い投げ、一本」
なぜか審判をしている紫園。
「あらら…どうしたの?」
「どうしたもこうしたもない!」
「なんだよ…ただ俺は部屋にはいったら着替えてたってだけで…」
「ノックしなさいよ!こっちは年頃の女の子!」
「あー…はいはい。喧嘩はしないの。和真はしっかりとノックしてから入ること」
「…わかった」
「閑柯は…そうねぇ」
ここで閑柯の耳元にそっと囁く。
「本当は嬉しいんだからそんなに怒んないの」
「…はぁ!?」
「はい!それじゃあ喧嘩はおしまいね。部屋にもどって」
「ところでさ、母さん。ひとつ聞きたいんだけど」
「あ、私もひとつ」
「何?」
「「誰だそいつ」」
ユニゾンだった。
しおりを挟む

処理中です...