あの約束を、もう一度

夕凪

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第四章

頬を伝う涙[智也編]

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マイクロバスで学校まで帰って来た俺達観音寺高校野球部。



部室には俺以外誰もいない。



他の連中は打ち上げでカラオケに行くと言って意気揚々と部室を後にしていた。



俺も誘われたが断った。



今すぐにでも会いたい人がいたからだ。



胸元で光るネックレスを優しく撫でる。



俺は他の部員同様、試合が終わった解放感といい結果が残せた達成感で清々しい気分だった。



それに───。



龍も応援に来てくれていた。



誰にも分らないように深く帽子を被り、観客席の後ろの方に座っていたが俺にはすぐにわかる。



試合が終わるとあいつはすぐにいなくなってしまった。



外で待ってくれているかもと淡い期待を抱いたが、龍の姿はどこにもなかった。



龍らしいと言えば龍らしい。



機嫌が悪そうな龍の顔を思い出すと口元が緩む。



スマホを取り出してアプリを起動し龍にメッセージを送る。



『今夜会えないか?』



俺は絵文字とかスタンプとか小洒落たもんは使わない。



人によれば高圧的に捉えられるであろう文面であることは間違いないだろう。



そもそも俺は連絡がマメじゃないし、電話も嫌いだ。



それが原因で歴代の彼女にも散々フラれてきた。



───しかし龍とは毎日やり取りをしている。



くだらなくてしてもしなくてもいいような内容だが、俺にとってはなによりも代えがたい大事な習慣となっていた。



~~~♪♪



思ったより返事が早い。



俺は嬉々としてスマホを見つめる。



送り主は潤だった。



いつものように労いの内容のものだと思いながらメッセージに目を通す。



『少し話したいことがあるんだけど今から会えないかな?』



予想とは大きく違うものだった。



俺はいつものように手短に返事を返し、手早く身支度をして部室を出た。










  ──────────────










待ち合わせに指定された場所は学校のすぐ近くにある大きな市営公園だった。



ベンチに座る小さな潤の姿を見つけて足早に近付いていく。



「待たせたな」



俺の声に少し驚いたように目を見開いた後、いつもの可愛らしい笑顔を俺に向けた。



「ううん。ごめんね、疲れてるのに呼び出したりして」



「いや大丈夫だ。いつも応援に来てくれてありがとう」



「僕が勝手に行ってるだけだから気にしないで!」



潤は少し顔を赤くして早口で言う。



「今日の加藤くんいつも以上にかっこよかったよ」



「そ、そうか・・・」



なんて言ったらいいかわからなくて流すような返事になってしまう。



「「・・・・・・」」



沈黙。



「ねえ加藤くん───」



「ん?」



「今日こうやって呼び出したのは伝えたいことがあったからなんだ」



潤の穏やかな言葉がゆっくりと流れていく。



「・・・うん」



「僕ね───。・・・加藤くんのこと好きなんだ」



なんとなく気付いていたのもあるし、龍に似たようなことを言われていたから驚きもしなかった。



「・・・」



「───加藤くん好きな人いるでしょ?」



真っ直ぐな瞳で俺を見つめる潤。



「・・・ああ。いるよ」



「龍ちゃんでしょ?」



「・・・」



微笑みながら言う潤に言葉が出てこない。



「───なんでそう思う?」



質問を質問で返す。



「だって加藤くんいつも龍ちゃんのこと見てるもん」



「え?」



「休み時間も授業中も───。いつだって龍ちゃんを見てたからすぐにわかるよ」



俯きながら小さな声で言う。



「・・・」



「龍ちゃんいい子だもんね。ほんとに・・・」



「・・・ああ」



「龍ちゃんの事好きでもいいから───。二番目でもいいから───。僕と付き合ってくれませんか・・・?」



大きな瞳を潤ませながら懇願する潤。



「潤・・・。俺は───」



夏の匂いを孕んだ生暖かい風が潤の綺麗な髪を靡かせる。



ごくりと唾を飲み込み、慎重に言葉を選びながら思いの丈を吐き出す。



潤の陶器のような白い頬に宝石のような美しい涙が伝った。


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