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新たな始まりと終わり
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「千春さん、受かってました。高校合格しましたよ」
「おぉ、おめでとう。これで君は晴れて私の後輩だよ」
この喫茶店に通い始めて1ヶ月が経とうとしていた。
季節の流れは早いものだ。
何かをするには短いのに何もしないのには長い。
不思議なものだ。
ともあれ今日は合格発表の日だった。
ボードに合否が貼り出されるのを見ているときは不安に押しつぶされそうだった。
張り出され、自分の番号を見つけた時は嬉しすぎて、とりあえず携帯のカメラで連写していた。
メールで合格を公ちゃんと母に伝え1番にこの喫茶店へとやってきた。
お陰で息は上がりまくりだ。
安心したせいなのか咳もゴホゴホと出る。
「大丈夫ですか、急いで来てるれたのは嬉しいですけど、もっとゆっくりでいいんですよ」
「いや、ゲホこれは真っ先に伝えねばとゴホゴホ」
「あ、そうだ、望君。一つ頼みごとがあるんだけれど、頼めるだろうか?」
果たして美人で自分が好意を寄せる女性に頼まれごとをされて断ることができるだろうか。
できるはずもない。
そして何より自転車の爆走の後で頭が回っていなかった。
脳は酸欠状態だった。
「……頼み事ですか? ゲホゲホ」
「本当に大丈夫? 病院行く?」
「大丈夫です」
「それでね、頼み事は一つだけでいいんだけど……ダメかな?」
そう言って、俺を見上げるような体勢をとる。
少し涙ぐんだ目でそれを上目遣いで見てくる。
うん、これは断れない。
その上目遣いは卑怯ですよ。
「わかりました、それで僕は何をすればいいんですか?」
「ここの店員として働いて欲しいんだけど……」
「……はい?」
今ここの店員ととして働いてって聞こえた気がする。
「なんて言いました?」
聞き間違いを期待して再度聞き直す。
「ここで働いてください」
そう懇願された。
ますますわけがわからない。
「えっと、何でここで働かないといけないんですか?」
「……何でもするって言ったのに」
そう言って、千春さんは再び泣きそうな顔になる。
いや、泣いている。
なんか自分が悪者になった気分だ。
「え、あ、その……わ、わかりました。ここで働きます」
どうも、女性の涙に弱い佐々木望です。
というわけで無事、ここの店員として働くことが決まった。
「でも、卒業するまではアルバイトできないんですけど……」
校則でバイトは禁止されているのだ。
「あ、その件は大丈夫」
さっきの涙は何処へやら。
何事もなかったかのように話し始める。
「中学の間、給料一切でないから」
「ごめんなさい、他を当たってください」
タダ働きなんて嫌だ。
労働にはそれに見合った対価が払われなければいけない。
「ちょっと待って望君。話は最後まで聞いて」
「それで、タダ働きさせられるんですか?」
「違うよ。中学の間の分は高校に入ってから一括で渡す。だから、中学の間はあくまでお手伝いという名目で行動する。どう完璧じゃない」
それでも見つかったら問題あるよね。
そうなったらどうするんだろうか。
でも、これ以上泣かれて自分が悪者のようになるのは嫌だ。
「はぁ~、わかりました。それでいきましょう」
「ありがとう、望君。大好き」
「……女性が軽々しく大好きなんて言ったらいけませんよ」
一瞬、本気にしてしまうところだった。
子供なら、軽々しく大好きとか好きとか言っていいけど……いや、軽々しくはダメか。
それでも高校生が言ったらアウトだ。
色々な意味でアウトだ。
そういえば、千春さんは冗談が大好きだった。
いつもからかわれている。
でも、今日のは一段とクオリティが高かった。
薄く染まった頬を見て、危うく僕もですって言ってしまうところだった。
それから呼吸を落ち着けるためにコーヒーを飲んだ。
