桜が散る頃に

翠恋 暁

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魔王城にて

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「なんだこれ……」
 ゲートから出た俺の第一声はそれだった。
「これがセントクレア城?」
「はい、これでございます」
 俺はセントクレア城の城門の前に立っている。
 この場所から見てもかなり大きいことがわかる。
「これが中心の城、やはり大きな。これが一番大きい城なのか?」
「いえ、ここはニ番目に大きな城です。一番大きいのは、別にあります」
 これよりも大きい城があるのか。
 これだって日本の城の三倍近くはあるだろうに。
「一番大きな城は本来の魔界にあります」
 ちょっと待ってくれ。頭が追いつかない。
「本来の魔界?」
 ここが魔界ではないのだろうか。
「我々はいわゆる侵略者というやつです。とはいえ恐怖政治などを求めているわけではありませんが……」
 なんとなくは理解ができてきた。つまり面倒くさいことになっているということはわかった。 
 多分相当面倒くさい状況になっている。
「本当の魔界はどこにあるんだ?」
「月にございます」
「月……か」
 魔界が月っていうのもどこかの設定ではあったな。
 俺らの住む世界でも月に悪魔はいたんだろうか。
 アポロ11号が月面着陸をしたから、なんともいえないが。
 でも、NASAが何か隠しているのは事実だと思う。悪魔がいてもおかしくないか。
 ……でも、今となっては縁のない話だ。
 そんなこんなで話をしていると、重々しい音を上げて門が開き始めた。
「さ、参りましょう」
 そう促され、城の中へ足を踏み入れた……のは良かったのだが。
「……長い……」
 城門から玄関までの距離が長い。
 どれくらいだろうか。
 多分、運動会で走るくらいの距離があるだろう。そういえば小学校の時は順位ごとにシールがもらえたんだよな。今となってはただのシールじゃんって思うのだけれど当時は1番のシールが欲しくて頑張ったものだ。他のと比べて少しだけキラキラしているという理由で。そんなことは置いておき、100はないにしても50mくらいあるだろう。
「申し訳ありません……」
「いや、大丈夫」
 多分本気を出せば7秒くらいで行ける距離だから。
 そうして歩くこと、少し。
 無事玄関に着いた。
 ベルゼブブが玄関の扉を開けた。
「おかえりなさいませ」
 五人のメイドが出迎えてくれた。
「うむ」 
「あの、ベルゼブブ様そちらの子供は?」
「ベルゼブブ様の隠し子ですか?」
「かわいい~」
 メイドたちは、俺を撫でたり抱きしめている。
 こう何人もの美女、一部美少女に撫でたり抱かれたりするとやっぱり緊張するな。
 でも、幸せだぁ~
「ユウト様ぁ~」
 ベルゼブブがそう叫んでいる。 
 あ、まずい。
「……ちょっと待って、待ってよ」
 そう、メイドたちに制止をかける。
 その隙にベルゼブブも寄ってくる。
「ユウト様ぁ~、すいません」
 確かに幸せだった。
 だが苦しかった。
 窒息しかけた。危うく転生してすぐ昇天してしまうところだった。
「まったく、この方は魔王様だぞ。行動を慎め」
 そうベルゼブブがいうと、玄関ホールは静寂と化した。
 メイドたちがみるみるうちに青ざめていく。
「も、申し訳ありませんでした」
 五人のメイドが今度は土下座を始めた。前後左右上下の動きが激しいメイドたち。
「え、えっとこれはどういう……?」
「この者共はユウト様が魔王様とは知らなかったのですよ」
「なんで、こんなに怯えてるんだ?」
「それは、殺されかねませんから、魔王は絶対なんですよ」
「殺す? まさか、こんなことするわけないじゃん」
「罰はどうしますか」
 至って冷静にそう俺に告げてくる。
「与えないといけないのか?」
 正直、女の子に罰なんて与えたくないんだけど……
「少なからず与えなくては、というか与えなくては格好がつきません。ここは魔王として一つ」
 とは言っても、これといって罰が思いつくわけでもない。
 普段からそんなこと考えてないしな。流石に俺もそこまで痛い人間ではなかった。
 というか格好がつかないとは一体?
「ベルゼブブ、どんなのがいいの?」
「そうですね……」
 悩むベルゼブブ。
 すると、何か思いついた、というか思い出したかのように、口を開いた。
「ユウト様に専属のメイドをつけましょう」
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