竜の騎士と水のルゼリア

月城

文字の大きさ
13 / 26
アクアマリンの章

1. Ep-12.力加減

しおりを挟む
 野菜の入った鍋がコトコトと煮えている。じっくりと煮込みながらルゼリアはなくなってしまった食材を如何しようかと考えていた。
使いに出した騎士達はまだ戻っていない、鍋が置かれている竈の横には新たに魚を焼く竈が用意されていた。
そこでは網を乗せてレクターとトリノが魚を焼いている、じっくり弱火で焼いている為に焼きあがるのにはもう少し時間が掛かるだろうか。
さてどうしよう、そう思ったルゼリアだが癒しの大樹からアリシアが出てくるのが目に付いた。
疲れた様子のアリシアが近づくと疲れましたっと報告していく。

「シュネ様は人使いが荒いですわ」

 中ではシュネはまだ怪我人の手当てをしているのだろう、慰めてくださいましっとしゃがみこむアリシアにルゼリアはよしよしと頭を撫でた。
だがすぐにルゼリアは手を引っ込めると煮込んでいる鍋の方へと視線を向ける。
グツグツと言う音が聞こえたルゼリアはトリノに少し鍋をずらして欲しいと頼む。火が強すぎるのだろう。
頷いたトリノは鍋をひょいと持ち上げると火の弱い場所に移している。感謝の言葉を掛けて鍋を掻き混ぜていく、底が焦げるのは防げたようだ。

 再びコトコトと言う音を聞いて視線をアリシアへと戻す。

「まだ味付けはしないんですの?」

 鍋のすぐ近くまで来たアリシアが首を傾げている。
もう少し煮込んでからの方が美味しくなるのですと聞いてそうなんですの?と不思議そうだ。

「おい、アリシア。お前鍋に触るなよ、絶対に触るなよ」

 魚をひっくり返していたレクターがアリシアに釘を刺していく。

「何でですの?」

「そりゃあ、お前が料理音痴だからだろうが!」

 言い切ったレクターにアリシアは酷いっと頬を膨らましている。

「私料理音痴なんかじゃありませんわ!」

「嘘付け!!お前が作った料理は食えたものじゃねえんだよ!!野営の時に食って騎士団を壊滅まで追い込んだのを忘れてねえだろうな!」

 以前アリシアの料理で散々な目にあったレクターはアリシアに鍋に触れるな近づくなっと警告をしている。

「あの時はたまたま近くにあった美味しそうなきのこを入れたからですわ。他は完璧でした」

 毒キノコと知らずに鍋に放り込んでしまったらしい、それを食べた騎士達は酷い目にあったとか。

「いいや、毒キノコとかの問題じゃねえんだよ、あの時の味…………忘れたくても忘れられねえ」

 最悪な形で記憶に残ってるぞと言うレクターに珍しくトリノも同意をしていた。

「あれ以来アリシア殿には野営地での料理番が来なくなったのは当然の事だ」

「酷い…………二人とも酷いですわ!!姫君…………私悲しいです」

 泣き真似をするアリシアにルゼリアは困った顔をする、
アリシアの料理は食べた事がないが当時城でも話題になった事だった、シュネが酷く怒って数時間アリシアを説教していた記憶がある。
もしその時に他国からの戦でもあれば確実に負けていただろうとも言われていたぐらいだ。
頑丈な竜達を倒すアリシアの料理、どう作っていたのだろうかと気になりはしたもののあえてそれを口に出す事はなかった。

 そうしている内に一つの鍋が丁度良く煮込まれていた。
ルゼリアは香辛料を鍋へと入れながら味を見ていく、少し薄いと塩を入れて鍋全体をゆっくりと掻き混ぜる。
それを見ていたアリシアが混ぜたいですわっと名乗り出れば混ぜるだけなら問題ないのではないかとルゼリアは木で出来た道具をアリシアに渡してしまった。

「おい姫さん、やめろって!」

 受け取った道具で鍋を掻き混ぜるアリシアだがルゼリアは失念していた。
ルゼリアは非力でありアリシアは竜の力が使えるのだ、あっと思った時には遅くボキっと言う音が耳に響く。
鍋を見ればアリシアが持つ道具の持つ部分が真っ二つになっていた。
慌ててルゼリアは鍋から道具を取り出す、欠片など入っていたら食べれなくなってしまう。

「…………割れちゃいましたわ」

「お前……“割れちゃいましたわ”じゃねえよ!!だから触るなって言っただろうが!」

 木で出来た道具はアリシアの力には耐えれなかった。
愛用していた道具を割られてしまったルゼリアは悲しそうにしながらもトリノに鍋を下ろして欲しいと頼む。
もう少しで出来上がりかけていた鍋の一つが食べれなくなってしまった、表面には道具の欠片である木の屑が浮んでいるのが見える。
それを見てレクターはアリシアは鍋に近づくなっと警告しながら食べれなくなった鍋を見つめた。

「…………屑とれば食べれるんじゃね?」

 そう言って浮んでいる木屑をすくい上げていく。

『ですが木屑の入った料理を来てくださった方に出すわけには…………』

「なら騎士達の昼飯にすればいいだろ。捨てるのは勿体無いしな」

 レクターはそう言って最後まで味付けしてくれよっとルゼリアに頼んだ、
確かに料理を捨てるのは気がひける、ルゼリアはわかりましたと頷いた。
出来る限る木屑を取り除き味を調えていく、小皿に移して味を確認しながら頷いた。

『出来ました』

「姫さん、味見してもいいか?」

 ええと頷いてルゼリアは新しい小皿にスープを入れて差し出していく。

『トリノもどうぞ、アリシアも味を見てください』

 二人にも渡せば全員が味見をする。

「トロリとしてて野菜の甘みが一杯出て美味しいですわ」

 トリノも美味しいですと頷いている。

『では他の鍋も仕上げていきます』

 木屑の入ってしまった料理は蓋をして邪魔にならないように移動させておく。
そうして他の鍋の料理も味付けをしていきトリノとレクターに鍋に近づくなと言われたアリシアは大人しく鍋から離れて見ている。
出来上がった鍋はこれ以上沸騰させないように火から下ろせば買出しに出ていた騎士達が戻ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...