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第六章 聖都陰謀画策編
三
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聖都に来たことはなかったけど、噂では聞いていた。
まず建物がどれも大きく、背が高いという。これは事実だった。
そして周囲をぐるりと城壁に囲まれている。これも事実。
人が多い。これも事実。多様な人種が集まる。これも事実だった。
つまり、まさに聖都、という感想になる。
剣聖騎士団は僕たちを護衛して、そのまま聖都に入った。騎士団は城壁で解散し、ファルカが一人で僕たちを案内していく。
「とりあえずの宿舎へご案内します。七人委員会はちょうど定例会議の最中なので、明日にでも、招かれるでしょう」
「よろしくお願いします」
シリュウが周囲をキョロキョロと見て応じないので、僕だけが言う形になった。
そのまま聖都の中心地に近い位置にある建物の中に入った。どうやら聖都守備隊の宿舎らしい。ファルカ自ら、部屋までついてきた。
「ここはおそらく安全でしょう。ゆっくりと休んでください。明日の朝、また参りますので」
そう言って、彼は去っていった。
僕たちは荷物を置いて、一息ついた。
「風呂にでも行こうか、シリュウ?」
「いや、ちょっと街を見て回ろう」
鎧を脱いで、剣を持ってシリュウが部屋を出て行こうとする。僕も自然とついていく。
外に出ても、僕には何の見当もない。しかしシリュウはそうでもないようだ。
「前に来た時と」歩くシリュウの横に並ぶ。「変わっている?」
「かなり変わったが、まぁ、わからなくはない」
とりあえずは大通りを進んでいるのはわかる。街の中心に向かっている。
「目の前に見えるのが大聖堂だ」シリュウが目の前を指差す。大きなドームがある。「俺が知っている様子より少しだけ増築されているな。最初に建てられたのは百年以上前らしい」
「へぇ」
「隣が騎士団の駐屯地」
大きな交差点に出て、シリュウが左に曲がった。少し進むと、古びた建物がある。しかしかなり大きい。
「ここが中央銀行聖都支店」
そのまま前進するシリュウは色々な場所を説明してくれた。
ぐるっと回ってきて、教会の前に立った。
「ここも教会?」
「ここは教会ではないが、近いと言えば近い。俺の時代では、戦神の宮の祈りの場だった」
「戦神の宮、それは知っている」
僕は記憶を探った。
「剣聖、天位騎士、大きな武勲章を授与していた人だね?」
「その通り。今はいないらしいが」
シリュウは自然な足取りでその教会に入っていった。僕も後に続く。
礼拝堂のようなものはなく、ただ、広い空間があるだけだ。ステンドグラスが光を受けて輝いている。
そのステンドグラスの前に、戦神の大きな像が立っている。陰影で表情までは読み取れない。
「懐かしい?」
「いや、そうでもない」
シリュウは淡々としていた。
「どなた?」
突然の声に、僕たちは視線を向けた。周囲は薄暗くてよく見えない。その薄闇から染み出すように、黒い服を着た老婆が進み出てくる。
「観光客かい?」
「そんなところです」シリュウが丁寧に応じた。「お邪魔をして、申し訳ない」
「戦神も廃れていて、こちらこそ、申し訳ありません」
老婆が頭を下げる。シリュウも頭を下げ、即座に外に向かう。僕も頭を下げて、後を追った。
「今の人、知り合いでしょ?」
「向こうは知らないさ。俺なんて、何人もいた勲章授与者の一人だからな」
「え? あの人が、戦神の宮、なの?」
「五十年前の。生きているとは思わなかった」
