僕と君と夏の日と。

modaigo

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ある夏の日

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 僕は高校ニ年生。そして今は夏休みの真っ只中、だけど毎日変わらず登校している。その理由は二つある。一つは進学講習会といって進学する生徒を対象とした特別授業があるのだ。それに参加するため僕は毎日登校している。もう一つの理由はあの人に会うため、

 一ヶ月前のある日~
僕は一日の授業も終わり帰路についていた。僕は部活もしてなくてバイトもしていない。もっと言ったら一緒に帰る友達はみんな部活をしているからいつもこの時間は一人の時間だった。だからある日課も秘密だった。
その秘密の日課とは、鳩への餌やり。
「今日も元気だったかい?由紀夫!」
「ポッポー♪」高一の時から仲良くなり毎日餌をあげてたら懐いてしまった。
「由紀夫、ぶくぶくしてて可愛いね~、あぁ可愛い~」
いつものように戯れていたから気づかなかったんだ。君の存在に。
「ねぇ鳩、好きなん?」
ドキッと心臓が高鳴り、痛かった。
その声は僕には別世界だと思ってた。僕なんかに声がかかると思っていなかった。その声の主は、
「あ、に、西野さん、こんにちは」
「影山くん、こんにちは!鳩すきなん?うちも鳩すきやねん」
満面の笑みで話してくれるこの人は、みんなの憧れであり、クラスの中心的存在であった。
「あんなぁ、鳩ってさぶくぶくしてる方が可愛いやん、影山くんは?」
「僕もぶくぶくの方がすきだね~、可愛いし」
お互い鳩の話で盛り上がり、初めて話したのにうまく話せた気がした。
「影山くん、また話そな!うち鳩の話で盛り上がる人居ないからさ」
「わかった また話そ!」
「絶対やでー」
その日はそこで別れた。
その日から会えば必ず話して次第に仲良くなっていった。

月日は戻り~
無事に学校につき席に着いた。一時間目の授業の準備をしていると西野さんが教室に入ってきた。
「みんなおはよー!」
「春、おはよ~」 
みんな口々に西野さんに挨拶をする
人望というか尊敬の念というかわかんないけどみんな必ずと言っていいほど挨拶を返している。
「影山くんおはよう 昨日はちゃんと寝れた?目の下クマできてんで」
今日も変わらず笑顔で接してくれる。
「ちゃんと寝たよ、3時間」
「全然ねてへんやん、あかんで」
僕は苦笑する。実は西野さんに会えると思うと全然寝れなかった。頭の中ではずっと西野さんが居たから。
「もう、心配するやんか、あほ」
そう言い残して西野さんはズンズン立ち去って行った。

半日の進学講習会が終わりみんな帰り支度や部活に赴く生徒たちで教室は賑わって居た。 西野さんはその中心に居た。
「ほな、みんな明日また。帰んのきーつけてな」
西野さんが帰る。そして僕も帰る。
寂しさをこらえ帰路につこうとした時だった。
「わっ!」 
「うわっ!!何してるのっ!」
正門の壁に西野さんが隠れて居た。
「びっくりした?影山くん驚きすぎ」
悪意のない太陽のような笑顔に癒されながら驚かされてびっくりした心臓を落ち着けて居た。
「びっくりしたよ、やめてよ」
「だって影山くん暇なんやろ? ちょっと一緒に帰らへん?うちも暇なんやもん」
正門から二人で他愛もない話をして帰った。

翌日~
「昨日、春瀬が誰かと一緒に帰ってたぜ」
「ほんとに?誰だろ」
ある噂でガヤガヤと教室は賑わっていた。
「みんなおはよー、どしたん?賑やかやなぁ」
「春、昨日誰と帰ってたの?」
一番先に西野さんに駆け寄ったのは西野さんの幼馴染で親友の高山夕桧。
「え、一緒に帰ってたのは影山くんだよ。ね、影山くん!」
西野さんがそう言うと暮らすとみんなが僕を見る。痛くて白い目で。
「なんで影薄くんが私の春瀬と帰ってんのよ。ねぇ?」
ドンっと机を叩き鬼の形相と言うべき顔で間合いを詰める。
「影山くんだよ!夕桧」
「どーでもいいよ春瀬、とにかく私の春瀬になんかしたらただじゃおかないからね。」 
すごい剣幕で怒られた。まるで嵐が過ぎ去ったような。
その日から高山さんによく睨まれるようになった。

数日経ったある日
「なぁ、影山くん。今日こそ一緒に帰らへん?」
「いやぁ、高山さんに怒られちゃうよ」
「大丈夫やで、今日、夕桧は生徒会活動でいーひんよ」
満面の笑みで距離を詰め、ウキウキしてる西野さん。それを見ると断れなくなる。
「わかったよ。帰ろう」
「やったーー!やったやった」
また二人で帰れると思うと嬉しいし、胸がドキドキする。この気持ちの意味がまだわからないけど、これが恋なのかなと少し思った。
久しぶりに二人で帰る帰路はとても楽しく終わって欲しくなかった。いろんなことを話した。鳩のこと、学校のこと、恋のこと。
「影山くんは好きな人いるん?」
「え、何いきなり、びっくりするだろ」
「えー、だって気になるんやもん、いいやろ 聞かせてよ。うちじゃ話し相手ならんって言うん?」
「違うよ。その恋っていうかまだわかんないけどいいなと思う人はいるよ。」
それを聞いてた西野さんは少し顔が火照ってたような顔をしてた。
「そうなんや、ええなぁ。」
少しフフッと笑うとまた満面の笑みでこっちを見る。
「帰ろ、影山くん」
「うん。」 
また少し距離が縮まった気がした。

