桜が散る頃に

翠恋 暁

文字の大きさ
7 / 17

状況確認

しおりを挟む
「それで状況はどうなんだ?」
 つい先ほど二人のメイドを得た俺は少し浮かれていたのかもしれない。いや、かなり浮かれていた。
 なんてったって彼女らとても可愛いんだもん。というか、他のメイドも可愛いということについ先ほど気がついた。
 だがそんな楽しみも一瞬だった。
 どうやら俺はこの先突きつけられる現実というものを甘く見ていたようだ。
 何か手があるだろうと何かよくわからないものに期待していた俺に絶望とまではいかないが驚愕きょうがくを押し付けてきた、そんな感じだ。
「控えめにいって最悪です」
 本当に驚きだ。
 言葉さえ出なくなるとはこのことだ。控えめにいって最悪って、ストレートにいったらどうなるんだろう。
 まさしく絶望とかそんな感じなのだろうか。
「何がどうなって最悪なんだ?」
「では、状況を順を追って説明します。最初に我々がこの星に来たときに人間界の半分を征服しました……」
 いわゆる、最初の快進撃だ。
 何が起こっているかわからないうちは何かを起こしている方が圧倒的に有利だ。これは当然。
 今回なら突然攻めてきた魔界軍によるパニックが起こったことだろう。それが一番有利だった状況。
 でも、人間は順応、適応する生物だ、少なくとも人間以外の生物もそうやって生き抜いてきた。
 だから、そういった快進撃を続けることはできない。できなくないわけではないがこれといって何かを成し得るには、特に侵略をするならば一気に行くべきなのだ。何事にも勢いは大切なのだ。
 理解が及ばないうちに全てを終わらせることが最重要課題なのだ。
「しかしこの星に来て15年経った時です。その時我々は人間界の三分の二を征服し終えていました。しかし、状況はたった一年で一変しました……」
 15年ってすごいスパンがあるな。
 なんでったって15年、長期戦どころの話じゃないよ。
「ちょっと待て、15年間何をやってたんだ?」
「戦線が進展するわけでもなくかといって後退するわけでもないので油断をしていた、そういうのが正しいでしょう」
 やっぱり、この悪魔なんだか抜けたところがあるんだよな。
「それでどうなったんだ」
「アルデモウスというところがあるのですが、そこで大敗しました」
 多分それが決して負けてはいけない戦いだったのだろう。
 それが人間にとっての反撃の狼煙のろし、悪魔にとっての負けの始まり。人類史に残る人類側の快勝。未来で語り継がれること間違いなしだ。
「……勇者によるものです」
 やはりどの時代でもどこでも勇者というものはすごいものだ。
 それ自身は少しだけ個々の能力を上回るだけだ。でも、集団の力は素晴らしいものだ。
 簡単な話でよくある一人はみんなのためにみんなは一人のために、というやつだ。相乗効果というやつだ。相互が自分を高め合うという。つまるところの数の暴力だ。
「その後魔王様の短気により単騎で乗り込みあっけなく死んでしまいました」
「そこは止めろよ……」
 負のループから脱出するどころかさらに沈んでんじゃん。
 魔王も魔王だ。
 短気を起こして単騎で突撃って、全く何をやってるんだか。
 殺してくださいっていってるようなものじゃないか。そして俺はそんな人を一人知っている。がそれはまた別の機会に。
「それ以降、我々は勝てるはずの戦いでも勝てなくなりました。軍の士気はまさしく最悪です。気づけば領土は最初の半分になっていました」
 つまりはこの星の四分の一を今現在所有しているわけか。
 確かに最初と比べれば劣ることには劣る。
 今すぐどうにかできるならどうにかしたい、でも俺は魔法も魔術もましては剣術なんてもってのほかだ。
 現状の打破には時間が必要であることは間違いない。
 さぁ、どうすれば時間を稼ぐことができるだろうか。戦争中に時間を稼げるちょうどいい口実があるはず。何か打開策はないのだろうか。
 そこで俺の頭で電球が光った。
 まさしく1パーセントのひらめきだ。エジソン、サンクス。
 あ、でもこれって99パーセント頑張らないとってこと? あれ? エジソンダメなのかな? 結局は努力に勝る天才なしってやつですか。
 ま、そんなことはさておき。
「……休戦協定だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...