【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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13歳の沈着。

大臣達に成果の公表。

 実施設計の巻物を二部胸に抱え、王都に入った。まずは一部をサイスさん経由で王様に上げ、のこりの一部を持ち所管の各部を順に回る。工務と工廠は構造と動線、医務は医の間と搬送路、宮内は静養の礼と私邸区画、財務は初期費用と維持費、近衛は詰所と合図。図を広げ、要件を二行で示し、実地の手順を短く置く。運営開始は雪の気配が薄れる頃……三巡前に人員訓練、二巡前に試運転、一巡前に受け入れ稽古。どの部も細かな修正は入ったが、拍は揃い、印はきれいに並んだ。

 ひと通りの打ち合わせを終えた頃、王城の使いが駆けてくる。王様に呼ばれる。執務室の扉を開けると、円卓には大臣たちが座していた。大臣会議の最中だ。僕はひざまずき、礼を述べる。

「よく来た。少しそこで待て」

 王様は卓を一望し、静かに言葉を継がれた。

「この頃は、この者の名を耳にすることが少なくなってきたようだが……何をしていたかを、皆にはよく知っておいてもらいたい」

 侍従長のサイスさんが立ち上がり、手にした紙を見ずに語り始める。

「空の船の監修。学術小冊子の編纂と配布。六種族の標準度量衡の制定。定額食籠の配布制度。運河ギルドの設立。そして、今会議をしていた先王陛下の遺言による静養所の建設」

 王様はうなずき、卓を見回された。

「リョウエストは名を出さず、紙に残す。だが、成果が多すぎる。せめて役人たちには伝えてほしい」

 内務が口火を切る。

「定額食籠……現実には何を整えたのだ」

「二点です。価格と栄養の底を揃えました。配布所の刻を帯にして混雑を避け、器具と台所の衛生は詰所で抜き打ち確認。会計は前払いの札で、余った札は翌帯に繰り越し可。季節で献立を巡回します」

 内務が短く唸り、筆を走らせる。

 工務が身を乗り出す。

「空の船の監修は」

「空の船の規格と停留場の標準を紙にしました。桟の高さ、綱の結び、係留の合図、昇降の幅、夜の灯。操縦者の講習は三巡ごとに審査。落下物の帯封じは二重縄。事故が起きた際の弁済の窓口も停留場で一本化」

「合図は」

「長と短、三つの笛。旗は昼、灯は夜使っています」

 外務が挙手する。

「学術小冊子は、誰の名で出した」

「王家後援の名で。著者、編集、資金……三者が裏で光る形に。農と衛生と会計の初歩を、各初等学校、学園と図書室に。講師の方は授業で使うよう配布し、改訂は現場の先生に委ねました。記名は最後の頁に小さく。表に出ない栄誉が重なるように」

 外務は目を細め、うん、と一声。

 度量衡の所管である財務が問う。

「六種族の標準は実際、どこまで浸透している」

「商業ギルドと各領の詰所に公式の桝と分銅、定規を配しました。検査の巡回を設け、争いは詰所で裁定。子ども向けには学校で『測る遊び』の授業を入れました。習いは早い方がいいので」

「異種族の数字表記は」

「二重表記をやめ、線の長さで読む帯を導入しました。言葉が違っても、長さは同じですから」

 水運を司る運輸が身を正す。

「運河ギルド……再発防止の要は」

「巡視線と記録です。昼は小舟、夜は信号塔。詰所で一本化した通過票を記入し、帯集計を公開。封鎖と落とし板の支点は再点検。教育は巡回講師と通訳枠を作りました。『三呼吸で異論、七呼吸で支え』を導入し、会議だけでなく窓口の仕事にも効いています」

 周囲の紙に、同じ文言がメモされていくのが見える。

 軍務が腕を組む。

「静養所の守り。非常時の段取りを」 

「詰所を外に二、内に一。見張り台は丘と谷。昼は旗、夜は灯。湯は落として路を洗います。搬送路は夜間でも崩れない歩幅。警備責任者はナフェル騎士爵。弟子を伴い、現地の若者を鍛えて自警団を起こします。剣より先に歩き方。声を小さく、歩をゆっくり、香りを薄く……守りの礼を徹底します」

「近衛との連絡は」

「拍を統一。合図と交代の刻表はすでに共有済みです」

 財務が帳を閉じた。

「静養所の費用面は。初期と継続」

「初期は王都補助と匿名援助と貴族会費の前納で賄います。継続は会費と物資の帯優先の差益で。工事は騒音の薄い刻のみ。観光の流れは仮回廊で塞ぎません。落選案の工夫も拾って、次の事業の費用を圧縮します」

 財務が頷く。

「落選案の扱いが良い。紙に残せ」

 サイスさんが静かに問う。

「静養の礼は、どう伝える」

「紙と稽古の両方で。訪う者は声を小さく、歩をゆっくり、香りを薄く。働く者は合図を確かに、器を軽く、夜を静かに。設計にも織り込み、入口に小さな札を掲げます」

 サイスさんが微笑む。

「それがあると、自然と体の拍が落ちます」

 問いは途切れず続いた。僕は収納から書類を取り出し図をめくり、紙を差し、要旨を返す。どの問いにも、現場の手触りを混ぜた。数巡の往復の末、卓の空気がふっと和らいだ。王様が椅子にもたれ、笑う。

「な、すごいだろ?」

 大臣たちが一斉にうなずいた。

「立派だ」「紙が生きている」「現場の匂いがする」

 僕は頭を下げる。

「人が動いてくれたおかげです。名は薄く、紙は残る……それで十分だと思っています」

 王様は真顔に戻り、短く命じられた。

「各省、今の説明を自分の舌で言えるようにしておけ。下まで伝えよ。紙を回し、札を掲げよ。成果は名でなく、手で広げろ」

「拝命いたします」

 会議が散じ、廊下に出ると、宰相が肩を並べた。

「よく通しました。言葉が短く、図が多い。……このやり方は人を疲れさせない」

「ありがとうございます。静養所の認可は」

「全印。修正点は付箋で。雪が薄くなれば、刻どおりに進むでしょう」

 僕は深く礼をした。王城の庭に風が通り、木立の影が石畳に揺れた。
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