夏休みの最後の週
今日は豪雨。教室には僕一人。
雷が光る、音がなる。いつもなら驚いてビクビクしてる。でも今日は僕の気持ちは上の空のようだ、こんな気持ち初めてだ。そこにトントンと肩を叩く人がいた。
「君、心ここに在らずだね。まるで誰かのことを考えてるようだ。」
声を掛けてきたのは学長。斎藤修吾。
「まさかだとは思うけど、春瀬のこと考えてるの?だとしたら御門違いだよ。君なんかが春瀬のことを考えるのは。」
高山さんとはまた違う剣幕で怒られた。それは憎悪、嫌悪を込めたような。
「ごめん。でもなんで学長がそんなこと言うの?僕だって考えるのは自由だと思うんだけど。」
「君は本当に鈍感なのかただのアホなのか、とりあえず君には心底腹がたつ。なぜ君みたいな道路の脇の雑草が太陽のような春瀬と話したり一緒に帰ったりできるんだ。そこにふさわしいのは俺なのに。そのために努力もした、勉強もした。なぜお前みたいな愚民が!」
バコッという鈍い音と流れ出る赤い血。そしてジンジンと伝わる痛み。
「おはよー、ん、なにしてんのっ!」
最悪のタイミングで西野さんが来てしまった。
「あ、おはよ。春瀬! こいつが春瀬の悪口言ってたからちょっと懲らしめてやろうかと思ってさ。」
西野さんが駆け寄る、学長ではなく僕の方に。
「影山くんはそんなことしーひん。ほんま信頼してたのに、最低やな。失望したわ」
珍しく刺々しい西野さんをそこに見た。
「とりあえず医務室行こっ! 大丈夫?歩ける?」
支えてもらってようやく立てた。初めての事で驚きと痛みでフラフラしてた。
「なんで、そいつばかり気にするんだ。なんで俺を見てくれない。そんな君必要ない。」 
学長はゆったりと椅子を持ち上げた。
「みんな死ねばいい。」
振り下ろされた椅子が西野さんを襲う
「キャャー」 ドカッと派手な音がした。
「影山くん!」 
咄嗟の判断で西野さんを庇い頭に椅子が当たった。ドバドバと血が流れ余計にフラフラ、ボッーとしてきた。
「良かった。怪我してなくて」
そこで記憶を失い、目覚めたのは病室のベットの上だった。
「起きた! やっと目覚ましてくれたやん。めっちゃ心配したんやで」
ベットの横には目を腫らした顔の西野さんがいた。
「もう、ほんま良かった」
「泣かないで、ほら僕大丈夫だから」
頭には包帯ぐるぐる、顔にはでかでかとガーゼが貼られてた。
後から西野さんに聞いた話では、あの後学長は警察に捕まり、僕は救急車で病院に運ばれた。出血が酷く一時は危ないと思われたが命を取り止めた。
「影山くん死ぬかと思ってんで」
また泣きそうな西野さんの顔を見ると何故か笑えてきた。
「なんで笑ってんの?ほんま人の気も知らんで」
「ごめんごめん、いつも笑顔だから珍しくて可愛くて」
西野さんがえっ!て顔をして目があった。時が止まったような気がした、それは何秒、何分、何時間という長い時間に。そして西野さんが火照って目を背ける。
「もう、そんなん言わんでええの」
「ごめん、つい」
また目が合いフフッと二人で笑う。
「じゃあ、今回守ってもらったしご飯でも行こ。」
またこの満面の笑顔だ。この笑顔が来ると僕は断れない。
「行こう。行きたい。」
ご飯に行く約束をしてその日は別れた。
その後のこと
コンコンっと扉を叩く音がした。入ってきたのは今回担当してくれた医者さんだ。
「影山くん、少し良いかな? 君に話しておかなくてはいけない事があるんだ。」
静かに僕は頷いて話を聞いた。豪雨と雷が窓を叩くあの病室で。

無事に退院した。そして今日は西野さんとご飯に行く日になっている。
「ごめん、待った?」
バタバタと走って来る。
「ううん。大丈夫だよ」
薄い緑のチェックのワンピース
ポニーテールで結ばれた髪。いつもの制服でストレートの髪とはイメージが違いドキッとした。
「いま、見てたやろ。 もうあんま見んとって。恥ずかしいやろ」
一挙手一投足の全てが可愛く見える。
「ごめん。普段と違って可愛くて」
二人で照れて二人でフフッと笑う。これが幸せだなと感じる。
「ほな、今日はラーメン食べ行くで」
ズンズン前に進んで行く西野さんを見ると和やかになる。
ラーメン屋さんにつき二人で並んで食べて笑ってたくさん話した。
「西野さん、今日は楽しかったよ。ありがとうね」
「別にええよ、元はうちが悪いんやし。」
「西野さん、実は話しておかなくてはいけない事があって。実は僕は病気なんだ。」










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