それから聖都をうろついて、適当な食堂に入った。リーンと離れているせいもあって、知らないようなメニューも多い。シリュウに尋ねつつ、注文した。
「しかし、タルータたちはどうなったのかな」
料理が来るまでの間に、僕は思わず口にしていた。
「あの山賊みたいな奴らとぶつかったかな」
「それはわからないな。明日の朝、ファルカに聞いてみよう」
料理が到着し、食事になった。食べたことのない味付けだが、悪くない。
食事が終わって、一旦、宿舎に帰った。昼間はいなかったが、夕方は通路を頻繁に人が行き交っている。兵士たちが一日を終えて、戻ってきたのだろう。
そのまま大浴場も借りて、それから部屋に戻る。
外から戻った時にはなかった封書がドアの隙間にあった。宛先はシリュウになっている。
「はい、手紙」
顔をしかめつつ、シリュウが受け取る。
部屋に入っても、特にやることもなく、僕は寝台に横になった。シリュウはさっきの封書を真剣に読んでいる。
それから顔を上げると、どういうわけか、その便箋が僕に差し出された。
「え? 何?」
「面白いぞ」
しぶしぶ、便箋を受け取る。
文章を追っていくと、確かに面白い。
その便箋には、聖都の腐敗に関する告発のようなものが書かれていた。
七人委員会を否定する意見である。
「そんなことを俺に言われても、困るな」
もちろん、便箋に署名はない。
「誰からだろう?」
「誰でもいいさ。俺は別に何もしない。ここに来たのも、身勝手な要求をはっきりと突っぱねるためだ」
強い奴に会いたいとか言っていた気がするけどね。
「変な権力争いに巻き込まれている気がするけど」
「いざとなったら身一つで逃げるのみ、だな」
もっと平穏な旅になると思ったのに、どんどんかけ離れていく。
その日は二人ともゆっくりと休んだ。
翌朝、食事に出ようとすると、ファルカがやってきた。
「お休みになれましたか?」
めいめいに応じると、ファルカは食事に誘ってくれた。
堅苦しいところに行くのかな、と思うと、僕たちは宿舎の近くの、屋台へ連れて行かれた。様々な具材やソースが用意され、その場でサンドイッチを作ってくれるらしい。
リーンにはそんな店はない。具材もソースも、見たことがないものがある。
シリュウは慣れた様子で注文している。なんか、自分だけ田舎者みたいで、恥ずかしいな。
僕はファルカと店員のアドバイスを元に、どうにかこうにか、サンドイッチを買うことができた。都会って、ややこしいなぁ。
公園へ行って、そこでベンチに並んで腰掛け、食事になった。ファルカはお茶を用意してきている。それを分けてもらった。
「聖都の見学をされたとか」
そうファルカの方から切り出してきた。どうやらちゃんと僕たちの行動を把握しているらしい。
「昔を思い出してね」
シリュウが冗談で返すけど、ファルカには理解できないようだった。
「それで、七人委員会は、どう言っている?」
「今日の午後、時間を用意しました。十三時からです」
僕は時計を確認した。まだ九時だ。
「服装は?」
「正装が好ましいですが、しかしシリュウさん、あなたは」
ファルカが少し言い淀んだが、
「要請を蹴るつもりでしょう?」
と、最後まで口にした。
聞いたシリュウは不敵な笑みを見せる。
「印象を悪くした方が都合がいい、とは思うが、ファルカ、あんたへの迷惑にならないか?」
「その程度では何の問題もないでしょう。あなたは私の部下ではない」
そうか、とシリュウが頷く。
「聞いていなかったが、タルータはどうなった?」
「行方不明です。敵に連れ去られたのかもしれませんが、わかりません。捜索中です」
不穏といえば不穏な内容だ。
どうして連れ去ったんだろう?
