桜が散る頃に

翠恋 暁

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魔王降臨

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 違和感の正体。
 見えている世界がいつもと違うと言うことだ。
 異世界だから当然だ、とかそう言うことではなく、視点の高さが違うのだ。
 いつもと比べてかなり低い。
 目の前にいる悪魔の腰あたりだろうか。
 だから、悪魔をかなり見上げる形になっている。
「なぁ、状況を説明してくれないか?」
「承知しました。魔王様がお考えのように、魔王様は転生者でございます。正確には転移者と言う形になります」
「でも、転移者って、転移してきただろ。俺の場合身長が年齢と会ってない気がするんだけど……」
 気がするのではなく、あっていない。
 多分どっからどうみても小学生だ。
 ランドセルを背負っていてもなんら不思議はない。
「それに関してはこちらのミスでございます。申し訳ありません」
 ミス、一体なにををどうミスるとこうなるのだろうか。
「実を申しますと、現在魔界軍と人間軍は衝突を繰り返しています。そんな中、先代魔王様が人間軍の勇者たる存在に倒されてしまったのです」
 よくある展開だ。
 テンプレもテンプレすぎる。
「焦った私達は急遽きゅうきよ異世界から魔王様を呼び寄せることにしたのです」
「それが俺と……」
「はい、しかしながら邪魔が入ってしまったのです。転生施設に勇者の侵入を許してしまったのです。勇者が放った魔法によって、転移に必要な情報が一部欠損。それによって、転移場所がずれ、魔王様自身も幼体化してしてしまったと言うことです」
 魔界軍かなり危なくない?
 結構ピンチだよね。
 そこで一つ疑問が残る。
「俺は成長できるのか、ずっとこのままなんてごめんだぞ」
「それに関しては心配には及びません。しっかり成長するはずです……」
 少しはっきりしないな。
 もう少ししっかりとした確証が欲しい。ま、なるようにしかならないよな。
「なにより、お迎えが遅くなり申し訳ありませんでした」
「俺は別に構わないんだが、他の魔族は俺が魔王になることに反対しないのか?」
「そうなった場合は私が対処いたします」
 グッ、と拳を握る悪魔の顔には僅かな微笑みが広がっていた。
 怖い。軽く殺しそうな雰囲気をかもし出している。
「わかったけど、俺は何もできないぞ、魔法なんて使えないと思う」
 概念とか基礎知識なんかがなにもないのだ。
「何を仰いますか、その膨大な魔力ならばなんでもできるはずでございます」
「……そんなにあるのか?」
「はい、素人目にもわかります」
 なんか使えそうな気がしてきた。
 とは言っても使えなかった時のフラグ回収が怖いので、これ以上は余計なことは考えないようにしておこう。
「とりあえず了解した。それであなたの名前は?」
「はっ、我が名はベルゼブブ。先代魔王より魔族統括を任されておりました」
「俺は桜木裕翔さくらぎゆうとだ。その……なるべく名前で呼んでもらいたい」
 自分が魔王というのが信じられないというのもあるが、何より自分の名前で呼ばれないと反応できそうにないから。
「わかりました。それでは、以後ユウト様とお呼びいたします。よろしくお願いいたします」
「うん、よろしく」
 こうして桜木裕翔は異世界の魔王として降臨することが決まってしまった。
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