いつもと同じ分量のミルクと砂糖が入っているはずなのに今日のはすごく甘い味がした。
「おぉ、おめでとう。これで君は晴れて私の後輩だよ」
この喫茶店に通い始めて1ヶ月が経とうとしていた。
季節の流れは早いものだ。
何かをするには短いのに何もしないのには長い。
不思議なものだ。
ともあれ今日は合格発表の日だった。
ボードに合否が貼り出されるのを見ているときは不安に押しつぶされそうだった。
張り出され、自分の番号を見つけた時は嬉しすぎて、とりあえず携帯のカメラで連写していた。
メールで合格を公ちゃんと母に伝え1番にこの喫茶店へとやってきた。
お陰で息は上がりまくりだ。
安心したせいなのか咳もゴホゴホと出る。
「大丈夫ですか、急いで来てるれたのは嬉しいですけど、もっとゆっくりでいいんですよ」
「いや、ゲホこれは真っ先に伝えねばとゴホゴホ」
「あ、そうだ、望君。一つ頼みごとがあるんだけれど、頼めるだろうか?」
果たして美人で自分が好意を寄せる女性に頼まれごとをされて断ることができるだろうか。
できるはずもない。
そして何より自転車の爆走の後で頭が回っていなかった。
脳は酸欠状態だった。
「……頼み事ですか? ゲホゲホ」
「本当に大丈夫? 病院行く?」
「大丈夫です」
「それでね、頼み事は一つだけでいいんだけど……ダメかな?」
そう言って、俺を見上げるような体勢をとる。
少し涙ぐんだ目でそれを上目遣いで見てくる。
うん、これは断れない。
その上目遣いは卑怯ですよ。
「わかりました、それで僕は何をすればいいんですか?」
「ここの店員として働いて欲しいんだけど……」
「……はい?」
今ここの店員ととして働いてって聞こえた気がする。
「なんて言いました?」
聞き間違いを期待して再度聞き直す。
「ここで働いてください」
そう懇願された。
ますますわけがわからない。
「えっと、何でここで働かないといけないんですか?」
「……何でもするって言ったのに」
そう言って、千春さんは再び泣きそうな顔になる。
いや、泣いている。
なんか自分が悪者になった気分だ。
「え、あ、その……わ、わかりました。ここで働きます」
どうも、女性の涙に弱い佐々木望です。
というわけで無事、ここの店員として働くことが決まった。
「でも、卒業するまではアルバイトできないんですけど……」
校則でバイトは禁止されているのだ。
「あ、その件は大丈夫」
さっきの涙は何処へやら。
何事もなかったかのように話し始める。
「中学の間、給料一切でないから」
「ごめんなさい、他を当たってください」
タダ働きなんて嫌だ。
労働にはそれに見合った対価が払われなければいけない。
「ちょっと待って望君。話は最後まで聞いて」
「それで、タダ働きさせられるんですか?」
「違うよ。中学の間の分は高校に入ってから一括で渡す。だから、中学の間はあくまでお手伝いという名目で行動する。どう完璧じゃない」
それでも見つかったら問題あるよね。
そうなったらどうするんだろうか。
でも、これ以上泣かれて自分が悪者のようになるのは嫌だ。
「はぁ~、わかりました。それでいきましょう」
「ありがとう、望君。大好き」
「……女性が軽々しく大好きなんて言ったらいけませんよ」
一瞬、本気にしてしまうところだった。
子供なら、軽々しく大好きとか好きとか言っていいけど……いや、軽々しくはダメか。
それでも高校生が言ったらアウトだ。
色々な意味でアウトだ。
そういえば、千春さんは冗談が大好きだった。
いつもからかわれている。
でも、今日のは一段とクオリティが高かった。
薄く染まった頬を見て、危うく僕もですって言ってしまうところだった。
それから呼吸を落ち着けるためにコーヒーを飲んだ。
いつもと同じ分量のミルクと砂糖が入っているはずなのに今日のはすごく甘い味がした。
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