竜の騎士と水のルゼリア

月城

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アクアマリンの章

1. Ep-11.第八師団長

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 緑が生い茂る大樹の近くではルゼリアがとある騎士を探していた。
それはアルヴァーニ王国 南方騎士団第八師団長のレクター・ティオールだ。
確か騎士達から水を汲みに行っていますよと言う話は聞いている。
怪我人の治療の為に大量の水が必要でそれを汲みに行っているのだ。

『レクターは戻ってきませんね』

 料理に使う水を分けてもらおうと思っているようだ。
すぐに戻ってくるでしょうと護衛のトリノが言えば、僅かに表情を曇らせながら戻ってきたようですと視線を向けた。
トリノの視線の向こうには大きな水の入っているであろう壷を4つ程軽々と抱えて歩いてくる巨漢の青年の姿が見えた。
その姿を見たルゼリアは僅かに頬を染めて視線を逸らす、今、レクターは暑いのか上半身裸の状態で歩いているのだ。

「おんや?姫さん、思ったより早い到着だな」

 ルゼリアに気付いたレクターがそう言って気楽にルゼリアに話しかければ側で控えていたトリノがレクターに苦言を漏らした。

「レクター!姫君の前だぞ、そのだらしのない格好をどうにかしろ!!」

 トリノの苦言に仕方ねえだろと言いながらレクターは壷を地面に下ろす。
地面に下ろした瞬間ドスンっという音と僅かに地が地響いた、相当の重さがあるようだ。

「んな事言っても仕方ねえだろ、物を運ぶのにきちっとした制服だと暑くて動きづらいんだって、お前だって知ってるだろ、それに水を汲む時に濡らしちまってな、張り付いて気持ち悪かったから脱いだんだって」

 肌蹴たどころではないレクターの姿にルゼリアは視線を向ける事が出来ない、トリノは鋭くレクターを睨んでいる。

「それにしても、今日は忙しすぎだろ、物資を持ってったら行き成り手伝えって借り出されたんだぜ?こき使われて俺は疲れた。もう何十回水を汲みに行かされたと思ってるんだよ、それに魔法も大量に使わせられて疲れた、かなり疲れた!」

 ブーブー文句を言うレクターにトリノはレクターの名を強く呼ぶ。

「レクター!疲れたのは分かったが服を着ろ!姫君が困っているだろう!そんな姿が騎士だと思われるのも不快だ!!」

「めんどくせえな、固い事言うなって、なあ、姫さん、別にこのままでも良いだろ?」

 半裸状態のレクターの言葉にルゼリアは困った顔をするけれど手伝って疲れているのであれば仕方ないだろうと頷こうとするがそれをトリノが止めた。

「騎士団の師団長としてちゃんとしろ!後で総司令官殿に報告しておくぞ!」

「げ~?まじかよ?それだけは勘弁しろって、あのおっさんの説教は長ったらしいんだって知ってるだろうが」

 説教は勘弁!そう言って渋々服を着ていく、濡れている為に着た瞬間げ~っと嫌そうな声を上げている。
騎士団の服をきっちりと着たレクターはトリノにこれで良いだろっと言っている。
漸く視線をレクターへと向けたルゼリアはレクターが持って来た水の入った壷を見つめた。

『レクター、水を分けていただいても構いませんか?』

 料理に使いたいのですというルゼリアにもちろん、そう言ってレクターは壷を一つ手に持ってルゼリアの近くへと移動すると大きな鍋に水を注いでいった。
勢い良く注ぐものだから鍋の淵から水が零れてしまう、気にした様子のないレクターにルゼリアも何も言わず水が一杯に入った事を確認するとトリノが丁寧に火打ち石で火をおこした。
準備も出来たし後は食材を刻んでいく行程に入ろうとしてルゼリアは何かに気付いた様子でレクターを見た。

『レクター……済みませんが足場を持って来てもらえませんか?』

「あ?………………ああ、姫さんはちっこいからな」

 ルゼリアが気にしている事を遠慮なく言いながらも承諾して丁度良い大きさの足場を用意してくれた。
それに乗れば丁度作業がしやすくなる高さになった、レクターは水を持って行ってくると言って壷を二つひょいと抱えた、
残りの二つはルゼリアが使えと言う事らしい、早速ルゼリアは料理をして行く事にするのだがその前に特別な道具を取り出していく。
それはナイフや小さな底が低い鍋だ、ルゼリア専用と言われるそれらは人間が使う道具だった、
生活用の道具の中にもルゼリアが使えない道具と言うのは存在していて竜が使うナイフや鍋もその一つだ、
ナイフの癖に重いそれはルゼリアでは持ち上げられず満足に動かす事も出来ない、その為に幼い頃にシュネに頼んで取り寄せてもらったのだ。

 力のない者でも使う事の出来る道具を使ってルゼリアは早速食材を一つ引寄せてとんっとナイフを入れて切っていく。
食材が重くなくてよかったと考えながらも慣れた様子で切っていく、量がある為に同じ作業を何度も何度も繰り返しながら食材を切り揃えていった。
水を運び終わったレクターが再び戻ってきた時にはある程度の食材は切り揃えられた。

「レクター…………お前何故此処に戻ってきた」

 トントントントンっとルゼリアが料理をしているのを見ながら嫌そうな顔で言うトリノにレクターは逃げてきたっと髪を掻きながらあっさりと答えた。

「なんか、中にシュネ様が居たからな。こき使われそうだったからさっさと逃げたわけだ」

「…………怪我人の治療をすればいいだろ」

「いや、俺が無理だって事ぐらい知ってるだろうが、力がありすぎるからな怪我人の治療をしてるつもりで怪我を悪化させる自信はある、それに朝からずっと魔法の使いっぱなしで流石の俺でも魔力切れ、俺の魔法が消費魔力が凄い事ぐらい知ってるだろ」

 そうだったと呟いたトリノはルゼリアを見守っている。

「なあ、姫さん」

 レクターが調理中のルゼリアに声をかける。首をかしげながらなんですかと問うルゼリアにレクターは俺も手伝っても良いかと告げた。

「おい!姫君の邪魔をするな」

「だってよ、今回は人手が足りねえだろ、時間も迫ってるんだし分担した方が料理が完成するのが早いだろ。それに姫さんだって大変だって、怪我人の治療は出来ないが姫さんの手伝いぐらいはできるぜ」

 もっともな事を言うレクターにルゼリアは苦笑はしたものの否定はしなかった。

『ではお魚に櫛を刺して焼いてくれますか?』

「あー、姫さんは生物苦手だったな」

 頷いたのを見てレクターは任せろと言ってまた服を脱ぎルゼリアをぎょっとさせる。
苦言するトリノに気にするなと言いながらもレクターは材料の魚を焼く準備に取り掛かりトリノも手伝う為にルゼリアの側を離れた。
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