【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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15歳の飛翔。

異種族協働の説明。

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 大樹の食堂は木漏れ日が踊り、葉の香りが湯気に混じっていた。葉皿に盛られた茸の煮凝りや、花蜜で和えた木の実をつつきながら、僕はローラ女大公や大臣たちと、今朝の行程や見学の候補を話していた。肩の上ではナビが喉を鳴らし、リブが時折メモをとる。

「のう、スサン伯爵。そちの相棒は……ナビレイアの亜種ではないな。良ければ本当の姿を見せていただけぬか?」

 周囲の椀がかすかに止まり、視線が集まる。僕はナビの耳元で囁いた。

「いいか?」

 ナビは短く「にゃー」と返事をする。僕は首飾りから縮小の輪を外した。次の瞬間、空気がぎゅっと引き締まり、木の床が低く鳴った。翼の骨組みが音もなく伸び、銀灰の毛並みに深緑の光が走る。人の背丈など易々と越え、やがて天井の梁すれすれの巨体となった。

「……っ」

 ミレイユは椅子を倒して立ち上がり、次の瞬間には膝に画板、手は自動人形みたいに走っていた。エルフの大臣たちは一斉に立ち、片膝をつく。古語の祈りが低く響き、風が室内を巡る。ナビはぐるりと一同を見渡すと、満足したように喉を鳴らし、僕の手元へ首を寄せる。

「もういいか?」

 小さく鳴いたから、僕は輪を戻した。視界の端で、空間が柔らかくほどける。肩に収まったナビは、なに食わぬ顔で前足をぺろりと舐めた。

「スサン伯、それは……神具ではないか?」と年長の大臣が震える声を漏らす。

「ナビレイア様が人にすっかり懐いておる」「……しっかりと絆ができておる」と口々に囁きが走る。

「この輪は、天啓で授かったものです。ナビは檻に入れられていたのを僕が解放しました。礼に来てくれた時、傷だらけで……手当てをして、一緒に過ごすうちに」

 そこまで言うと、クチッフが静かに補った。

「ナビレイアは森の守護。その眷属と絆を結ぶ者は、我らにとってかけがえのない存在です」

「さすがエメイラヒルデの婚約者だな。……今の一幕だけで、そちが虚飾で動く人間でないとわかった」

 ローラはくすりと笑い、葉皿を脇に寄せた。

 昼餉が終わると、席はそのまま会議へと姿を変えた。枝を模した長卓に地図が広げられ、薄絹の上に都市の輪郭が映る。

「現状を率直に述べよう」と内務の大臣。「都市の外れに異種族の居住区を設けてきた。理由は穏便、だが結果は壁だ。協働は模索したが、思うように実らぬ」

 僕は頷き、まずは今までずっと観察してきた例から話した。

「獣人隊商のやり方です。道は獣人が知り尽くし、エルフが森に道標を置く。馬車はドワーフと小人が専用に設計し、エルフがそれを魔法道具化、人が運用を整える。警備は火の民。役割を明確に分け、互いの強みだけを重ねる。弱みは、相手の強みで覆う。そういう組み合わせです」

 リブが訳そうとして、ローラが軽く手を上げた。

「大丈夫だ。コリント王国語は習わせておる。続けよ」

「はい。僕の領では今、新しい街アルカディアを建設しています。森の間伐はエルフが歩いて選木をし、伐り倒しはドワーフと人。石は石工が規格を統一、設計はドワーフが芯を引き、エルフが風の通りを調える。港は水竜人の基礎図に人の手を重ねて、潮と人の動線を分けました。六種族と人、全員で一枚の図を持ち、二重の度量衡で同じ数を見ています」

 地図の脇に、僕は簡単な凡例を描き足す。大臣たちの顔に、ぱっと灯が入った。

「これはすぐ使える……」「風の線を読む発想は我らに馴染む」「度量衡の二重表記、面白い」

「産業の方で、エルフが主導する仕事があります。石鹸、化粧水、洗髪料、泡風呂の素。調合はエルフ、香りの監修に獣人、水は水竜人、容器は火の民とドワーフと小人。売りの足はエルフと人。梱包は小人が最終検。誰か一つ欠けても回らない組み立てにしてあります」

 ローラが肘に頬をのせ、楽しげに目を細めた。

「よく異種族が喧嘩せずやっておるな」

「最初は喧嘩腰です。だから先に合わせるのは作法や理念じゃなく、道具と寸法です。共通の“ものさし”を置く。子どもは学校で歌と体操を一緒にやり、声を合わせる。朝の鐘を同じ時刻に鳴らし、掲示は大人用と子ども・小人用の二段にする。驚かせない歩幅、袋に入れた槍。小さな『できた』を揃えてから、難しい話に行きます」

 内務、商務、文化の大臣が同時に頷いた。誰かが小声で「耳箱……」と呟き、別の誰かが「掲示は二段だ」と書き留める。

「よい。皆の者、参考にせよ。新たな産業を興すに、今の手順を骨にするのだ」とローラ。

 僕は続けた。

「もしよろしければ、獣人隊商の実地見学を組みます。道標の置き方、馬車の改造、見張りの配置。アルカディアから技師を招いてもいい。代わりに、こちらの森の読み方を僕らに教えてほしい。風と根の知恵は、僕らの街路に息を通します」

 クチッフがすぐさま段取りの札を切り、各省の書記が走り書きを重ねる。ミレイユは横で図表を起こし、リブが固有名詞の統一を確認していく。

「まずは小さく始め、必ず返す。……そなたの言は簡にして要を得るな」とローラは微笑んだ。

「はい。約束は守れる約束だけ、と決めています」

「ならば最初の約束だ。十日後までに試験区の案を三つ出せ。一つは森の産品の加工、もう一つは学校、最後は港。人と異種族が同じ皿で食える案を見せよ」

「承知しました」

 肩の上でナビが小さく鳴いた。葉の陰が揺れ、窓外の枝に光が差す。会議はさらに具体へと潜り、役割の名簿、図面の粒度、掲示の文言が決まっていく。筆の音と葉擦れが重なり、森の都に新しい風が通り始めているのを、僕ははっきり感じた。
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