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8歳の旅回り。
導き手と道の名を持つもの。
「なあ、グラド。俺たち、あのリョウエストに……なんにも礼をしてねえんじゃねえか?」
そうつぶやいたのは、鍛冶親方の一人、ブロンゾだった。鍛冶場の煙の中で、彼の言葉に周囲の親方衆も作業の手を止めた。
「そういや、そうだな……」
「ウイスキーと玉鋼と旋盤……もらってばっかだぞ、我ら」
ドワーフ伯グラドは腕を組みながら唸る。
「だが、あいつに金も名誉もいまさら要らんだろ。貴族並みの待遇だ。おまけに技術も発明も、もう足りないものなどないように見える」
「じゃあ、どうすんだよグラド」
と別の親方が言うと、グラドは小さくうなずいた。
「…あいつの周りを知っている者に聞こう。ストークと、ミザーリ。そしてエメイラ嬢だ。まずはそこから始めよう」
数時間後、ドワーフの迎賓館の広間で、三人は向かい合って座らされていた。ドワーフ百人の親方衆と伯が見つめる中、エメイラが苦笑いする。
「そうね、リョウは…そういった『物質的な贈り物』で満足するタイプではあないわね」
「主はお金なら既に持ってるし、名誉も国からもらってる。あんまり欲しがらないタイプさ」
とミザーリが補足する。ストークは、手帳を見ながら言った。
「ただ…あえて言うなら、『記録』や『意味』を大事にしておられます。『未来に残る形』という観点なら、何か…」
「未来に残る…形か」
グラドが呟いた。その瞬間、親方の一人が叫んだ。
「そうだ、二つ名だ!」
「二つ名?」
「ドワーフ流の称号だよ。あんたがどんなやつだったか、どんな功績を残したか…そういう意味を込めた名だ。我らの世界じゃ、大事なもんなんだ」
グラドの目が輝いた。
「我ら、これまであいつに贈ってなかったな……!」
「どんな名が良いだろう」
「『鋼の友』……は違うな。ありきたりすぎる」
「『鉄の筆』……いや、文豪じゃないし」
「『創造の目覚めし者』?……うーん、惜しい!」
百人のドワーフが頭を抱える中、グラドが拳を叩く。
「『技術の導き手』!」
その言葉に空気が止まり、次の瞬間、大歓声が巻き起こった。
「それだ!」
「技術をもって未来へと導く者!」
「リョウエスト・技術の導き手! 最高じゃねえか!」
「……この名に異論のある者は?」
「いない!」
「異論などあろうはずも!」
こうして、ドワーフたちは心からの敬意を込めて、彼に新たな称号を贈ることを決めた。
だが、その夜、グラドはひとり、書斎で考えを巡らせていた。
「…これだけでは足りぬ」
手元の速文通信機を手に取り、グラドは他種族の伯爵たちへ連絡を取り始めた。
「我ら六種族の伯で、一つの名を与えたい…人と、種を越えて共に歩む者にな」
ドワーフ伯グラドからの速文は、風と魔力の通信網を通じて、他の五種族伯の元へと届いた。
エルフ伯は、その文を開くとすぐに微笑みを浮かべた。
「…なるほど、『名』を贈る、か。あの者に相応しい栄誉だ」
火の民伯は喜んだ。
「うむ。『炎を灯すもの』のように鮮やかに彩る良い炎だ」
獣人伯は、文を読み上げながら唸る。
「うむ。この人間、リョウエスト。ただの技術者ではない。『道を繋ぐもの』だ。違う種族の道を繋ぐ男。彼には新しい名がふさわしい」
水竜人の伯爵も文を読み、笑みを浮かべた。
「ふふっ、いいじゃないか。『名』か。私が持ってないものを持ってる。素晴らしい提案だ」
そして、小人伯はいつも通り子供言葉で答えた。
「リョウエスト、偉い! みんな仲良しにしたから、名前あげるのっ!」
やがて、グラドのもとに全員からの返信が届く。それはすべて、ひとつの名を認める内容だった。
エルフの伯が提案した、古エルフ語の言葉。
『バァン(Vaan)』
