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第四章
本当に大事なことは
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「信じらんない!!!」
俺の話を聞き終えた美奈子は、眉間に皺を寄せ大きな声で怒鳴った。
その声に食事をしていた他の客がこちらに目線を向ける。
「お、おい・・・。声が大きいって」
俺は小声で美奈子をあやす。
我に返った美奈子は周りを見渡して小さな声で『すいません』と言いながら少し頭を下げた。
「「・・・・・・」」
美奈子がなにも言ってくれないから俺もどうしていいのかわからない。
先ほどまで和やかだった空気は姿を消してしまった。
やっぱり言わないほうが良かったかな───。
美奈子なら受け止めてくれると勝手に思った俺だが、誰が聞いても気持ちがいいことではないのは言うまでもない。
この話をすることで美奈子との関係が決裂してしまう恐れも重々にある。
軽率だった。
後悔してしまったが後の祭りだ。
しかし美奈子が発した言葉は俺が想像していたものとは大きく違っていた。
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
「・・・え?」
「一人で抱え込んで辛かったでしょ?───これからはなにか辛いことがあっても一人で抱え込むなんで水臭いことしないって約束してほしい。そのためにアタシがいるんだから・・・」
「美奈子ちゃん・・・」
「まあ、事情が事情なだけになかなか言えることでもないよね」
そう言いながら美奈子はゴーヤ茶を一口だけ口に含む。
「でも・・・。アタシに話してくれてありがとう」
「美奈子ちゃん───」
俺は心の底から安堵した。
そうなってしまった経緯はどうであれ、男と肉体関係を持ってしまった俺を軽蔑せずに受け入れてくれた上に心配までしてくれた。
それだけで心が軽くなる。
「でも───」
俺に向けていた美奈子の穏やかな顔付きが一変して憎悪に満ち溢れる。
「あいつら許せない───。自分より体の小さい龍ちゃんを無理矢理犯すなんて・・・」
「いや、俺にも非があるしさ・・・。一概にあいつらだけが悪いわけじゃないし───」
「物理的な拘束がなかったとは言え、媚薬のせいで体と心の自由が利かなくなったことをいいことに好き放題弄ばれたんでしょ?そんなのレイプと変わらないじゃん!」
「いや、まあそれはそうなんだけど・・・。俺も無防備すぎたっていうか・・・」
「龍ちゃんは優しすぎるよ」
美奈子はため息を吐きながら言った。
「それでぶっちゃけ加藤のことはどう思ってるの?」
「もしかしたらちょっと気になってる・・・ような・・・なってないような・・・」
「なにそれ」
歯切れ悪く言う俺を穏やかに見つめながら美奈子は少し笑って言った。
「じ、自分でもよくわかんないんだよ」
自分でも顔が赤くなるのがわかる。
「龍ちゃんはもっと自分だけのために生きてもいいと思うよ。龍ちゃんは周りに気を遣いすぎ!」
「別に気を遣ってるわけじゃないんだけどな・・・」
「遣ってるじゃん。小林のこととかさ。アタシがもし龍ちゃんの立場だったとしたら小林のことなんて気にもしないけど。それに、直接小林から加藤のことについて相談を受けたわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
美奈子は痛いところを突いてくる。
「じゃあさ、小林のこと気にしなくてもいいんじゃないかな。直接加藤への気持ちを聞いてない以上知らないのと同じなんだから」
「そう、なのかな」
「当たり前じゃん。小林のこと抜きにして考えてみなよ。そうすれば龍ちゃんが本当は加藤とどうなりたいのかがわかってくると思うよ」
「・・・」
「難しく考えなくていい。色恋沙汰なんて本能で動いていくもんなんだから!」
美奈子は俺にウインクをしてにこりと笑った。
俺も少し笑う。
「お待たせいたしました。明太子パスタと和風ハンバーグ、カレードリアのお客様」
ちょうどその時、ウエイトレスが重そうに注文したものを持ってきた。
「あ、アタシでーす」
美奈子の前に料理が置かれていく。
「野菜たっぷりポトフと山盛りフライドポテトのお客様」
続けて若い男のウエイターが俺の注文したものを持ってきた。
「はい、俺です」
ポトフからは湯気が立ち、コンソメのいい香りでよだれが垂れそうになる。
「いただきまーす!」
俺は美奈子が美味しそうなドリアを口に運ぶのを見届けてからスプーンを手に取った。
「んー!おいしいぃぃー!」
「あ、良かったらポテトも食って」
俺は美奈子にポテトを勧めた。
「ほんとにぃ?ありがとう!」
フォークを手に取ってカリカリのポテトを一つ口に運ぶ美奈子。
「あっつ!!!・・・やだぁ。できたてで超熱いんだけどぉ。龍ちゃん、気を付けてぇ」
そう言いながらお冷を飲む美奈子。
───美奈子と友達になれてほんとに良かった。