食事に集中するふりをして、僕は考えた。でも何もわからない。
「襲撃者の尋問は?」
「進展中です、近いうちに結果が出るでしょう」
「任せるよ」
シリュウがサンドイッチの最後のひとかけらを口に放り込んで咀嚼する。
「七人委員会って」僕は遠慮がちにファルカに尋ねた。「どうやって選ばれるんでしたっけ?」
「聖都周辺の代表者や有力者の投票で決定します。バランスは取れているはずですよ。様々な職種の人が選ばれます。政治家、軍人、企業経営者、弁護士、神官などです。彼らが議論して、聖都の方針を決定します」
「今では勲章の授与も担当しているとか?」
ファルカが苦笑いを浮かべた。
「勲章に関しては、連合、同盟、各国からの推薦を受けて、それを承認するだけです。調査する部署もありますが、しかし現状では、それも限界があります」
「現状?」
僕が尋ねると、ファルカが尋ねる前にシリュウが応じた。
「前だったら聖都の連中が人間の国家群の先導者だったが、すでに連合と同盟の二強の時代になってるんだ。そして人間の一部は自由に悪魔と戦っている。全部を把握するのは不可能だ。つまり、アルスのような立場の探索士はほとんど無視されるわけだ」
それもそうか。
「でも、その僕に勲章をくれるって話だけど?」
シリュウとファルカが同時に僕を見て、さすがに困惑した。
「何?」
「いや」シリュウが頬を指で掻いた。「評価されているわけがない、っていうのがさっきの話の主旨なんだけどな」
「それはさすがに僕でもわかる!」
思わず勢い込んでしまった。冷静になろう。
「でも形だけならもらうってもいいかもしれないような気がしないでもないと思ったり思わなかったり」
「貰えば、それを理由に取り込まれるぞ」
バッサリとシリュウが切って捨てた。
まぁ、だろうけど。
「もらうつもりはないよ……」
ファルカが微笑んでいる。
「どこか行きたいところはありますか? 時間まで、お付き合いしますよ」
そう願い出てくれたファルカに、シリュウが頷いて、
「この田舎者に都会を見せてやってくれ」
と、言い出した。
田舎者って……。否定できないけど……。
それからシリュウは一人でどこかへ行ってしまい、僕はファルカの案内で、聖都を歩き回った。
時間になる前に、聖都図書館へ連れて行ってもらい、これには仰天した。
リーンの図書館とは比べ物にならない大きさで、地上は四階、地下が三階まであるという。とてもじゃないけど、今どころか、一日二日でも時間は足りないだろう。
思わず、いつまで聖都に滞在するのか、計算していた。
「そろそろ時間ですね」
促されて、仕方なく図書館を出た。ファルカと二人で大聖堂へ向かう。
その正面玄関が見えてくると、シリュウが突っ立っているのがわかった。剣を背中に二本背負っているだけで、平服だった。僕ももちろん、平服である。大聖堂へ入っていく人は背広か、制服が多い。
「お待たせしました」
「たいして待っちゃいない。案内してくれ。いや、昼飯を食う時間はあるかな」
ファルカが時計を確認する。たぶんそれはポーズで、ファルカはちゃんと考えている。
「大聖堂の中の食堂を利用しましょう。職員が利用する場所ですが」
こうして僕たちは大聖堂に入った。
まず建物がどれも大きく、背が高いという。これは事実だった。
そして周囲をぐるりと城壁に囲まれている。これも事実。
人が多い。これも事実。多様な人種が集まる。これも事実だった。
つまり、まさに聖都、という感想になる。
剣聖騎士団は僕たちを護衛して、そのまま聖都に入った。騎士団は城壁で解散し、ファルカが一人で僕たちを案内していく。
「とりあえずの宿舎へご案内します。七人委員会はちょうど定例会議の最中なので、明日にでも、招かれるでしょう」
「よろしくお願いします」
シリュウが周囲をキョロキョロと見て応じないので、僕だけが言う形になった。
そのまま聖都の中心地に近い位置にある建物の中に入った。どうやら聖都守備隊の宿舎らしい。ファルカ自ら、部屋までついてきた。
「ここはおそらく安全でしょう。ゆっくりと休んでください。明日の朝、また参りますので」
そう言って、彼は去っていった。
僕たちは荷物を置いて、一息ついた。
「風呂にでも行こうか、シリュウ?」
「いや、ちょっと街を見て回ろう」
鎧を脱いで、剣を持ってシリュウが部屋を出て行こうとする。僕も自然とついていく。
外に出ても、僕には何の見当もない。しかしシリュウはそうでもないようだ。
「前に来た時と」歩くシリュウの横に並ぶ。「変わっている?」
「かなり変わったが、まぁ、わからなくはない」
とりあえずは大通りを進んでいるのはわかる。街の中心に向かっている。
「目の前に見えるのが大聖堂だ」シリュウが目の前を指差す。大きなドームがある。「俺が知っている様子より少しだけ増築されているな。最初に建てられたのは百年以上前らしい」
「へぇ」
「隣が騎士団の駐屯地」
大きな交差点に出て、シリュウが左に曲がった。少し進むと、古びた建物がある。しかしかなり大きい。
「ここが中央銀行聖都支店」
