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7歳の駈歩。
ストラ兄さんの帰還と来訪者達。
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ある朝、僕は工房の裏庭で試作中の装置の調整をしていた。そんな中ストークが慌てた様子で走ってきた。
「リョウ様!ストラスト様がご到着です!」
その言葉に僕は立ち上がり、思わず顔が綻んだ。
「ストラ兄さんが…!?」
学園の長期休みでも、ウルリッヒ王子の公務や学友との活動で帰れなかった兄が、ついに帰ってきた。急いでスサン商会の方へ向かうと、上質な布で覆われた馬車が一台、ゆっくりと邸の前に到着するところだった。
扉が開き、最初に現れたのは、ストラ兄さんだった。彼は変わらぬ穏やかな笑みを浮かべながら、僕に手を差し伸べてきた。
「ただいま、リョウ。ようやく帰って来られたよ」
「おかえりなさい!」
と、僕は勢いよく兄に飛びついた。抱きしめ返してくれる兄の腕は、前よりも少し逞しくなっていた。
続いて馬車から現れたのは、白金髪の青年——ウルリッヒ王子。さらに、彼の学友であるだろう二人、そしてマリーダさんとメリンさんが姿を現した。
「紹介しよう。グロッサム侯爵家の息子アストリア。そしてナータリア伯爵の息子、ビッターだ。今回の休暇、二人も一緒に来たいと言ってな。マリーダとメリンも一緒に来た」
「はじめまして。あなたがリョウエスト様ですね。お噂はかねがね……」
「ルステインの発展の立役者、直接拝見できて光栄です」
「アストリア、ビッター。ここでは名誉子爵家の当主でなく俺の弟扱いでいいよ」
「そうなの?」
「よろしく」
「はい。よろしくお願いします。王子、お忍びなの?」
「ああ。市井の者の暮らしが見てみたくてな」
「わかった。お父さんやお母さんにもそう言っとくね」
「よろしく頼む」
夕方には工房で歓迎の食事会が開かれた。ウルリッヒ王子はにこやかに兄や僕と話し、アストリアさんとビッターさんも終始和やかだった。一方で、マリーダさんとメリンさんはストラスト兄さんの隣を巡って軽い火花を散らしていたようにも見えた。
僕はその様子を見ながら、小さく笑った。
「ストラ兄さん、モテモテですね」
「…困ったものだよ」
困ったように微笑む兄。その笑顔に、誠実さと優しさが滲んでいた。
翌朝、柔らかな朝陽がルステインの石畳を照らす頃、一行は馬車に分乗して視察に出発した。御者は火の民と水竜人、護衛に青の技。王子の影の者もたくさんいるみたい。
最初に訪れたのは、異種族共栄のために建てられた公会堂だった。すでに様々な種族…地精、風精、獣人、火の民、水竜人、小人族、ヒトが集い、談笑し、取引を進めている様子が見られた。
「これは…想像以上だな」
ウルリッヒ王子がつぶやく。
「この国でこれほどの多様性が、実際に共存しているとは。書面では見たが、目の当たりにするとはね」
「私たちの公爵領よりも進んでる…」
とマリーダさんがぽつり。メリンさんも何度も周囲を見回しながら
「偏見や恐れの気配がないのが不思議なくらい…」
と呟いた。兄さんは隣で、誇らしげでもあり、少し照れくさそうでもあった。
「リョウが主導して領主様が用意したものなんだ。僕は少しずつ聞かされていたけれど、やっぱり実際に見ると感動するよ」
次に訪れたのはウイスキーの本格蒸留所だった。ここもマックスさんが建てた建物だ。石造りの高い建物から、芳醇な香りが漂い、働く人々が丁寧に作業をしていた。
「これが…リョウ君が考案した蒸留器?」
ビッターが目を丸くする。
「缶詰もそうだけど、王都でも模倣すら難しかった技術だ。まさか、ここまで稼働しているとは…」
案内役の地精ヂョウギが自慢げに鼻を鳴らした。
「ふふ、王都の貴族様より、ここじゃ仕事が速いんですよ」
アストリアは大笑いして返す。
「確かに、王都の連中は慎重すぎて動きが鈍いからな」
昼食はルステイン中央の屋外食堂で取ることになった。異種族の屋台が並び、それぞれの料理が豊かな香りを漂わせていた。兄さんたちはあれこれと食べ比べて、笑いながら感想を言い合っていた。
そして午後、農業区画や温泉施設の見学も進め、彼らは徐々に「地方」としてのルステインの認識を改めていった。
「王都に負けないどころか、将来的には中心になるかもしれない」
と、アストリアさんが感心しながら言うと、兄さんは僕の肩に手を置いて言った。
「それもこれも、全部こいつの努力の賜物だよ」
マリーダさんとメリンさんが同時に僕の方を見て、微笑んだ。
「本当に、すごいね……」
「ストラが誇るのも分かります」
僕はただ「えへへ……」と笑うしかなかった。
視察三日目の夕刻、ウルリッヒ王子の元に使者が訪れた。王都で急な政務が入ったという。同行していたアストリアさんとビッターさんも、それに合わせて帰る準備を始める。
「もっと見ていたかったけど、さすがに王子の公務には逆らえないな」
アストリアさんが笑いながら言うと、ビッターさんも名残惜しげに
「次に来る時は、もうちょっと長く滞在できるといいな」
と言った。