意味は『道』…種を越え、思想を繋ぎ、未来を開く者。
「リョウエスト・バァン・スサン…いい響きだ」
グラドは王都に速文を送り、この名の承認を求めた。しばらくして、王からの返答が返る。
『我、これを認める。この国の『未来の記録者』にふさわしい名である』
そして数日後、儀式の場が整えられた。
ドワーフの大広間の奥、金と鉄で装飾された重厚な祭壇の前に、リョウエストは立っていた。
左右には、ドワーフの百人の親方と、グラド伯。後方には、陽炎隊、青の技、ナビ、エメイラ、ミザーリ、ストークたち仲間が並んでいる。
「呼ばれて来たけど…なんだこの大げさな雰囲気は」
とリョウエストがぼそっと呟くと、ミザーリが肩をすくめた。
「私たちも聞いてないの。ドワーフっていつもこう」
「ぜったい、なんか『やりすぎ』だよね」
とエメイラが小声で言う。
そのとき、グラドが重々しく一歩前へ出た。
「リョウエスト。我らドワーフ一同、そして他五種族の伯爵より、お主に一つの名と一つの称号を授ける」
「…名と、称号?」
エメイラが、笑みを浮かべて小声でささやいた。
「驚く準備をしておくといいわ」
グラドは高らかに叫ぶ。
「我らが友、リョウエストよ。貴殿は鉄を燃やし、知を与え、争いを止めた」
「ゆえに我らドワーフは、貴殿に二つ名を授ける!」
親方百人が声を揃える。
「『技術の導き手』!!」
会場が歓声に包まれ、リョウエストがぽかんと口を開けた。
「いや、あの…えっと…ありがとうございます」
「まだあるぞ!」グラドが続ける。
「そして六種族の伯は、貴殿の名の中に、新たな“道”の意味を込めることを決めた!」
金の箱を開くと、そこにはエルフ文字で刻まれた一枚の銀製の名札。
『リョウエスト・バァン・スサン』
グラドがそれを手にし、リョウエストの胸元へと付けた。
「この名、『バァン』とは『道』。貴殿が繋いだ絆、築いた橋、導いた未来を称えて」
リョウエストは目を瞬かせたまま、静かにその名札を見つめていた。
「…そんな大それた人間じゃ、僕はないけど」
そう言った彼の目は、どこか少しだけ潤んでいた。
そうつぶやいたのは、鍛冶親方の一人、ブロンゾだった。鍛冶場の煙の中で、彼の言葉に周囲の親方衆も作業の手を止めた。
「そういや、そうだな……」
「ウイスキーと玉鋼と旋盤……もらってばっかだぞ、我ら」
ドワーフ伯グラドは腕を組みながら唸る。
「だが、あいつに金も名誉もいまさら要らんだろ。貴族並みの待遇だ。おまけに技術も発明も、もう足りないものなどないように見える」
「じゃあ、どうすんだよグラド」
と別の親方が言うと、グラドは小さくうなずいた。
「…あいつの周りを知っている者に聞こう。ストークと、ミザーリ。そしてエメイラ嬢だ。まずはそこから始めよう」
数時間後、ドワーフの迎賓館の広間で、三人は向かい合って座らされていた。ドワーフ百人の親方衆と伯が見つめる中、エメイラが苦笑いする。
「そうね、リョウは…そういった『物質的な贈り物』で満足するタイプではあないわね」
「主はお金なら既に持ってるし、名誉も国からもらってる。あんまり欲しがらないタイプさ」
とミザーリが補足する。ストークは、手帳を見ながら言った。
「ただ…あえて言うなら、『記録』や『意味』を大事にしておられます。『未来に残る形』という観点なら、何か…」
「未来に残る…形か」
グラドが呟いた。その瞬間、親方の一人が叫んだ。
「そうだ、二つ名だ!」
「二つ名?」
「ドワーフ流の称号だよ。あんたがどんなやつだったか、どんな功績を残したか…そういう意味を込めた名だ。我らの世界じゃ、大事なもんなんだ」
グラドの目が輝いた。
「我ら、これまであいつに贈ってなかったな……!」
「どんな名が良いだろう」
「『鋼の友』……は違うな。ありきたりすぎる」
「『鉄の筆』……いや、文豪じゃないし」
