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アクアマリンの章
1. Ep-8.いつもとは違う
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荷馬車を引きながらルゼリア達は王城の西門へと移動していた。
城には東西南北に四つの門がありそこから先にある石畳の大きな橋を渡ってそれぞれの地区へと入る事になる。
石畳の橋を渡りながらルゼリアはこれから訪れる医療施設『癒しの大樹』と孤児院『芽吹きの若葉』の事を考えていた。
癒しの大樹を作ってもうすぐ100年程になる。
竜達は長寿の種族であり一つ歳を迎えるのにおよそ10年程の歳月を要している。
ルゼリアは21歳、つまりは210年程を生きているのだ。
癒しの大樹を作ったのが11歳頃の事だ、芽吹きの若葉もその頃に新設された、
その前から孤児院自体はあったけれど運営状況は酷く悪かった。
前運営者の貴族を糾弾しルゼリアは孤児院の運営を安定させる事に奮闘した。
あれから既に100年が経過している。長いようで短い時間の間に孤児院は良い方向へと向かってきている。
ガタゴトと馬車が揺れた、思考を戻され窓の外を見ると橋を渡り終えて少し移動している事がわかる。
西に続く大きな道を更に真っ直ぐに進めば癒しの大樹が存在する。人通りから少し離れた場所に建つそれは白く大きく遠目からも分かるだろう。
癒しの大樹にはその名前どおり木が一本植えられていてその木が目印にもなっている、
木の種類はわからないが病気になりづらく、早く成長する木が植えられている。
植えた当初はルゼリアよりも小さかった苗木は成長速度が速い為か100年経った今、かなりの大きさになっていてその大きな枝が優しく癒しの大樹を守るように広げられている。
当時の事を考えていればあっという間に時間は過ぎていたようで気付けば医療施設である癒しの大樹へと到着していた。
馬車を降りたルゼリアは視線を入り口に向け何かに気付いた様子で首を傾げた。
多くの患者が来るのは前回の視察と同じなのだが今日は人が溢れ返り溢れた怪我人が端の方で蹲っている。
身なりからして貧民区の住人で間違いはないのだが何かが違う。
『騎士達…………様子を見に行ってください、僕達も行きましょう』
ルゼリアが歩き出そうとするとシュネがルゼリアを止めた。
「姫様、まずは様子を見てからにいたしましょう、御身が動かれてはなりません」
ですがっと訴えるルゼリアにシュネは駄目ですと言って何人かの騎士を残して他は様子を見させていった。
胸の前で両手を組んで不安そうにしているルゼリアにシュネはご辛抱をと留めた。
「これはどうしたのでしょうね?何かの事故があったのかしら」
『アリシア…………わかりません、ですが普通でない事だけはわかります。あれは…………労働者の方々ですよね、トリノ、騎士団の方には何か連絡は来ていませんか?』
ルゼリアの問いにトリノは首を横に振った。
「出発する前にはそのような報告は受けておりませんでした」
どう言う事なのだろう、そう思っていると騎士達が戻ってくるのが見えた。
騎士達はルゼリアに聞かせないようにトリノを呼びその耳元で何かを囁いてる。
騎士の報告を聞いてトリノの眉が潜められていく、その鋭い眼差しは更に鋭くなり縦長の瞳孔が更に鋭くなっている。
すぐに戻ってきたトリノは一度ルゼリアを見つめ如何するかと思案しているようだ。
『トリノ報告をお願いします』
「…………はっ、昨日ビオラシーマ山脈の採掘場で事故が発生したようです、崩落事故がおき多くの者が怪我を負いました。事故に巻きこまれたのは貧困区の労働者達で富裕区の施設は全て受け入れを拒否しているようで怪我人達がこの癒しの大樹に押し寄せているようです」
ビオラシーマ山脈と言うのは北東に位置する大きな山でそこはクリスタルや他の鉱石が採掘される採掘所が数多く存在している。
その採掘場が崩落したというのだ、その報告にルゼリアは体を強張らせながらシュネを見た。
『シュネ……医長の下に行きましょう、荷物を届けねばなりません』
小さく震えながらも訴えるルゼリアにシュネは首を横に振った。
「姫様はこの場を動いてはなりません。馬車にお戻りください、城に引き返します」
『シュネ!?』
「騎士団の者達は姫様の守りを」
シュネはそう言って小さなルゼリアの体をぐいぐいと馬車の方へと押した、危険に晒せないと判断したシュネはいつもとは違い強引だ。
押されたルゼリアはよろけながらも必死で足を踏ん張って馬車の方へ行かないようにする、
