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初仕事
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昨日からここ喫茶タカナシで手伝いをさせてもらうことになったのですが……
「千春さん、これどうすればいいんですかぁ」
「これはこうして、こうする」
手取り足取り教えてくれるのはとても嬉しいんだけれど、僕にはまったく理解ができない。
普段から使うようなものじゃないし、絶対にやらないことだから。
「まったく、望君は……」
「いえ、そんなことを言われてもこんなこと普段からやりませんし、そんな顔で僕を見ないでくださいよ」
だって、コーヒーのドリップなんて普段やらないじゃないですか。
この喫茶店でやり方がわかったのは食洗機の使い方とか、テーブルのセッティングぐらいだ。
「あ、そうだ。望君、卒業式いつ?」
「3月15日ですよ。明後日ですかね」
「ふむふむ、なるほど……」
「ちょ、何か企んでますね。お願いですから問題なんて起こさないでくださいよ」
「大丈夫だよ」
これは大丈夫じゃない。
何か問題が起こる。
これまでの経験、というか1ヶ月にも満たない生活からわかったことは千春さんの大丈夫は絶対大丈夫じゃないということだ。
「あ、望君。コーヒー豆が切れたから、お菓子と一緒に買ってきてくれる?」
なんだか、話をすり替えれた気がする。
「……どこに行けばいいんですか? それにお菓子ですか?」
この喫茶店お菓子なんて出すことあったっけ?
メニューにそんなの書いてないよな。
「すぐ近くにデパートがあるじゃない。そこで豆は買える。お菓子は私のおやつです」
舌をちろっと出す千春さん。
それは可愛いを通り越し美しさすら感じるほどだった。
そんな千春さんに10秒ほど見惚れ、気がついた。
「って、デパートはここから自転車使っても15分はかかりますよ」
全然近くない。
でも、遠いわけでもない。
近いと遠いの中間? でもどちらかといえば遠い?
ってそこじゃない。
「それをどうにかするのが望君の仕事です」
そう言われて仕舞えば行くしかないだろう。
「わかりました。行ってきます」
これも新人の仕事だと思えばなんとかなる。
この寒い中自転車をこぐのは少し辛いけれど。
「あ、望君。これお品書き、これを店員さんに渡せば、その豆をくれるはずだから」
「あの、お菓子は何を買ってくればいいんですか?」
「望君に任せるわ、でも辛いのはやめてね?」
一瞬浮かんだ辛いお菓子にしようかな、という考えを読まれたのだろうか。
「わ、わかってますよ。適当に選んできます」
「期待してるわね」
お品書きをポケットに押し込み、上着を羽織り、手袋をはめ、マフラーを首に巻いた。
完全防具だ。
そのはずだがまだ寒いのはなぜだろう。
「望君、帽子帽子」
あ、帽子を忘れていた。
なるほど、完全なんかじゃなかった。
「ほら、頭貸して」
言われた通りに頭を差し出す。
よいしょ、と言って千春さんが僕の頭に帽子をかぶせる。
「よし、これで寒くないよね?」
「……あ、はい。い、行ってきます」
赤くなる頬を隠すように自転車をこぎ始める。
「千春さん、これどうすればいいんですかぁ」
「これはこうして、こうする」
手取り足取り教えてくれるのはとても嬉しいんだけれど、僕にはまったく理解ができない。
普段から使うようなものじゃないし、絶対にやらないことだから。
「まったく、望君は……」
「いえ、そんなことを言われてもこんなこと普段からやりませんし、そんな顔で僕を見ないでくださいよ」
だって、コーヒーのドリップなんて普段やらないじゃないですか。
この喫茶店でやり方がわかったのは食洗機の使い方とか、テーブルのセッティングぐらいだ。
「あ、そうだ。望君、卒業式いつ?」
「3月15日ですよ。明後日ですかね」
「ふむふむ、なるほど……」
「ちょ、何か企んでますね。お願いですから問題なんて起こさないでくださいよ」
「大丈夫だよ」
これは大丈夫じゃない。
何か問題が起こる。
これまでの経験、というか1ヶ月にも満たない生活からわかったことは千春さんの大丈夫は絶対大丈夫じゃないということだ。
「あ、望君。コーヒー豆が切れたから、お菓子と一緒に買ってきてくれる?」
なんだか、話をすり替えれた気がする。
「……どこに行けばいいんですか? それにお菓子ですか?」
この喫茶店お菓子なんて出すことあったっけ?
メニューにそんなの書いてないよな。
「すぐ近くにデパートがあるじゃない。そこで豆は買える。お菓子は私のおやつです」
舌をちろっと出す千春さん。
それは可愛いを通り越し美しさすら感じるほどだった。
そんな千春さんに10秒ほど見惚れ、気がついた。
「って、デパートはここから自転車使っても15分はかかりますよ」
全然近くない。
でも、遠いわけでもない。
近いと遠いの中間? でもどちらかといえば遠い?
ってそこじゃない。
「それをどうにかするのが望君の仕事です」
そう言われて仕舞えば行くしかないだろう。
「わかりました。行ってきます」
これも新人の仕事だと思えばなんとかなる。
この寒い中自転車をこぐのは少し辛いけれど。
「あ、望君。これお品書き、これを店員さんに渡せば、その豆をくれるはずだから」
「あの、お菓子は何を買ってくればいいんですか?」
「望君に任せるわ、でも辛いのはやめてね?」
一瞬浮かんだ辛いお菓子にしようかな、という考えを読まれたのだろうか。
「わ、わかってますよ。適当に選んできます」
「期待してるわね」
お品書きをポケットに押し込み、上着を羽織り、手袋をはめ、マフラーを首に巻いた。
完全防具だ。
そのはずだがまだ寒いのはなぜだろう。
「望君、帽子帽子」
あ、帽子を忘れていた。
なるほど、完全なんかじゃなかった。
「ほら、頭貸して」
言われた通りに頭を差し出す。
よいしょ、と言って千春さんが僕の頭に帽子をかぶせる。
「よし、これで寒くないよね?」
「……あ、はい。い、行ってきます」
赤くなる頬を隠すように自転車をこぎ始める。
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