桜が散る頃に

翠恋 暁

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帝国会議場

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  さてと、とりあえず帝都の会議場についた。ついたにはついたけれど……
「これは、国会議事堂だよな」
 そこには真ん中がとんがっている左右対称な建物があった。小学校の時に行った国会議事堂と似ている。限りなく似ている。そんな国会議事堂もどきになぜか妙な懐かしさを感じた。
 が、そんなのも一瞬で次の瞬間そこには、まるで地獄絵図ですか? とそんな光景が広がった。
 まず、ベスが倒れた。
 そして勇者は青ざめトイレへと失踪。まさか本当に酔うとは思わなかった。
というか、それなら勇者と空中戦やれば勝てるじゃん。
 ともあれ、どうしたらこうなるのか、そんな疑問が絶えない。
「リーゼ……これ、どうすればいいの?」
 まずもって最初に対応しないといけないのは、間違いなくベスだろう。
 今や道端の苔のようになっている。それもただの苔じゃなくてしばらく雨が降らなかった時の苔だ。どう見ても干からびていた。
「ベスについては魔力を注げばいいだけですけど……」
「魔力って注げるの?」
「えぇ、普通に手を繋げるだけで魔力量の強い方から弱い方に流れます」
 へぇ、ならベスと手を繋げばいいのか。なら、簡単だ……と思ったんだけど。
 現実ではそう簡単にはいかない。
 恥ずかしい。物凄く恥ずかしいのだ。よくよく考えたら俺は生まれてこのかた家族以外の女子の手を握ったことがない。
「……よ、よしやるぞ」
 そう、宣言にも似た決意を持って挑戦する……ちょっと待ってよ。緊張の度合いが凄い。心臓がばくばくしてる。脈もすごい早い。テストや面接でもこんなに緊張したことないよ。そして手汗が凄い。拭いても拭いてもすぐにでてくる。
 結局いつまでたっても動けないでいた。
「ユウト様、少しよろしいですか」
 そういうと彼女は俺の手を取りベスの手を握らせた。
 うん、柔らかい。なんで男子と女子でこんなに違うんだろう。
 全くマシュマロですか。
 って、何を考えてるんだ俺は、というか手握っちゃったよ。
 いや、まさかこんな日が来るなんて思いもしなかった。
「……ぅん、あったかい……って、はっ」
 手を握ってから数十秒でベスは起きた。
「へぇっ! これは一体」
「ん? あぁ、魔力の回復? そんな感じのやり方をリーゼから聞いたから実践中」
「……は、えぇ、はい了解しました。も、もう大丈夫です」
「そうか、大事がなくて良かったよ」
 全く、そんなに慌てる必要もないのに。一体何に慌ててるんだか。
「すいません、昼間でしたので、想像以上に魔力を消耗してしまいました」
 あぁ、そうか。彼女は吸血鬼、本領を発揮するのは夜か。
「いや、俺こそごめん。こんな時間に働かせちゃって」
「いえ、全然大丈夫です。むしろどんどん使ってください」
 さてと、あとは勇者なんだけど、トイレから戻ってこないな。
「……絶対吐いてるよな」
「えぇ、間違いなく」
 ここに来た時の顔、すごかったからな。青ざめてたなんかじゃない、本当に青くなっていた。
 多少の罪悪感はあるけどま、大丈夫だよな。なんてったって勇者だからね。
「そういえばベス。吸血鬼って太陽の陽に当たると灰になるんじゃないのか?」
 よくある、漫画とか映画とかでは太陽光が当たっただけでサラサラと灰とかしていた。
「えっと、魔術で防御をしていたので灰にはなりません。防御がなかったら、多分溶けてましたね」
 このままじゃ危ないよな。溶けかねないよな。
「あ、そうだ。1つ使っておかないといけない魔法があったな、2人とも例のあれを」
「「了解です」」
 さて、幸い時間はまだある。というか、かなりある。
「買い物に行くか」
 
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