桜が散る頃に

翠恋 暁

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商店街メリークロッツ

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 そこには鍛冶屋、雑貨屋、八百屋、宝石屋などなどそれはもうたくさんの店があった。
「メリークロッツか、存外馬鹿にできないな」
「それもそうですね。なんといってもここは帝都一の商店街らしいですから……あ、ここらしいですよ」
 会議の始まるまでの時間を使いこの商店街へ赴いた。
「それにしても、なぜ商店街なんですか?」
 首をかしげるリーゼ。
「商店街の下見のため……かな」
 まぁ、あくまでそれは建前でここにくるための大義名分ではあるのだが、そこらへんはどうでもいい。
「いらっしゃい、兄ちゃん。何をお求めで?」
「買いに来たのではなく換金しに来たのだ。これはいくらになる」
 そう言って、袋を店主の前に置く。
 重々しい音を立てたそれに店主は顔の色を暗くした。やがて袋に手を伸ばした。
「……どれどれ、こ、これは……」
 お、高価だった? それならオッケー、ウェルカムです。
「兄ちゃん、これ、どこで手に入れたんだ?」
「ん、なぜそんなことが気になる?」
 別に取引が禁止されてるわけではないんだよな。すでに勇者に確認済みだぞ。
「いやな、この石、というか宝石は帝都じゃ取れない。それどころか、ここエンゲラス大陸では取れない、一箇所を除いてだが」
 ああ、なるほどこれ魔界領でしかこの大陸では取れないわけだ。
 だから、そんなに慌てるんだ。
 どうりで勇者もこれを見て苦笑いしていたわけだ。納得納得、とは言ってもどう誤魔化すべきかな。
 でつに怪しいことをしてるわけじゃないし、誤魔化す必要もないか。
「いやはや、お見事な観察眼であるな。左様その石は魔界領からもってきた」
「やはりそうですか。いや、詳しいことはお聞きせぬ、これを換金すればいいのだな」
「……え、あ……はい、お願いします」
 あ、あれ? なんだか拍子抜けだ。てっきりどう取って来たのか聞かれると思ったのにな。
 ま、問題が起こらないに越したことはないか。
「そうじゃのぉ、この品質、量なら5300万コルでどうじゃ」
「……5300コル?」
「いや、5300万コルじゃ。それくらいの価値はある」
 ちょっとまっていただきたい。少し頭がついていかない。
「べ、ベス……5300万コルってどれくらい?」
「そうですね、豪邸が一つ建つくらいですかね……流石に城は厳しいかもしれないですけど……あ、いやいけるかもしれませんね」
「な、なぁ普通の家は建てるのにどれくらいかかるの?」
「だいたい、300~450万くらいでしょうか、どう思いますリーゼ」
「そうですね、多分それくらいだと思いますよ。だいたい1万コルあれば1週間は生きられるんだよね、と勇者は言っていましたし」
 食費だけなら日本でも一万円くらいでどうにかなるだろう。
 この世界の家は木造だし日本なら江戸時代の末期ごろ。
 ということはだいたいの貨幣価値が同じということか、つまり5300万コルは日本円で5300万ってことか……軽く宝くじじゃん。
「そんなに払えるのか?」
 そんな大金がポンとでくくるわけでもあるまい。後払いとかそこらへんだろうか。
「払えなきゃそんな金額は提供しないよ、わしゃ後払いだとかなんだとかは大っ嫌いなんじゃ」
「……はい?」
 つまり、この店には今現在進行形で5300万コルがあるってことですか。銀行とかないの? 強盗とか入ったら一発でアウトじゃん。
 やだ、この世界の金融ってどうなってるの?
 そんな疑問が浮かぶ。怖いわ、この世界。何が起こるかわかったもんじゃない。
「あ、じゃ、5300万コルで大丈夫です」
「ほい、毎度。なんかあったらまたもってきな色つけてやるから」
「……は、はぁ、了解しました」
 そんなこんなで一瞬にして大金持ちへと転身を果たした俺だった。
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