ひさめんとこ

zausu

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番外~ひさめんとこのちょっとした小話~

とある優しい暴走族と普通の優しい女の子

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少し前の話。

「はぁ…疲れた…」
友人と遊んでいたらいつの間にか夜になっていた。
「…早く帰らんと、どやされるなコレ…」
「よー、そこのネーチャン、俺たちと遊ばね?」
そこにいたのは見るからに不良な男達7人。
「…急いでるんで、無理や」
「そんなこと言わずにさぁ、絶対楽しいッて」
手を掴んできた。
「…!離さんかい!」
「一緒に遊ぼうって、悪いことはしないからさ」
「くっ…」
手を振りほどこうとするが、男と女では力があまりにも違いすぎた。
(…終わりやな…もう…)
諦めかけた、その時。
「おい」
「あぁ?」
「その子から手を離せ」
「なんだ?お前」
「離せといっているんだ」
「…」 
(…誰や?あれ…)
「それで離すと思ってんのか?」
「離さないのか?じゃあ力づくでも離させるしかないな」
「…やってみろやァァァ!」
7対1
流石に1人で7人は無理だと思った。
すぐに決着はついた。
「…」
一切の傷も受けずに、1が勝った。
「おい、大丈夫か」
「え、は、はい…」
「家はどこだ」
「え?」
「教えろ」
「えっ、えっと…」
住所を伝えた
「…乗れ」
後ろのバイクを指差した。 
「い、いや、ウチは一人で平気や…」
「一人になって襲われたのは誰だ?」
「…」
反論できない。
「で、でも…」
「つべこべ言うな、ほら」
「え、うわっ!?」
いきなり抱き抱えられた。
そして、気がついたらバイクの上。
「しっかり捕まってろ」
「…は、はい」
バイクは走り出した。

「着いたぞ、降りろ」
「あ、あの」
「ん?」
「ありがとう…ございました」
「…あぁ」
それだけ言ってまたどこかへ走り去っていった。
その後ろ姿をずっと見ていた。

翌日、学校。
「…はぁ…」
ため息をつく。なぜか今日は授業に集中できなかった。頭の中にあの人がいつまでもいて離れてくれない。この思いはきっと…
「どうしたんですか?」
「うわぁ!いきなり出てくんなや!」
「どうしたんですか?今日はさっきからずっとボーっとしてますよ。昨日はお楽しみでしたから疲れてるんですか?」
「変な言い方するなや!」
「それともその帰り道で不良に教われたところを通りすがりの人に助けられてそのままバイクで送ってもらって、その人に恋しちゃったんですか?」
「お前どこで見てたん!?」
「あの人は大変ですよ、あの人はサイレントキラーといってあれこれしかじかで悪い人をやっつけてるんです」
「お前めっちゃ詳しいな…」
「で、どうなんですか?」
「…あの人に…会いたい…」
「恋ですねぇ、若いっていいですねぇ」
「同い年やろお前…」
「では不良になってはどうでしょう。簡単に会えますよ」
「それは?」
「さっきいった通り、あの人は不良を倒しまくってるんです。つまり不良になれば会えるという考えです」
「…でもそれだったら敵同士やんか…」
「このまま一生会えずに終わりますか?それともわずかでも可能性を作りますか?」
「…」
「コレは決断です。その人の敵となり、もう一度出会うか、すべてを諦めるか」
「…ウチは…」




「そんなこんなでウチはあのスケ番グループ作ったんや、あの人に出会えた以上、もう続ける必要はない」
「へぇー、姉御がグループ作ったことにそんな秘話があったんですねぇ」
「…いや、提案してきたのお前やろ…。それにしてもなぁ…」
『普通の優しい女の子だった…』
「あんな昔の事覚えてるなんて…顔も覚えてくれはったんや!もう嬉しくて嬉しくて…ニヤケが止まらん!あぁ、もう一生ついていきます!王子様ァ!!」
「…いやぁ、姉御は今日も元気ですねぇ…」
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