そのまま前進するシリュウは色々な場所を説明してくれた。
ぐるっと回ってきて、教会の前に立った。
「ここも教会?」
「ここは教会ではないが、近いと言えば近い。俺の時代では、戦神の宮の祈りの場だった」
「戦神の宮、それは知っている」
僕は記憶を探った。
「剣聖、天位騎士、大きな武勲章を授与していた人だね?」
「その通り。今はいないらしいが」
シリュウは自然な足取りでその教会に入っていった。僕も後に続く。
礼拝堂のようなものはなく、ただ、広い空間があるだけだ。ステンドグラスが光を受けて輝いている。
そのステンドグラスの前に、戦神の大きな像が立っている。陰影で表情までは読み取れない。
「懐かしい?」
「いや、そうでもない」
シリュウは淡々としていた。
「どなた?」
突然の声に、僕たちは視線を向けた。周囲は薄暗くてよく見えない。その薄闇から染み出すように、黒い服を着た老婆が進み出てくる。
「観光客かい?」
「そんなところです」シリュウが丁寧に応じた。「お邪魔をして、申し訳ない」
「戦神も廃れていて、こちらこそ、申し訳ありません」
老婆が頭を下げる。シリュウも頭を下げ、即座に外に向かう。僕も頭を下げて、後を追った。
「今の人、知り合いでしょ?」
「向こうは知らないさ。俺なんて、何人もいた勲章授与者の一人だからな」
「え? あの人が、戦神の宮、なの?」
「五十年前の。生きているとは思わなかった」
それから聖都をうろついて、適当な食堂に入った。リーンと離れているせいもあって、知らないようなメニューも多い。シリュウに尋ねつつ、注文した。
「しかし、タルータたちはどうなったのかな」
料理が来るまでの間に、僕は思わず口にしていた。
「あの山賊みたいな奴らとぶつかったかな」
「それはわからないな。明日の朝、ファルカに聞いてみよう」
料理が到着し、食事になった。食べたことのない味付けだが、悪くない。
食事が終わって、一旦、宿舎に帰った。昼間はいなかったが、夕方は通路を頻繁に人が行き交っている。兵士たちが一日を終えて、戻ってきたのだろう。
そのまま大浴場も借りて、それから部屋に戻る。
外から戻った時にはなかった封書がドアの隙間にあった。宛先はシリュウになっている。
「はい、手紙」
顔をしかめつつ、シリュウが受け取る。
部屋に入っても、特にやることもなく、僕は寝台に横になった。シリュウはさっきの封書を真剣に読んでいる。
それから顔を上げると、どういうわけか、その便箋が僕に差し出された。
「え? 何?」
「面白いぞ」
しぶしぶ、便箋を受け取る。
文章を追っていくと、確かに面白い。
その便箋には、聖都の腐敗に関する告発のようなものが書かれていた。
七人委員会を否定する意見である。
「そんなことを俺に言われても、困るな」
もちろん、便箋に署名はない。
「誰からだろう?」
「誰でもいいさ。俺は別に何もしない。ここに来たのも、身勝手な要求をはっきりと突っぱねるためだ」
強い奴に会いたいとか言っていた気がするけどね。
「変な権力争いに巻き込まれている気がするけど」
「いざとなったら身一つで逃げるのみ、だな」
もっと平穏な旅になると思ったのに、どんどんかけ離れていく。
その日は二人ともゆっくりと休んだ。
翌朝、食事に出ようとすると、ファルカがやってきた。
「お休みになれましたか?」
めいめいに応じると、ファルカは食事に誘ってくれた。
堅苦しいところに行くのかな、と思うと、僕たちは宿舎の近くの、屋台へ連れて行かれた。様々な具材やソースが用意され、その場でサンドイッチを作ってくれるらしい。
リーンにはそんな店はない。具材もソースも、見たことがないものがある。
シリュウは慣れた様子で注文している。なんか、自分だけ田舎者みたいで、恥ずかしいな。
僕はファルカと店員のアドバイスを元に、どうにかこうにか、サンドイッチを買うことができた。都会って、ややこしいなぁ。
公園へ行って、そこでベンチに並んで腰掛け、食事になった。ファルカはお茶を用意してきている。それを分けてもらった。
「聖都の見学をされたとか」
そうファルカの方から切り出してきた。どうやらちゃんと僕たちの行動を把握しているらしい。
「昔を思い出してね」
シリュウが冗談で返すけど、ファルカには理解できないようだった。
「それで、七人委員会は、どう言っている?」
「今日の午後、時間を用意しました。十三時からです」
僕は時計を確認した。まだ九時だ。
「服装は?」
「正装が好ましいですが、しかしシリュウさん、あなたは」
ファルカが少し言い淀んだが、
「要請を蹴るつもりでしょう?」
と、最後まで口にした。
聞いたシリュウは不敵な笑みを見せる。
「印象を悪くした方が都合がいい、とは思うが、ファルカ、あんたへの迷惑にならないか?」
「その程度では何の問題もないでしょう。あなたは私の部下ではない」
そうか、とシリュウが頷く。
「聞いていなかったが、タルータはどうなった?」
「行方不明です。敵に連れ去られたのかもしれませんが、わかりません。捜索中です」
不穏といえば不穏な内容だ。
どうして連れ去ったんだろう?