俺は美味しそうに次々と料理を口に運んでいる美奈子を見て少し微笑んだ。
俺の話を聞き終えた美奈子は、眉間に皺を寄せ大きな声で怒鳴った。
その声に食事をしていた他の客がこちらに目線を向ける。
「お、おい・・・。声が大きいって」
俺は小声で美奈子をあやす。
我に返った美奈子は周りを見渡して小さな声で『すいません』と言いながら少し頭を下げた。
「「・・・・・・」」
美奈子がなにも言ってくれないから俺もどうしていいのかわからない。
先ほどまで和やかだった空気は姿を消してしまった。
やっぱり言わないほうが良かったかな───。
美奈子なら受け止めてくれると勝手に思った俺だが、誰が聞いても気持ちがいいことではないのは言うまでもない。
この話をすることで美奈子との関係が決裂してしまう恐れも重々にある。
軽率だった。
後悔してしまったが後の祭りだ。
しかし美奈子が発した言葉は俺が想像していたものとは大きく違っていた。
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
「・・・え?」
「一人で抱え込んで辛かったでしょ?───これからはなにか辛いことがあっても一人で抱え込むなんで水臭いことしないって約束してほしい。そのためにアタシがいるんだから・・・」
「美奈子ちゃん・・・」
「まあ、事情が事情なだけになかなか言えることでもないよね」
そう言いながら美奈子はゴーヤ茶を一口だけ口に含む。
「でも・・・。アタシに話してくれてありがとう」
「美奈子ちゃん───」
俺は心の底から安堵した。
そうなってしまった経緯はどうであれ、男と肉体関係を持ってしまった俺を軽蔑せずに受け入れてくれた上に心配までしてくれた。
それだけで心が軽くなる。
「でも───」
俺に向けていた美奈子の穏やかな顔付きが一変して憎悪に満ち溢れる。
「あいつら許せない───。自分より体の小さい龍ちゃんを無理矢理犯すなんて・・・」
「いや、俺にも非があるしさ・・・。一概にあいつらだけが悪いわけじゃないし───」
「物理的な拘束がなかったとは言え、媚薬のせいで体と心の自由が利かなくなったことをいいことに好き放題弄ばれたんでしょ?そんなのレイプと変わらないじゃん!」
「いや、まあそれはそうなんだけど・・・。俺も無防備すぎたっていうか・・・」
「龍ちゃんは優しすぎるよ」
美奈子はため息を吐きながら言った。
「それでぶっちゃけ加藤のことはどう思ってるの?」
「もしかしたらちょっと気になってる・・・ような・・・なってないような・・・」
「なにそれ」
歯切れ悪く言う俺を穏やかに見つめながら美奈子は少し笑って言った。
「じ、自分でもよくわかんないんだよ」
自分でも顔が赤くなるのがわかる。
「龍ちゃんはもっと自分だけのために生きてもいいと思うよ。龍ちゃんは周りに気を遣いすぎ!」
「別に気を遣ってるわけじゃないんだけどな・・・」
「遣ってるじゃん。小林のこととかさ。アタシがもし龍ちゃんの立場だったとしたら小林のことなんて気にもしないけど。それに、直接小林から加藤のことについて相談を受けたわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
美奈子は痛いところを突いてくる。
「じゃあさ、小林のこと気にしなくてもいいんじゃないかな。直接加藤への気持ちを聞いてない以上知らないのと同じなんだから」
「そう、なのかな」
「当たり前じゃん。小林のこと抜きにして考えてみなよ。そうすれば龍ちゃんが本当は加藤とどうなりたいのかがわかってくると思うよ」
「・・・」
「難しく考えなくていい。色恋沙汰なんて本能で動いていくもんなんだから!」
美奈子は俺にウインクをしてにこりと笑った。
俺も少し笑う。
「お待たせいたしました。明太子パスタと和風ハンバーグ、カレードリアのお客様」
ちょうどその時、ウエイトレスが重そうに注文したものを持ってきた。
「あ、アタシでーす」
美奈子の前に料理が置かれていく。
「野菜たっぷりポトフと山盛りフライドポテトのお客様」
続けて若い男のウエイターが俺の注文したものを持ってきた。
「はい、俺です」
ポトフからは湯気が立ち、コンソメのいい香りでよだれが垂れそうになる。
「いただきまーす!」
俺は美奈子が美味しそうなドリアを口に運ぶのを見届けてからスプーンを手に取った。
「んー!おいしいぃぃー!」
「あ、良かったらポテトも食って」
俺は美奈子にポテトを勧めた。
「ほんとにぃ?ありがとう!」
フォークを手に取ってカリカリのポテトを一つ口に運ぶ美奈子。
「あっつ!!!・・・やだぁ。できたてで超熱いんだけどぉ。龍ちゃん、気を付けてぇ」
そう言いながらお冷を飲む美奈子。
───美奈子と友達になれてほんとに良かった。
俺は美味しそうに次々と料理を口に運んでいる美奈子を見て少し微笑んだ。
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