ひさめんとこ

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9章 ~ひさめんとこと京都からの使者、スパイ(ry~

その7

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「夕飯まではまだ少し時間あるって」
「じゃあしばらくゆっくりして待ってるか」
「あ、じゃあせっかくだからそれ食べるっすか?」
土筆が持ってきた生八つ橋賄賂を指差す。
「…そうだね」
「初めて食べるからな~、楽しみかも」
「久しぶりに食べますね」
「…あー…」
土筆だけは苦い顔をしていた。
で、開封。
「…生八つ橋ってこんな味なんだ」
「…初めて食べたけど変わった味だね」
「…これは…ノーコメントです…」
皆も少し苦い顔になった。
「土筆…上達してないっすね」
「…和菓子を作るのはなかなか難しくて…」
「おい和菓子屋の息子」
「ていうか土筆の手作りだったんすか。だったら滞在許さなかったのに」
「ううっ…」

それからしばらくたって、
「夕食できたって」
「あ、そうすか?」
「じゃあ行こうか」
いざ食卓へ行くと…
「うわ…」
「凄いです…」
大量の料理が並んでいた。
「お客さんが多かったからつい気合いが入っちゃって…」
綾香が照れくさそうに頭をかく。
「いや、気合い入ったとかそういう次元じゃないっすよこれ」
「…こんなデカいテーブルどっから持ってきたの?」
「気にしてはいけない」
「なにそれ気になる」
「まぁ気にしないで、たくさん食べていってね」
「あ、はい。いただきまっす」
「…おぉ、これおいしい」
「ほんと?うれしいわ」
「レシピとかあるんですか?」
「いや、ほとんど目分量だな。何だかんだで本よりもこっちの方が良い。時間もかからないしな」
「△★〒§▲♯\#$%!」
「…堂出さん、口にものいれたまましゃべらないで」
「…」
土筆が一人でうつむいている。
「どうしたの?」
「…なんか、違うんだよ」
「…なにが?」
「…あ!勘違いしないで!この空気が嫌とかじゃなくて!すごく落ち着いていて心地よいんだけど…。なんか…実家うちはもっと食事の時は空気が張りつめてて…居心地が悪いくらいなんだけど…なんか、僕の家は…ああいう感じっていうか…」
「…そうっすね。こっちに来てから、本当にゆっくりできるようになったっす」
「…僕、やっぱり明日帰るよ」
「え?」
「いいの?」
「…うん。やっぱり僕の家はあっちだって思ったから。…姉さんは今、幸せ?」
「…幸せっすよ」
「…そっか、じゃあ父さんにはなんとか説得しておく。姉さんはこのまま、ゆっくりと、自由に生きて」
「…ほんとに良いんすか」
「うん」
「…ありがとうっす」
「ううん。大丈夫だよ」
「…」
「…なんかよくわからないけど話がまとまったっぽいね」
「まぁそれはそれで良いんじゃないですか?」
「これで一件落着かな」
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