「『創造の目覚めし者』?……うーん、惜しい!」
百人のドワーフが頭を抱える中、グラドが拳を叩く。
「『技術の導き手』!」
その言葉に空気が止まり、次の瞬間、大歓声が巻き起こった。
「それだ!」
「技術をもって未来へと導く者!」
「リョウエスト・技術の導き手! 最高じゃねえか!」
「……この名に異論のある者は?」
「いない!」
「異論などあろうはずも!」
こうして、ドワーフたちは心からの敬意を込めて、彼に新たな称号を贈ることを決めた。
だが、その夜、グラドはひとり、書斎で考えを巡らせていた。
「…これだけでは足りぬ」
手元の速文通信機を手に取り、グラドは他種族の伯爵たちへ連絡を取り始めた。
「我ら六種族の伯で、一つの名を与えたい…人と、種を越えて共に歩む者にな」
ドワーフ伯グラドからの速文は、風と魔力の通信網を通じて、他の五種族伯の元へと届いた。
エルフ伯は、その文を開くとすぐに微笑みを浮かべた。
「…なるほど、『名』を贈る、か。あの者に相応しい栄誉だ」
火の民伯は喜んだ。
「うむ。『炎を灯すもの』のように鮮やかに彩る良い炎だ」
獣人伯は、文を読み上げながら唸る。
「うむ。この人間、リョウエスト。ただの技術者ではない。『道を繋ぐもの』だ。違う種族の道を繋ぐ男。彼には新しい名がふさわしい」
水竜人の伯爵も文を読み、笑みを浮かべた。
「ふふっ、いいじゃないか。『名』か。私が持ってないものを持ってる。素晴らしい提案だ」
そして、小人伯はいつも通り子供言葉で答えた。
「リョウエスト、偉い! みんな仲良しにしたから、名前あげるのっ!」
やがて、グラドのもとに全員からの返信が届く。それはすべて、ひとつの名を認める内容だった。
エルフの伯が提案した、古エルフ語の言葉。
『バァン(Vaan)』
意味は『道』…種を越え、思想を繋ぎ、未来を開く者。
「リョウエスト・バァン・スサン…いい響きだ」
グラドは王都に速文を送り、この名の承認を求めた。しばらくして、王からの返答が返る。
『我、これを認める。この国の『未来の記録者』にふさわしい名である』
そして数日後、儀式の場が整えられた。
ドワーフの大広間の奥、金と鉄で装飾された重厚な祭壇の前に、リョウエストは立っていた。
左右には、ドワーフの百人の親方と、グラド伯。後方には、陽炎隊、青の技、ナビ、エメイラ、ミザーリ、ストークたち仲間が並んでいる。
「呼ばれて来たけど…なんだこの大げさな雰囲気は」
とリョウエストがぼそっと呟くと、ミザーリが肩をすくめた。
「私たちも聞いてないの。ドワーフっていつもこう」
「ぜったい、なんか『やりすぎ』だよね」
とエメイラが小声で言う。
そのとき、グラドが重々しく一歩前へ出た。
「リョウエスト。我らドワーフ一同、そして他五種族の伯爵より、お主に一つの名と一つの称号を授ける」
「…名と、称号?」
エメイラが、笑みを浮かべて小声でささやいた。
「驚く準備をしておくといいわ」
グラドは高らかに叫ぶ。
「我らが友、リョウエストよ。貴殿は鉄を燃やし、知を与え、争いを止めた」
「ゆえに我らドワーフは、貴殿に二つ名を授ける!」
親方百人が声を揃える。
「『技術の導き手』!!」
会場が歓声に包まれ、リョウエストがぽかんと口を開けた。
「いや、あの…えっと…ありがとうございます」
「まだあるぞ!」グラドが続ける。
「そして六種族の伯は、貴殿の名の中に、新たな“道”の意味を込めることを決めた!」
金の箱を開くと、そこにはエルフ文字で刻まれた一枚の銀製の名札。
『リョウエスト・バァン・スサン』
グラドがそれを手にし、リョウエストの胸元へと付けた。
「この名、『バァン』とは『道』。貴殿が繋いだ絆、築いた橋、導いた未来を称えて」
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