桜が散る頃に

翠恋 暁

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魔王とメイド

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「専属のメイド?」
「はい、考えてみれば魔王にメイドがつかないなどおかしすぎます」
 いや、つかなくても良さそうだけどな。
 むしろ、つかない方が自由に出来そうなんですけど……
「二人出すことにしましょう」
 あ、俺の意見は聞く気ないですか。
 そうですか……
「それでは、リーゼとエリザベスにお願いします」
 名前を呼ばれた二人は驚いた顔をして慌ててうなづいた。
 選ばれなかった他のメイドはすごく悔しそうだ。
 これも上からの命令なのだ、二人を恨まないで欲しいものだ。
「それでは自己紹介をお願いします」
 二人は顔を見合わせ、決心したかのように前へ出てきた。
 というか、二人ともかわいいな。
 という一個人の感想は今は置いておく。
「え、えっと、私はリーゼです。趣味は読書です」
 黒目で黒髪、身長は150cmくらいだろう。
 少しおどおどしているのも身長がそこまで高くないのも、まるで日本人だ。
 その立派な角を除けば。
「彼女は牛魔王直結の血筋です。確か叔父が過去最強の牛魔王だったとか」
 そうベルゼブブが付け足す。
 牛魔王か。
 てか、それだって魔王じゃん。
 最初から彼女を魔王にすればいいのに……
「なんで彼女を魔王にしないんだ?」
「先代魔王様の言いつけで、次の魔王は魔力量、頭の良さが最高のやつにしろと言われておりまして……」
「私には、魔力量が足りないのです。単純な力なら負けないと思うのですが……」 
 うん、流石魔族だよ。
 てか、俺そこまで頭良くないと思うんだけど……
「よろしく」
 そういう以外になんて言えばいいのだろうだ。
「は、はいよろしくお願いします」
「はいはい、次は私」
 もう一人の少女が前へ出た。
 金髪碧眼きんぱつへきがんヨーロッパ系、そんなイメージがする。
 というか、俺の中でそういうイメージがある。
 身長はリーゼと同じで150cmくらいだろうか。
「私はエリザベスです。ベスって呼んでください」
 この流れで行くと
「彼女もすごい血筋だったりするの?」
 そう、ベルゼブブに問いかけた。
「彼女は吸血鬼ヴァンパイヤです。本名をエリザベス=ダークナイト。吸血鬼の王家です」
 そ、想定外。
 なんで王家の人間がメイドなんてしてるのさ。
 謎すぎる魔界事情。
「よ、よろしく」
「ユウト様、お気をつけください」
 あぁ、もう嫌な予感しかしない。
 このタイミングでの忠告とか絶対ろくなことじゃないじゃん。
「……何に気をつけるんだって?」
「彼女は光なき月、ダークネスムーンそう呼ばれています。暗殺にこれ以上適任はおりません」
 暗き夜の光なき月。まさしく暗殺者として適任ってなんだろ、その知識。
 俺に誰かを暗殺しろと指示しろとでも言いたいのだろうか。
 てかその気をつけなさいだと俺が狙われてるみたいじゃん。やめてよね。
「とりあえず、お前たちにユウト様を任せる。多分何もないと思いますけど気は抜かないように」
 ベルゼブブがそう注意? をしている。
「「はい」」
「あ、そういえば彼女たちは十魔族長ですので、護衛面も心配しないでください」
「十魔族長?」
「はい、十ある魔族の族長です。それぞれ牛魔王と吸血鬼のトップということになります」
 これ以上ないくらいのクラスのメイドですね。
 心強いと同時に少しばかりの恐怖を覚えた。
 
 
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