276 / 806
6歳の力走。
それぞれの幸せ。
学校に行き始めて数ヶ月、かなり退屈な授業が続いている。僕としては二週目の小学校生活だからだ。周りとは会話も合わないし気安く話かけるような者もいない。唯一話しかけてくるのはナミリアだ。そのナミリアは女子の中でもお姉さん的ポジションを確立して、よく話を聞いている。ナミリア、かなり頑張ってるな、と思う。僕はみんな、もうちょっと大人になったら話そうな、と思いながら日々を過ごしている。
そんなある日家で重大発表があった。メイドの一人であるマチルダが食事後話があると言って切り出してきた。
「私事ですが、この度、赤ちゃんを授かりました」
「それは良かった。おめでとう」
「おめでとう。良かったわね」
「良かったね」
「噂の彼?」
「大好きだって言ってらしたものね。良かったですね」
「…おめでとう」
「だれ?」
「おや、リョウは知らなかったのか。マチルダ、お相手の名前を教えてあげて」
「はい。キースさんです」
「キース?キース良かったねえ。結婚?」
「はい。もうすぐ結婚します」
「良かったねえ」
「キースはうちに来る前に色々苦労してきたから、うちに来て人並み以上の幸せを得ることができて僕も嬉しいんだ」
「よく話すものね、キースさんのこと」
「私も話してみるとすごく誠実な方とわかりましたんで、マチルダさんと一緒になれると聞いて嬉しかったです」
「…キース、優良物件よ、マチルダ」
「そうね。今やうちでも高給取りですものね」
「私、キースさんと話してその性格を知るたびに、どんどん好ましい気持ちがふくらんできて、私から付き合ってくれとお願いしたんです」
「マチルダ、すごいね」
「私とキースさんはドルトさんとアニナさんみたいになるのが理想なのです。もう少ししたら仕事は休職しますが、子供が少し大きくなったら仕事復帰しますのでよろしくお願いします」
「待ってるわ」
「はい。奥様」
翌日、キースが工房に訪ねてきた。
「リョウ様。昨日マチルダが言った通り私たちは結婚いたします。よろしくお願いします」
「わかった。おめでとう」
「ありがとうございます」
「キースは、どんなところに、惚れたの?」
「はい。お互い似た者同士だったことからどんどん惹かれていきましたね」
「似た者同士?」
「はい、私は文官として幸せを得れずに王都を去り、ここで本当の居場所を見つけました。マチルダはメイドとして幸せを得れずに王都を去り、ここで本当の居場所を得たのです。そんな共通点でしたので惹かれあうのは必然でしたね」
「そうか。良かったね」
「はい、ありがとうございます」
「これからどうするの?」
「はい。結婚して両親と一緒に暮らします。それからマチルダのお母さんが王都にいるのでこちらへ呼ぶ話になっています」
「それ、大丈夫?」
「ええ。マチルダが賛成、というかマチルダが言い出した事です。子供が大きくなった時、両親がそばに居た方がいいだろうと言うことで」
「そうか!アニナも同じだものね」
「そうです。ドルトさんとアニナさんの関係は私たちの理想です。アニナさんはああして働きながらお子さんを立派に育て上げてますからすごいですよね」
「キース、困ったことがあれば、言う」
「はい。その時はまたお話しを聞いてください」
「わかった」
「それでは仕事に戻ります」
「頑張ってね」
キースは商会に戻っていった。
「はあ。羨ましい」
「ギピア、どうしたの?」
「私も同じような理想を持ってますので羨ましいです」
「相手はいるの?」
「思い人はいますがなかなか振り向いて下さらないのです」
「ふうん」
「いつも仕事に一生懸命なのですが、一生懸命すぎて私の気持ちに気づいてもらえてるのかわからないのです」
「まあ、あれは唐変木な、ところあるからね」
「誰かわかったんですか?」
「うん」
「困りましたわ」
「困ることないよ。言わないし」
「いっそお願いします。なんとかなりませんか?」
「そう言われても…6歳だよ、僕」
「そうですよね。はあ」
「まあ、やるだけやってみるか」
「いいんですか?」
「よし、作戦を練ろう」
「はい!」
「ストーク、話があるんだけど」
「はい。なんでしょう?」
「ある女の子から、相談受けた」
「はい」
「なかなか気持ちが、わかってくれない人が、いる。なんとかしたい、って」
「はい」
「どうしたら良いかな」
「はあ。そう言ったことは苦手で」
「でも、自分だったら、どういう風にされたいって、あるでしょ?」
「そうですね…真っ直ぐに言ってみればどうでしょうか。たとえダメでも気持ちの整理がつくと思いますし」
「なるほど。そうだってよ、ギピア」
「ありがとうございます」
「どう言うことですか?」
「まあまあ、ストーク。ギピアの話を、聞いてやって」
「は、はい」
「えーと。す、ストークさん、あ、あなたの仕事の一生懸命さと、誠実な人柄が大好きです。私とお付き合いして頂きませんか?」
「えーと。私、仕事が恋人みたいなものだし、確かにギピアさんの事が気になってはいますが。どうしましょう。ちょっと困っています」
「ストーク、うちは、恋愛オッケーだから」
「リョウ様…」
「仕事抜きで、考えて」
「ちょっと考えていいですか?」
「はい」
「あの、ギピアさん」
「はい」
「私、ギピアさんの仕事、奪いたくないんです。だから躊躇してしまうんです」
「どうしてでしょう?」
「仕事をしているギピアさんが好きです。だから…」
「ストークさん、勘違いしてます。私は仕事を辞める気はありませんよ。あなたと一緒に歩むつもりです。だってあなたの間近で仕事するのが好きなんですもの」
「でも子供が…」
「ストークさん、それは少し待てますか?」
「え?」
「キーカが成人となってから考えませんか?」
「はい」
「どちらにせよ、私は仕事辞めるつもりはないですからね」
「そうですか…すいません。言わせてしまって。ギピアさん、このような私ですがよろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
そんなある日家で重大発表があった。メイドの一人であるマチルダが食事後話があると言って切り出してきた。