だが竜の力を持たない非力なルゼリアには竜の力を有しているシュネの力に叶う事は出来ずズルズルと押されていく。
そんな二人を見ていたアリシアが馬車とルゼリアの間に入って止めた。
「アリシア、何の真似です」
「シュネ様、落ち着いてくださいませ、崩落事故があったのはビオラシーマ山脈でありこの場所ではありません。それに姫君の意思をないがしろにするのはいつものシュネ様らしくありませんわ」
留めるアリシアにシュネの瞳の瞳孔が細くなっていく、竜族の瞳は怒りや興奮状態になると瞳孔が細くなっていく。怒っているシュネに怯えながらもルゼリアはシュネに懇願した。
『シュネ、今はこんな事をしている場合ではありません。持って来た荷物があれば患者の皆さんを助ける事はできます、手伝わせてください』
「…………なりません、姫はアルヴァーニ王国の王位継承者、貴方様の身に何かあってからでは遅いのです」
怒っているシュネにルゼリアはもう一度願う。
『シュネ、僕が王位継承者であるというのであれば余計にここから一人逃げるわけには行きません。国は民によって支えられているのです、その民を見捨てるのであれば僕は自分の存在する意味がないのです』
混血児だと罵られるルゼリアは貴族達から嫌われている、富裕区の多くの竜達はルゼリアを拒絶した。
貧困区の中にもルゼリアを拒絶するものは居るけれど、今居る騎士団のようにルゼリアを受け入れ守ってくれる存在もいる、
そんな彼等の出身地区の竜達が苦しんでいるのに手を差し伸ばせない事が悲しいのだ。
ルゼリアの言葉にシュネの動きが止まった。
ルゼリアの懇願にシュネは考えている様子だった、そんなシュネにトリノが失礼ながらっと話しかけた。
「失礼ながら、シュネ様、今は一刻を争います、とりあえず中で医長と話をしましょう、荷物を渡せば姫君も納得される事でしょう、無理に城に戻ったところで姫様は気になさってしまうのではないでしょうか、お優しい方ですから……姫君に心労を与えない為にも此処は姫君の望みを叶えるべきかと」
第七師団長と第一師団長の二人がルゼリアの望むとおりにと言う、シュネは一度瞳を閉ざし怒りを抑えるかのように深呼吸をすれば分かりましたと頷く。
「姫様の安全が第一でございますよ」
シュネの言葉に頷いてルゼリアは騎士団の騎士達に持って来た荷物を運んでもらうように言うと患者で溢れかえっている癒しの大樹を見つめた。
城には東西南北に四つの門がありそこから先にある石畳の大きな橋を渡ってそれぞれの地区へと入る事になる。
石畳の橋を渡りながらルゼリアはこれから訪れる医療施設『癒しの大樹』と孤児院『芽吹きの若葉』の事を考えていた。
癒しの大樹を作ってもうすぐ100年程になる。
竜達は長寿の種族であり一つ歳を迎えるのにおよそ10年程の歳月を要している。
ルゼリアは21歳、つまりは210年程を生きているのだ。
癒しの大樹を作ったのが11歳頃の事だ、芽吹きの若葉もその頃に新設された、
その前から孤児院自体はあったけれど運営状況は酷く悪かった。
前運営者の貴族を糾弾しルゼリアは孤児院の運営を安定させる事に奮闘した。
あれから既に100年が経過している。長いようで短い時間の間に孤児院は良い方向へと向かってきている。
ガタゴトと馬車が揺れた、思考を戻され窓の外を見ると橋を渡り終えて少し移動している事がわかる。
西に続く大きな道を更に真っ直ぐに進めば癒しの大樹が存在する。人通りから少し離れた場所に建つそれは白く大きく遠目からも分かるだろう。
癒しの大樹にはその名前どおり木が一本植えられていてその木が目印にもなっている、
木の種類はわからないが病気になりづらく、早く成長する木が植えられている。
植えた当初はルゼリアよりも小さかった苗木は成長速度が速い為か100年経った今、かなりの大きさになっていてその大きな枝が優しく癒しの大樹を守るように広げられている。
当時の事を考えていればあっという間に時間は過ぎていたようで気付けば医療施設である癒しの大樹へと到着していた。
馬車を降りたルゼリアは視線を入り口に向け何かに気付いた様子で首を傾げた。
多くの患者が来るのは前回の視察と同じなのだが今日は人が溢れ返り溢れた怪我人が端の方で蹲っている。
身なりからして貧民区の住人で間違いはないのだが何かが違う。
『騎士達…………様子を見に行ってください、僕達も行きましょう』
ルゼリアが歩き出そうとするとシュネがルゼリアを止めた。
「姫様、まずは様子を見てからにいたしましょう、御身が動かれてはなりません」
