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コーヒーの引力
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「はぁ、なんでこんなについてないんだろ……」
今日一日でいろんなことが起こり過ぎている。こんなに詰め込む必要があるのかってくらいにいろんなことが起こっている。
デパートのエアコンは修理中、母親と遭遇し、幼馴染とも遭遇してしまった。
何かが起こるような気がする。そんないやな予感がする。
「すいません、これもらえますか?」
お使いの紙を店員に渡す。
「あなた、タカナシの店員さん?」
すごいな、どんなものを頼まれるかでどの店かわかるなんて。
「あ、はい。買い物を頼まれたんですよ」
「……千春ちゃんが誰かを雇うなんて珍しい事があるものだね」
「……そうなんですか」
そういえば、確かに俺以外の従業員はいないしこれから入ってくることもないように思える。
「えぇ、彼女の父、前のマスターが死んでしまって以来彼女があの店を経営しているの。彼女が店を経営してから何人、いや何十人と面接に来たそうだけどね……」
「でも、誰も雇わなかったんですか」
「そう、2ヶ月間断ってきた。一切面接も受けずに、というか口すら聞かなかったみたいなのよ」
彼女の性格からすると、というか最近の彼女を見ていると想像もつかない。
「……それはどういうことなんですか」
「う~ん、わからないか。なら良いんだよ。きっと千春ちゃんが気に入ったんだろうな」
「それなら良いですけど……」
本当にそれなら良いのだ。というかその方がいい。そうではないと困るのだ。
「はい。コーヒー豆、注文通りにしといたよ。あとこれ」
俺に向かって何かが投げられた。
慌ててそのものを受け取る。
「これは?」
黒いパッケージに包まれた四角いお菓子? だろうか。
「コーヒー豆配合のチョコレート。頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
さて、これであとはお菓子でも買っていけばいいんだけど、どんなのがいいんだろうか。
「あ、あのすいません。千春さんの好きなお菓子とかってありますか?」
「う~ん、そうだね……基本的になんでも大丈夫だと思うけど、強いて言うならクッキーかしらね」
クッキーか。うん、それにしよう。
「ありがとうございます」
「気をつけてね」
そのまま、一階のスーパーへと向かい。そこでクッキーをいくつか、自分が食べるお菓子も買い帰路についた。
「望、こんなところで何やってるんだ」
何やらまた知ってる声が聞こえた気がする。いや、気のせいだな。
早く店に戻らないと。
「お~い、流石に親友に向かって無視はないんじゃないか。傷つくぞ」
「何か用か。公ちゃん」
「いや、用はないさ。ただここを通りがかった時にちょうどお前が見えたから、何してるのかなって思ったんだ」
「別に大したことじゃないさ。買い出しだよ買い出し」
「お前って買い出しとかするやつだったっけ? 面倒くせーとか言ってやらないやつじゃなかったっけ」
流石、自称俺の親友。よくわかってるじゃないか。
確かに俺はそう言う面倒くさいことは大抵他人に押し付ける。
確かに俺が買い出しに来てたらおかしいな。自分でもそう思う。
「……魔がさしただけだ」
「はぁ? 何言って……」
「魔がさしただけだ」
とりあえず詮索されると面倒くさいのでゴリ押しておく。
「お、おう。そうか、寒い中大変だな」
やっぱり今日は何か良くない運でもついてるのかもしれない。早めに帰るに越したことはないよな。
そう、来た時よりも少し寒くなった道を走りながら思うのであった。
今日一日でいろんなことが起こり過ぎている。こんなに詰め込む必要があるのかってくらいにいろんなことが起こっている。
デパートのエアコンは修理中、母親と遭遇し、幼馴染とも遭遇してしまった。
何かが起こるような気がする。そんないやな予感がする。
「すいません、これもらえますか?」
お使いの紙を店員に渡す。
「あなた、タカナシの店員さん?」
すごいな、どんなものを頼まれるかでどの店かわかるなんて。
「あ、はい。買い物を頼まれたんですよ」
「……千春ちゃんが誰かを雇うなんて珍しい事があるものだね」
「……そうなんですか」
そういえば、確かに俺以外の従業員はいないしこれから入ってくることもないように思える。
「えぇ、彼女の父、前のマスターが死んでしまって以来彼女があの店を経営しているの。彼女が店を経営してから何人、いや何十人と面接に来たそうだけどね……」
「でも、誰も雇わなかったんですか」
「そう、2ヶ月間断ってきた。一切面接も受けずに、というか口すら聞かなかったみたいなのよ」
彼女の性格からすると、というか最近の彼女を見ていると想像もつかない。
「……それはどういうことなんですか」
「う~ん、わからないか。なら良いんだよ。きっと千春ちゃんが気に入ったんだろうな」
「それなら良いですけど……」
本当にそれなら良いのだ。というかその方がいい。そうではないと困るのだ。
「はい。コーヒー豆、注文通りにしといたよ。あとこれ」
俺に向かって何かが投げられた。
慌ててそのものを受け取る。
「これは?」
黒いパッケージに包まれた四角いお菓子? だろうか。
「コーヒー豆配合のチョコレート。頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
さて、これであとはお菓子でも買っていけばいいんだけど、どんなのがいいんだろうか。
「あ、あのすいません。千春さんの好きなお菓子とかってありますか?」
「う~ん、そうだね……基本的になんでも大丈夫だと思うけど、強いて言うならクッキーかしらね」
クッキーか。うん、それにしよう。
「ありがとうございます」
「気をつけてね」
そのまま、一階のスーパーへと向かい。そこでクッキーをいくつか、自分が食べるお菓子も買い帰路についた。
「望、こんなところで何やってるんだ」
何やらまた知ってる声が聞こえた気がする。いや、気のせいだな。
早く店に戻らないと。
「お~い、流石に親友に向かって無視はないんじゃないか。傷つくぞ」
「何か用か。公ちゃん」
「いや、用はないさ。ただここを通りがかった時にちょうどお前が見えたから、何してるのかなって思ったんだ」
「別に大したことじゃないさ。買い出しだよ買い出し」
「お前って買い出しとかするやつだったっけ? 面倒くせーとか言ってやらないやつじゃなかったっけ」
流石、自称俺の親友。よくわかってるじゃないか。
確かに俺はそう言う面倒くさいことは大抵他人に押し付ける。
確かに俺が買い出しに来てたらおかしいな。自分でもそう思う。
「……魔がさしただけだ」
「はぁ? 何言って……」
「魔がさしただけだ」
とりあえず詮索されると面倒くさいのでゴリ押しておく。
「お、おう。そうか、寒い中大変だな」
やっぱり今日は何か良くない運でもついてるのかもしれない。早めに帰るに越したことはないよな。
そう、来た時よりも少し寒くなった道を走りながら思うのであった。
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