「私事ですが、この度、赤ちゃんを授かりました」
「それは良かった。おめでとう」
「おめでとう。良かったわね」
「良かったね」
「噂の彼?」
「大好きだって言ってらしたものね。良かったですね」
「…おめでとう」
「だれ?」
「おや、リョウは知らなかったのか。マチルダ、お相手の名前を教えてあげて」
「はい。キースさんです」
「キース?キース良かったねえ。結婚?」
「はい。もうすぐ結婚します」
「良かったねえ」
「キースはうちに来る前に色々苦労してきたから、うちに来て人並み以上の幸せを得ることができて僕も嬉しいんだ」
「よく話すものね、キースさんのこと」
「私も話してみるとすごく誠実な方とわかりましたんで、マチルダさんと一緒になれると聞いて嬉しかったです」
「…キース、優良物件よ、マチルダ」
「そうね。今やうちでも高給取りですものね」
「私、キースさんと話してその性格を知るたびに、どんどん好ましい気持ちがふくらんできて、私から付き合ってくれとお願いしたんです」
「マチルダ、すごいね」
「私とキースさんはドルトさんとアニナさんみたいになるのが理想なのです。もう少ししたら仕事は休職しますが、子供が少し大きくなったら仕事復帰しますのでよろしくお願いします」
「待ってるわ」
「はい。奥様」
翌日、キースが工房に訪ねてきた。
「リョウ様。昨日マチルダが言った通り私たちは結婚いたします。よろしくお願いします」
「わかった。おめでとう」
「ありがとうございます」
「キースは、どんなところに、惚れたの?」
「はい。お互い似た者同士だったことからどんどん惹かれていきましたね」
「似た者同士?」
「はい、私は文官として幸せを得れずに王都を去り、ここで本当の居場所を見つけました。マチルダはメイドとして幸せを得れずに王都を去り、ここで本当の居場所を得たのです。そんな共通点でしたので惹かれあうのは必然でしたね」
「そうか。良かったね」
「はい、ありがとうございます」
「これからどうするの?」
「はい。結婚して両親と一緒に暮らします。それからマチルダのお母さんが王都にいるのでこちらへ呼ぶ話になっています」
「それ、大丈夫?」
「ええ。マチルダが賛成、というかマチルダが言い出した事です。子供が大きくなった時、両親がそばに居た方がいいだろうと言うことで」
「そうか!アニナも同じだものね」
「そうです。ドルトさんとアニナさんの関係は私たちの理想です。アニナさんはああして働きながらお子さんを立派に育て上げてますからすごいですよね」
「キース、困ったことがあれば、言う」
「はい。その時はまたお話しを聞いてください」
「わかった」
「それでは仕事に戻ります」
「頑張ってね」
キースは商会に戻っていった。
「はあ。羨ましい」
「ギピア、どうしたの?」
「私も同じような理想を持ってますので羨ましいです」
「相手はいるの?」
「思い人はいますがなかなか振り向いて下さらないのです」
「ふうん」
「いつも仕事に一生懸命なのですが、一生懸命すぎて私の気持ちに気づいてもらえてるのかわからないのです」
「まあ、あれは唐変木な、ところあるからね」
「誰かわかったんですか?」
「うん」
「困りましたわ」
「困ることないよ。言わないし」
「いっそお願いします。なんとかなりませんか?」
「そう言われても…6歳だよ、僕」
「そうですよね。はあ」
「まあ、やるだけやってみるか」
「いいんですか?」
「よし、作戦を練ろう」
「はい!」
「ストーク、話があるんだけど」
「はい。なんでしょう?」
「ある女の子から、相談受けた」
「はい」
「なかなか気持ちが、わかってくれない人が、いる。なんとかしたい、って」
「はい」
「どうしたら良いかな」
「はあ。そう言ったことは苦手で」
「でも、自分だったら、どういう風にされたいって、あるでしょ?」
「そうですね…真っ直ぐに言ってみればどうでしょうか。たとえダメでも気持ちの整理がつくと思いますし」
「なるほど。そうだってよ、ギピア」
「ありがとうございます」
「どう言うことですか?」
「まあまあ、ストーク。ギピアの話を、聞いてやって」
「は、はい」
「えーと。す、ストークさん、あ、あなたの仕事の一生懸命さと、誠実な人柄が大好きです。私とお付き合いして頂きませんか?」
「えーと。私、仕事が恋人みたいなものだし、確かにギピアさんの事が気になってはいますが。どうしましょう。ちょっと困っています」
「ストーク、うちは、恋愛オッケーだから」
「リョウ様…」
「仕事抜きで、考えて」
「ちょっと考えていいですか?」
「はい」
「あの、ギピアさん」
「はい」
「私、ギピアさんの仕事、奪いたくないんです。だから躊躇してしまうんです」
「どうしてでしょう?」
「仕事をしているギピアさんが好きです。だから…」
「ストークさん、勘違いしてます。私は仕事を辞める気はありませんよ。あなたと一緒に歩むつもりです。だってあなたの間近で仕事するのが好きなんですもの」
「でも子供が…」
「ストークさん、それは少し待てますか?」
「え?」
「キーカが成人となってから考えませんか?」
「はい」
「どちらにせよ、私は仕事辞めるつもりはないですからね」
「そうですか…すいません。言わせてしまって。ギピアさん、このような私ですがよろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~
九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます!
七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。
しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。
食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。
孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。
これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。