ひさめんとこ

zausu

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8章 ~旧友~

その6

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私たちはいつも二人だった。
二人で色々な話をした。
たくさん笑った。
たくさん泣いた。
「………」
だから…
「………」
だから……
「………助けてよ…」
きっと、来てくれるんだよね…?
きっと、私を助けてくれるんだよね?
もう、全てを…止めてくれる?

ドアを叩くおとが止まない。電話の線は切られていて、スマホは奪われて行方不明だ。
外との連絡はとれない。
「…おねがい…助けに来て…和泉さん…」

「そういえばまだ言ってなかったっすね…」
「何をさ」
「此方の名前っす」
「はぁ?」
「堂出さんの名前は堂出萌。でしょ?」
「いや、それは偽名っす。私の本名は和泉菫っす」
「和泉菫って…さっきの話の…」
「そうっすよ」
「なんで偽名なんか使って…」
「それはそのうち説明するっすよ」

3年前 京都
私たちはいつも一緒にいた。でも別れと言うものは案外近くにあるものだ。
「大阪に転勤…ですか」
「うん…だから今までみたいに簡単には会いに行けなくなっちゃうの」
「いえ…仕方ないですよ。それに、ずっと会えないわけではないでしょう?」
「…うん。きっと…また、会いに来る…から…」
「あぁ、泣かないでください。涙が移る…でしょう…?」

「そうして守手熊さんは大阪へ行ったっす」
「ふーん。じゃあさ、なんで二人はわざわざ出身地…って言うのかな?それをすり替えたの?」
「それも後でっすね…あぁ、そうだ」
思い出した様に言う。
「これから暫くは此方が知っている話じゃなくてなゆちゃんから聞いた話っす。あくまで聞いただけっすから正確性はないかもしれないっすよ」
「うん。わかった」

3年前 大阪 那由多、小学生四年生
「えっと…京都から来ました…守手熊那由多…です」
転校生はどこの学校でも人気者だ。休み時間になるとすぐに質問攻めになる。
「…」
そんな那由多の事をすこし離れたところから見ている少女が居た。
「…気に入らへんなぁ…」
「…」
「…屋井、昼休み、空いとるよな?」
「…うん」
「よし!それじゃあ遊ぶか!」
「…」
「転校生も…一緒に、な?」
それは子供のものとは思えないほど悪意のこもった笑顔であった。
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