ですがっと訴えるルゼリアにシュネは駄目ですと言って何人かの騎士を残して他は様子を見させていった。
胸の前で両手を組んで不安そうにしているルゼリアにシュネはご辛抱をと留めた。
「これはどうしたのでしょうね?何かの事故があったのかしら」
『アリシア…………わかりません、ですが普通でない事だけはわかります。あれは…………労働者の方々ですよね、トリノ、騎士団の方には何か連絡は来ていませんか?』
ルゼリアの問いにトリノは首を横に振った。
「出発する前にはそのような報告は受けておりませんでした」
どう言う事なのだろう、そう思っていると騎士達が戻ってくるのが見えた。
騎士達はルゼリアに聞かせないようにトリノを呼びその耳元で何かを囁いてる。
騎士の報告を聞いてトリノの眉が潜められていく、その鋭い眼差しは更に鋭くなり縦長の瞳孔が更に鋭くなっている。
すぐに戻ってきたトリノは一度ルゼリアを見つめ如何するかと思案しているようだ。
『トリノ報告をお願いします』
「…………はっ、昨日ビオラシーマ山脈の採掘場で事故が発生したようです、崩落事故がおき多くの者が怪我を負いました。事故に巻きこまれたのは貧困区の労働者達で富裕区の施設は全て受け入れを拒否しているようで怪我人達がこの癒しの大樹に押し寄せているようです」
ビオラシーマ山脈と言うのは北東に位置する大きな山でそこはクリスタルや他の鉱石が採掘される採掘所が数多く存在している。
その採掘場が崩落したというのだ、その報告にルゼリアは体を強張らせながらシュネを見た。
『シュネ……医長の下に行きましょう、荷物を届けねばなりません』
小さく震えながらも訴えるルゼリアにシュネは首を横に振った。
「姫様はこの場を動いてはなりません。馬車にお戻りください、城に引き返します」
『シュネ!?』
「騎士団の者達は姫様の守りを」
シュネはそう言って小さなルゼリアの体をぐいぐいと馬車の方へと押した、危険に晒せないと判断したシュネはいつもとは違い強引だ。
押されたルゼリアはよろけながらも必死で足を踏ん張って馬車の方へ行かないようにする、
だが竜の力を持たない非力なルゼリアには竜の力を有しているシュネの力に叶う事は出来ずズルズルと押されていく。
そんな二人を見ていたアリシアが馬車とルゼリアの間に入って止めた。
「アリシア、何の真似です」
「シュネ様、落ち着いてくださいませ、崩落事故があったのはビオラシーマ山脈でありこの場所ではありません。それに姫君の意思をないがしろにするのはいつものシュネ様らしくありませんわ」
留めるアリシアにシュネの瞳の瞳孔が細くなっていく、竜族の瞳は怒りや興奮状態になると瞳孔が細くなっていく。怒っているシュネに怯えながらもルゼリアはシュネに懇願した。
『シュネ、今はこんな事をしている場合ではありません。持って来た荷物があれば患者の皆さんを助ける事はできます、手伝わせてください』
「…………なりません、姫はアルヴァーニ王国の王位継承者、貴方様の身に何かあってからでは遅いのです」
怒っているシュネにルゼリアはもう一度願う。
『シュネ、僕が王位継承者であるというのであれば余計にここから一人逃げるわけには行きません。国は民によって支えられているのです、その民を見捨てるのであれば僕は自分の存在する意味がないのです』
混血児だと罵られるルゼリアは貴族達から嫌われている、富裕区の多くの竜達はルゼリアを拒絶した。
貧困区の中にもルゼリアを拒絶するものは居るけれど、今居る騎士団のようにルゼリアを受け入れ守ってくれる存在もいる、
そんな彼等の出身地区の竜達が苦しんでいるのに手を差し伸ばせない事が悲しいのだ。
ルゼリアの言葉にシュネの動きが止まった。
ルゼリアの懇願にシュネは考えている様子だった、そんなシュネにトリノが失礼ながらっと話しかけた。
「失礼ながら、シュネ様、今は一刻を争います、とりあえず中で医長と話をしましょう、荷物を渡せば姫君も納得される事でしょう、無理に城に戻ったところで姫様は気になさってしまうのではないでしょうか、お優しい方ですから……姫君に心労を与えない為にも此処は姫君の望みを叶えるべきかと」
第七師団長と第一師団長の二人がルゼリアの望むとおりにと言う、シュネは一度瞳を閉ざし怒りを抑えるかのように深呼吸をすれば分かりましたと頷く。
「姫様の安全が第一でございますよ」
シュネの言葉に頷いてルゼリアは騎士団の騎士達に持って来た荷物を運んでもらうように言うと患者で溢れかえっている癒しの大樹を見つめた。
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