桜が散る頃に

翠恋 暁

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帝国議会場への道のり

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 俺は一つ重大な点を見落としていたようだ。
 これからも必要になることだろう。そんなものを見落とすなんて、ありえない。
 多分だけど、こんなことにはならないはずだ。
「なぁ、ベス。これ飛んだ方が早くない?」
 わざわざクネクネと曲がりくねっている俺のような道を歩くことなんてないのではないか。というかもう少し道まっすぐ作ってくださいよ。
「……言われてみればそうかもしれないです。というか絶対にその方が早いですね。盲点でした」
「やっぱりそうか」
 飛べるなら目的地まで一直線の最短距離で行けるから。
「じゃ、それで行くか。勇者って飛べるのか? リーゼは飛べないよな?」
 勇者が飛べないなら、俺が運ぶとしよう。
 リーゼはベスが運んだ方がいいだろう。その方が問題もないはずだ。
「ユウト様、私飛べますよ」
 そういったのは、他でもないリーゼだった。
「……え? そうなの? 知らなかったんですけど……」
 牛魔王って翼あったっけ? 意外な新事実が判明した。
「私が飛ぶのは翼によるものではないですけど……」
「翼以外でどうやって飛ぶんだ?」
「魔力の放出によるもの……ですね。膨大な量の魔力は膨大な推進力を生み出しますから」
 本当に魔力はなんでもありですね。
「それで勇者は?」
「飛べなくはないですけど……飛びたくないというのが本心ですね」
「なにかを犠牲にしたり負担がかかるのか?」
 よくある、力には責任がなんたらってやつだろうか。
 案外力には制限が付いているからな。その制限を超えると暴走とか爆発とか……やっぱり危ないわ。
 でもそうなると、やはり俺が運ぶしかないか。
「いえ、気持ちが悪くなるので……ほら、普段空なんて飛ばないじゃないですか。酔っちゃうんですよね」
 てへへ、じゃねぇ。
 ただ単に酔うってなんだよ。
 本当にこいつの相手疲れる。さっきもいろいろ質問責めされたし。一体お前はなんなんだよ。
 はい、勇者ですよね。
 伝説の英雄の凱旋とかされちゃうみんなの憧れの的ですよね。
「……こいつ置いてこうぜ」
「それは名案ですね。ユウト様」
 嬉々とするベスを横目に各々おのおの飛び立つための準備を始める。

「ユウト様、危ないですからおやめください」
「凄い、空を飛べるのは感動、翼って素晴らしい」
 会議が無事終わり、今はベルゼブブに翼の使い方をレクチャーしてもらっていた。
「ユウト様、飲み込みが早いのは素晴らしいんですが、降りてきてください。あぁ、危ないですよぉ~」
 終始ベルゼブブは阿鼻叫喚といった感じで、俺が満足して再び地を踏んだ時には、抜け殻のようになっていた。
「心臓に悪いです。危うく逝ってしまうところでしたよ」
「悪魔って逝くとどこに行くんだ? 流石に天国とかじゃないよな」
 単純な疑問だった。
 やっぱり地獄なんだろうか。
 少なくとも人間は天国ないしは地獄のどちらかに行き輪廻転生を繰り返すらしいけれども、悪魔ってどこのサイクルに入るんだろうか。
 現に寿命だってあるわけだし。
「悪魔には悪魔の天国があるらしいですよ」
 そんな事実を知らされた。
「……そ、そうなんだ」
 もはやこう返すのが精一杯だ。
 とりあえず死ななければいいんだよね。
 何故かよくわからない決意を表明することになってしまった。
 そんなこんなで今に至る。
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