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小鳥遊千春
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「やっぱりって?」
そこにあるのが当然のような言い方だ。
「あぁ、私は桜沢西高校の生徒です」
「ええ?そうなんですか。僕今日そこを受けてきたんですよ」
「そうなんですか、合格すれば私の後輩になるってことですね」
なるほどだから帰り道にあるのが妥当だと考えるよな。
「あれ? でも、今日って試験だから学校ってないんじゃ無いですか?」
「ええ、ありませんでしたよ。でも、図書室に本を返しに行かないといけなくて、朝の早い時間に行ってきたんですよ」
「そこで落としたんですか」
「えぇ、おそらく。学校の前の道で本を取り出そうと頑張ってましたから」
「他の人に取られなかったのはラッキーでしたね」
「はい、あなたで良かったです。本当にありがとうございます」
女性に面と向かってお礼を言われると凄く照れる。
「い、いや、大丈夫です。当然のことをしたまででですから」
噛んだ、噛みまくった。
うぅ~恥ずかしい。
「うふふ、面白い人ですね。お名前はなんて言うんですか?」
「佐々木望です」
「私の名前は知ってますよね」
「はい、小鳥遊千春さんですよね」
「えぇ、その通りです。名字は長いから名前を呼んでくださいね」
「は、はいわかりました。僕のことも望でいいです」
「では望君、コーヒーをどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
すっかりコーヒーを頼んだことを忘れていた。
あれ? そういえば千春って名前どこかで……
「この前話した、高嶺の花。覚えてるよな。名前がわかったんだ。なんて読むかわからないんだけど……」
そう言って公ちゃんはノートに名前を書いた。
《小鳥遊千春》
「あぁ、小鳥遊、そう読むんだよ、それ」
「そうなのか、よく知ってたな」
「うん、教えてくれた人がいてね」
そんなやりとりがあったな。
つまり、このひと、例の高嶺の花さんだ。
本当に綺麗な人なんだな。
合格すれば毎日会えるのかな。
「どうしました? 私の顔に何か付いていますか?」
まじまじと彼女の顔を見てしまっていたようだ。
「い、いや何も付いてないよ」
少し焦ってしまった僕は飲みかけのコーヒーを慌てて飲んでしまった。
うわ、にっが。
砂糖もミルクも入ってない。
ま、入れてないから当然だな。
「う、ご馳走さま。また来ますね」
「はい、お待ちしております」
カランカラン
再び同じ音を立てて扉が開いた。
変わっているのは俺の心、それも感情だけだ。
未だに心臓はバクバクしている。
鼓動は一向に治らず、喫茶店の中にいた時よりも今の方が断然早く血液を送り出している。
「この感情は一体……」
何もわからないまま、自転車を押して帰った。
何も考えずとも彼女のことを考えていた。
当然夜は寝られるわけもなく、徹夜をしてしまった。
「望? 大丈夫か? 望?」
「ん? あぁ、ごめん何だっけ?」
「おいおい、大丈夫か? 受験終わって気が抜けてるんじゃないのか?」
「大丈夫だよ、あ、今日寄るところあるから先帰ってていいよ」
「わかったけど、体は気をつけろよ」
「わかってるよ、気をつける」
そうして、あの日以降僕は毎日あの喫茶店に通うようになっていた。
そこにあるのが当然のような言い方だ。
「あぁ、私は桜沢西高校の生徒です」
「ええ?そうなんですか。僕今日そこを受けてきたんですよ」
「そうなんですか、合格すれば私の後輩になるってことですね」
なるほどだから帰り道にあるのが妥当だと考えるよな。
「あれ? でも、今日って試験だから学校ってないんじゃ無いですか?」
「ええ、ありませんでしたよ。でも、図書室に本を返しに行かないといけなくて、朝の早い時間に行ってきたんですよ」
「そこで落としたんですか」
「えぇ、おそらく。学校の前の道で本を取り出そうと頑張ってましたから」
「他の人に取られなかったのはラッキーでしたね」
「はい、あなたで良かったです。本当にありがとうございます」
女性に面と向かってお礼を言われると凄く照れる。
「い、いや、大丈夫です。当然のことをしたまででですから」
噛んだ、噛みまくった。
うぅ~恥ずかしい。
「うふふ、面白い人ですね。お名前はなんて言うんですか?」
「佐々木望です」
「私の名前は知ってますよね」
「はい、小鳥遊千春さんですよね」
「えぇ、その通りです。名字は長いから名前を呼んでくださいね」
「は、はいわかりました。僕のことも望でいいです」
「では望君、コーヒーをどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
すっかりコーヒーを頼んだことを忘れていた。
あれ? そういえば千春って名前どこかで……
「この前話した、高嶺の花。覚えてるよな。名前がわかったんだ。なんて読むかわからないんだけど……」
そう言って公ちゃんはノートに名前を書いた。
《小鳥遊千春》
「あぁ、小鳥遊、そう読むんだよ、それ」
「そうなのか、よく知ってたな」
「うん、教えてくれた人がいてね」
そんなやりとりがあったな。
つまり、このひと、例の高嶺の花さんだ。
本当に綺麗な人なんだな。
合格すれば毎日会えるのかな。
「どうしました? 私の顔に何か付いていますか?」
まじまじと彼女の顔を見てしまっていたようだ。
「い、いや何も付いてないよ」
少し焦ってしまった僕は飲みかけのコーヒーを慌てて飲んでしまった。
うわ、にっが。
砂糖もミルクも入ってない。
ま、入れてないから当然だな。
「う、ご馳走さま。また来ますね」
「はい、お待ちしております」
カランカラン
再び同じ音を立てて扉が開いた。
変わっているのは俺の心、それも感情だけだ。
未だに心臓はバクバクしている。
鼓動は一向に治らず、喫茶店の中にいた時よりも今の方が断然早く血液を送り出している。
「この感情は一体……」
何もわからないまま、自転車を押して帰った。
何も考えずとも彼女のことを考えていた。
当然夜は寝られるわけもなく、徹夜をしてしまった。
「望? 大丈夫か? 望?」
「ん? あぁ、ごめん何だっけ?」
「おいおい、大丈夫か? 受験終わって気が抜けてるんじゃないのか?」
「大丈夫だよ、あ、今日寄るところあるから先帰ってていいよ」
「わかったけど、体は気をつけろよ」
「わかってるよ、気をつける」
そうして、あの日以降僕は毎日あの喫茶店に通うようになっていた。
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