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下賤 - ヤクザ者
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普通の生活においてヤクザと関わりあうことはほとんどないだろう。そして、それはとても幸せなことだ。普段の生活でどんなに悩みがあろうと、ヤクザと関わったことによる悩みや苦しみなどとは比べ物にならない。
幸か不幸か僕は自宅にいた時に事件は起こった。
ガッシャーン!
玄関の方から突然の爆音が響いた。何事かと玄関に向かう。見ると玄関のドアが突然破られていた。
「マルトクさーん。売掛金の回収にきましたよ~」
声の主は、取引先の土建屋”野上土建”の長男だった。
「何するんですか!!」
「何って見て分かりませんか?ドアを蹴破ったんですよ。俺だってムカついてるんですよ。俺がやったことなんてオタクがウチに対してやったことを思えば大したことない。」
建築関係の仕事をしていると気の荒い連中が多い。野上土建もマルトクと取引しているのだが資金の回収ができていないのだ。その嫌がらせに来たのだ。でも、だからといって、こんな横暴を許せるはずもない。
「警察呼びますよ!」
「呼ぶなら呼んだらえーがや。俺は逃げへんでっ」
そう嘯き野上は開き直った。母が通報すると10分程で警察官が到着した。そうして野上は大人しく警察に連行されていった。
この件について、我が家は全く非がないのだが、後々の更なる嫌がらせを恐れた両親は被害届は出さず、野上は僅か一日の勾留ででてきたという。我が家の玄関は直すお金もなく、破れた穴に段ボールが張られることになる。
この野上は単なる血の気の多いだけだったが本職は迫力が違う。
とある取引先が林というヤクザに回収を求め、そのヤクザから電話が掛かってきた時のこと。
「マルトクさん。昨日入金お待ちしてたんですが無かったですが、どうされました?」
あくまで電話での口調は丁寧だった。だから少し安心していた。
「すいません。数日中にはお支払いできますので」
「いや、もう期限過ぎてるんですよ。もう僕の手から離れたんですわ。今ウチの本体がそっちに向かってますんで、きたら相手してやってください。」
「ちょっと待ってください!」
「だから待てませんて(笑)あーでも、今ならまだ止められるかもなんで、やってみますか?本体動いちゃってるんで、その分費用掛かりますけど大丈夫ですか?」
ノーなんて言える雰囲気ではない。とにかく怖かった。
かくして、30分後に林という男は一人で現れた。本来払うべきお金の倍のお金を受け取って帰っていった。もちろん領収書など貰えるはずもない。
後から冷静になって考えれば、なんてことない林の一人芝居だったのだろう。頼まれた資金以上に回収すれば、それが自分の金になるのだから、支払いが遅れた方が林にとってはいいのだ。
その林とは、その後も長く付き合うハメになる。
僕が東京エンジニアリングに勤めていることを知ると、林は勤め先に頻繁に電話を掛けてくるようになった。ただでさえ、先の恵比寿屋の件で上司の信用を失っていたのだが、ヤクザからの電話で同僚にまでオセロの家ってどうなってんの?と噂されるようになってしまった。
もう、この会社に居られないかもしれない。と真剣に感じ始めた。
幸か不幸か僕は自宅にいた時に事件は起こった。
ガッシャーン!
玄関の方から突然の爆音が響いた。何事かと玄関に向かう。見ると玄関のドアが突然破られていた。
「マルトクさーん。売掛金の回収にきましたよ~」
声の主は、取引先の土建屋”野上土建”の長男だった。
「何するんですか!!」
「何って見て分かりませんか?ドアを蹴破ったんですよ。俺だってムカついてるんですよ。俺がやったことなんてオタクがウチに対してやったことを思えば大したことない。」
建築関係の仕事をしていると気の荒い連中が多い。野上土建もマルトクと取引しているのだが資金の回収ができていないのだ。その嫌がらせに来たのだ。でも、だからといって、こんな横暴を許せるはずもない。
「警察呼びますよ!」
「呼ぶなら呼んだらえーがや。俺は逃げへんでっ」
そう嘯き野上は開き直った。母が通報すると10分程で警察官が到着した。そうして野上は大人しく警察に連行されていった。
この件について、我が家は全く非がないのだが、後々の更なる嫌がらせを恐れた両親は被害届は出さず、野上は僅か一日の勾留ででてきたという。我が家の玄関は直すお金もなく、破れた穴に段ボールが張られることになる。
この野上は単なる血の気の多いだけだったが本職は迫力が違う。
とある取引先が林というヤクザに回収を求め、そのヤクザから電話が掛かってきた時のこと。
「マルトクさん。昨日入金お待ちしてたんですが無かったですが、どうされました?」
あくまで電話での口調は丁寧だった。だから少し安心していた。
「すいません。数日中にはお支払いできますので」
「いや、もう期限過ぎてるんですよ。もう僕の手から離れたんですわ。今ウチの本体がそっちに向かってますんで、きたら相手してやってください。」
「ちょっと待ってください!」
「だから待てませんて(笑)あーでも、今ならまだ止められるかもなんで、やってみますか?本体動いちゃってるんで、その分費用掛かりますけど大丈夫ですか?」
ノーなんて言える雰囲気ではない。とにかく怖かった。
かくして、30分後に林という男は一人で現れた。本来払うべきお金の倍のお金を受け取って帰っていった。もちろん領収書など貰えるはずもない。
後から冷静になって考えれば、なんてことない林の一人芝居だったのだろう。頼まれた資金以上に回収すれば、それが自分の金になるのだから、支払いが遅れた方が林にとってはいいのだ。
その林とは、その後も長く付き合うハメになる。
僕が東京エンジニアリングに勤めていることを知ると、林は勤め先に頻繁に電話を掛けてくるようになった。ただでさえ、先の恵比寿屋の件で上司の信用を失っていたのだが、ヤクザからの電話で同僚にまでオセロの家ってどうなってんの?と噂されるようになってしまった。
もう、この会社に居られないかもしれない。と真剣に感じ始めた。
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