食事に集中するふりをして、僕は考えた。でも何もわからない。
「襲撃者の尋問は?」
「進展中です、近いうちに結果が出るでしょう」
「任せるよ」
シリュウがサンドイッチの最後のひとかけらを口に放り込んで咀嚼する。
「七人委員会って」僕は遠慮がちにファルカに尋ねた。「どうやって選ばれるんでしたっけ?」
「聖都周辺の代表者や有力者の投票で決定します。バランスは取れているはずですよ。様々な職種の人が選ばれます。政治家、軍人、企業経営者、弁護士、神官などです。彼らが議論して、聖都の方針を決定します」
「今では勲章の授与も担当しているとか?」
ファルカが苦笑いを浮かべた。
「勲章に関しては、連合、同盟、各国からの推薦を受けて、それを承認するだけです。調査する部署もありますが、しかし現状では、それも限界があります」
「現状?」
僕が尋ねると、ファルカが尋ねる前にシリュウが応じた。
「前だったら聖都の連中が人間の国家群の先導者だったが、すでに連合と同盟の二強の時代になってるんだ。そして人間の一部は自由に悪魔と戦っている。全部を把握するのは不可能だ。つまり、アルスのような立場の探索士はほとんど無視されるわけだ」
それもそうか。
「でも、その僕に勲章をくれるって話だけど?」
シリュウとファルカが同時に僕を見て、さすがに困惑した。
「何?」
「いや」シリュウが頬を指で掻いた。「評価されているわけがない、っていうのがさっきの話の主旨なんだけどな」
「それはさすがに僕でもわかる!」
思わず勢い込んでしまった。冷静になろう。
「でも形だけならもらうってもいいかもしれないような気がしないでもないと思ったり思わなかったり」
「貰えば、それを理由に取り込まれるぞ」
バッサリとシリュウが切って捨てた。
まぁ、だろうけど。
「もらうつもりはないよ……」
ファルカが微笑んでいる。
「どこか行きたいところはありますか? 時間まで、お付き合いしますよ」
そう願い出てくれたファルカに、シリュウが頷いて、
「この田舎者に都会を見せてやってくれ」
と、言い出した。
田舎者って……。否定できないけど……。
それからシリュウは一人でどこかへ行ってしまい、僕はファルカの案内で、聖都を歩き回った。
時間になる前に、聖都図書館へ連れて行ってもらい、これには仰天した。
リーンの図書館とは比べ物にならない大きさで、地上は四階、地下が三階まであるという。とてもじゃないけど、今どころか、一日二日でも時間は足りないだろう。
思わず、いつまで聖都に滞在するのか、計算していた。
「そろそろ時間ですね」
促されて、仕方なく図書館を出た。ファルカと二人で大聖堂へ向かう。
その正面玄関が見えてくると、シリュウが突っ立っているのがわかった。剣を背中に二本背負っているだけで、平服だった。僕ももちろん、平服である。大聖堂へ入っていく人は背広か、制服が多い。
「お待たせしました」
「たいして待っちゃいない。案内してくれ。いや、昼飯を食う時間はあるかな」
ファルカが時計を確認する。たぶんそれはポーズで、ファルカはちゃんと考えている。
「大聖堂の中の食堂を利用しましょう。職員が利用する場所ですが」
こうして僕たちは大聖堂に入った。
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