出発の朝、僕と兄さんは、馬車の前で三人を見送った。
「リョウエスト、また来るよ。次は王子としてな」
王子は真っ直ぐ僕を見てそう言った。
「王都に来ることがあれば、学園にも顔を出してくれ。歓迎する」
アストリアさんが微笑み、
「君の料理を、また食べたい」
とビッターさんが手を振った。これからルステイン城に行ってワイバーン便で帰るのだと言う。王子って職業も大変なんだなと思う。
「リョウ様!ストラスト様がご到着です!」
その言葉に僕は立ち上がり、思わず顔が綻んだ。
「ストラ兄さんが…!?」
学園の長期休みでも、ウルリッヒ王子の公務や学友との活動で帰れなかった兄が、ついに帰ってきた。急いでスサン商会の方へ向かうと、上質な布で覆われた馬車が一台、ゆっくりと邸の前に到着するところだった。
扉が開き、最初に現れたのは、ストラ兄さんだった。彼は変わらぬ穏やかな笑みを浮かべながら、僕に手を差し伸べてきた。
「ただいま、リョウ。ようやく帰って来られたよ」
「おかえりなさい!」
と、僕は勢いよく兄に飛びついた。抱きしめ返してくれる兄の腕は、前よりも少し逞しくなっていた。
続いて馬車から現れたのは、白金髪の青年——ウルリッヒ王子。さらに、彼の学友であるだろう二人、そしてマリーダさんとメリンさんが姿を現した。
「紹介しよう。グロッサム侯爵家の息子アストリア。そしてナータリア伯爵の息子、ビッターだ。今回の休暇、二人も一緒に来たいと言ってな。マリーダとメリンも一緒に来た」
「はじめまして。あなたがリョウエスト様ですね。お噂はかねがね……」
「ルステインの発展の立役者、直接拝見できて光栄です」
「アストリア、ビッター。ここでは名誉子爵家の当主でなく俺の弟扱いでいいよ」
「そうなの?」
「よろしく」
「はい。よろしくお願いします。王子、お忍びなの?」
「ああ。市井の者の暮らしが見てみたくてな」
「わかった。お父さんやお母さんにもそう言っとくね」
「よろしく頼む」
夕方には工房で歓迎の食事会が開かれた。ウルリッヒ王子はにこやかに兄や僕と話し、アストリアさんとビッターさんも終始和やかだった。一方で、マリーダさんとメリンさんはストラスト兄さんの隣を巡って軽い火花を散らしていたようにも見えた。
僕はその様子を見ながら、小さく笑った。
「ストラ兄さん、モテモテですね」
「…困ったものだよ」
困ったように微笑む兄。その笑顔に、誠実さと優しさが滲んでいた。
翌朝、柔らかな朝陽がルステインの石畳を照らす頃、一行は馬車に分乗して視察に出発した。御者は火の民と水竜人、護衛に青の技。王子の影の者もたくさんいるみたい。
最初に訪れたのは、異種族共栄のために建てられた公会堂だった。すでに様々な種族…地精、風精、獣人、火の民、水竜人、小人族、ヒトが集い、談笑し、取引を進めている様子が見られた。
「これは…想像以上だな」
ウルリッヒ王子がつぶやく。
「この国でこれほどの多様性が、実際に共存しているとは。書面では見たが、目の当たりにするとはね」
「私たちの公爵領よりも進んでる…」
とマリーダさんがぽつり。メリンさんも何度も周囲を見回しながら
「偏見や恐れの気配がないのが不思議なくらい…」
と呟いた。兄さんは隣で、誇らしげでもあり、少し照れくさそうでもあった。
「リョウが主導して領主様が用意したものなんだ。僕は少しずつ聞かされていたけれど、やっぱり実際に見ると感動するよ」
次に訪れたのはウイスキーの本格蒸留所だった。ここもマックスさんが建てた建物だ。石造りの高い建物から、芳醇な香りが漂い、働く人々が丁寧に作業をしていた。
「これが…リョウ君が考案した蒸留器?」
ビッターが目を丸くする。
「缶詰もそうだけど、王都でも模倣すら難しかった技術だ。まさか、ここまで稼働しているとは…」
案内役の地精ヂョウギが自慢げに鼻を鳴らした。
「ふふ、王都の貴族様より、ここじゃ仕事が速いんですよ」
アストリアは大笑いして返す。
「確かに、王都の連中は慎重すぎて動きが鈍いからな」
昼食はルステイン中央の屋外食堂で取ることになった。異種族の屋台が並び、それぞれの料理が豊かな香りを漂わせていた。兄さんたちはあれこれと食べ比べて、笑いながら感想を言い合っていた。
そして午後、農業区画や温泉施設の見学も進め、彼らは徐々に「地方」としてのルステインの認識を改めていった。
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と、アストリアさんが感心しながら言うと、兄さんは僕の肩に手を置いて言った。
「それもこれも、全部こいつの努力の賜物だよ」
マリーダさんとメリンさんが同時に僕の方を見て、微笑んだ。
「本当に、すごいね……」
「ストラが誇るのも分かります」
僕はただ「えへへ……」と笑うしかなかった。
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と言った。
出発の朝、僕と兄さんは、馬車の前で三人を見送った。
「リョウエスト、また来るよ。次は王子としてな」
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