ひさめんとこ

zausu

文字の大きさ
上 下
59 / 131
7章 ~ひさめんとこと外国人さん~

その7

しおりを挟む
「…んで、話ってなんダ?」
「…」
「おい、話ってなんダって言ってるんだが?」
「…ハァ…」
和真がため息をつく。
「な、何だヨ…」
「…お前、どこまで知ってる?」
「何がダ?」
「どこまで彼女を理解している?」
「…何そんな真面目な顔して「真面目に答えてくれ」…」
和馬の真剣な声に身が縮こまる。
「…和馬…何か見たのカ…?」
「…見た」
「…そっか」
どこか諦めたような、そんな声を出す。
「さっきまでは見えなかったけど、さっき近くで見たらわかった。髪切ってたの気がついてたか?」
「あぁ」
「髪切ったせいで耳が見えた…しわのある耳たぶも」
「…」
「気になって脈を診てみると…まぁ、不整脈、だったな」
「…で?」
「だから、お前はそれを知っていたのか?…いや、さっきの反応を見ると知ってるんだろうな」
「あぁ、知っていたサ…。虚血性心疾患ってやつダ」
「虚血性心疾患…」
「あぁ、まぁ動脈硬化みたいなものだ…こんな若いのになるのはとても珍しいらしい」
「…じゃあバイトって…」
「治療費のためだ、100万弱かかるからな…稼げる金は大いに越したことはない」
「…それぐらいなら…」
「俺が出す…ってか?悪いが断る」
「何で?」
「…これは俺たちの問題なんダ…あまり他人を巻き込むもんじゃないサ…今はまだ彼女には余裕がある。だから…今は俺だけにやらせてくれ…これは俺の我儘ダ」
「…わかった。ただ…」
「ただ?」
「もし…もしも彼女の様態が悪化する様なことがあればお前を振り払ってでも金を出すからな」
「…まっ、そうはならないように気を付けるサ。話は終わりか?」
「あぁ、終わり」
「よし、それじゃあ俺は帰るからナ」
拓実はドアに向かってあるき出す。
「…最後に少しだけ聞かせてくれないか?」
「何ダ?」
ドアの目の前で立ち止まる。
「彼女を一生養っていくはあるか?」
「…バーカ」
顔だけ振り向いてこう言った。
「養う気がないならここまでしないっての!俺がメグを一生守ってやる!」
バタン
一人になった和馬。
「…一生守ってやる…ねぇ…」
「…全く…かっこよくなりやがったな…アイツ…」
「…絶対に成功させろよ…」

「…俺には、なるな」

しおりを挟む

処理中です...