変態になってしまった教え子が私を愛しすぎて困ってます。大魔導師は隠居したい

リリん

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第一章

04

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 04話


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ベルちゃん、ベルちゃん?」
 
「⋯⋯⋯」

「っベルク?!」

 おかしい、何度呼んでも返事がない。
 もしかすると⋯⋯いや、もしかしなくてもそうなのかもしれない。

 ——ある種の可能性が頭に浮かぶ。

 目の前で涙を流しながら気を失っているベルクの額にそっと、人差し指を当て自分の魔力を流す。
 不意に眩い光放つと同時に指先から金色の光が糸状に額を辿り、黒調に包まれた青年の体を張り巡らせる。

「【感知】」

 人にはそれぞれ異なる魔力の流れと属性があり、無理矢理異なる魔力を体内に受ければ魔力循環器官を重傷させてしまう。

 軽症で吐き気、頭痛、一時的魔法の使用不可。
 重症で内臓器の破損、魔力循環器官の再起不能。すなわち魔法を二度と使え無いことになる。
 まぁ一番最悪の結果は体内に衝突し合う力に耐えきれず。風船が破裂するように体はぐちゃぐちゃに臓器は飛び散って、死ぬ。

 正直言って見たくない場面だ、絶対吐く⋯⋯

 故にこの方法は術者の繊細な魔力操作を必要とする上級魔法。中級の【探知】をさらに昇格させた魔法。

 要約すると——探知は魔力を波紋状に放ち、周囲の情報を知る。ただし術者によって情報は大雑把な事が多い。
 ——感知は触れた対象に自身の魔力を流し、対象のより深く、多くの情報を知り得ることが出来る。例えば魔力属性や魔力量など。

 体内を巡らせるイメージでゆっくり、繊細に。相手の魔力循環を壊さないように優しく相手の体内を探る。

「これは⋯⋯」

 ——微小だけど確かに感じる闇の魔力。

 でも、ベルちゃんは半身魔族の血脈持ち。だから闇の魔力を感じ取れるのは何ら問題もないはず。

 問題なのは。闇魔力の破壊力の強さ故に、普段は抑止に私が囲った枠から外れないように、ベルちゃんの体内に封印を施してある。

 (自分で言うのもなんだけど、この“大魔導師”様の封印を破るなんて滅多な事が起こらない限りあり得ない⋯⋯絶対にナイナイ)

 ならばどうして? 封印が解けた? いや、さっきまでちゃんと封印は保たれている。 

 誰かによって闇の魔力に揺さぶりをかけている? でも何故? 闇魔法をの恐ろしさを知るこの国で、不安定なベルちゃんを暴走させたら被害が及ぶのはこの地だ。

 だったら目当ては私か⋯⋯
 暴走したベルちゃんにより被害を出した後、世間で責められるのは師である私。
 なんせ周りの反対に屁でも思わない態度で魔族の子を側に置いた。それも、弟子として。

 だからベルちゃんの周りはきっと妬む人や、敵意を示す人は大勢いる。

 それでも大事な事件が起こらなかったのは大魔導師賢者である私への畏敬の念か、私の“脅し”が功を成しているのか⋯⋯⋯⋯うん、多分脅しだろう。

 それなのに、今彼はもしかすると誰かの手によって故意的に闇の魔力を暴発させられようとしている。

 もし本当に故意的な行動なら⋯⋯

「フッ、地獄を見せてやろう」

 不確定の加害者に怒りを通り越して逆に口元から笑みをうっすら浮かべる。碧い瞳から温度が消え、もし前に立つ者がいたら目線だけで人を凍え死なせそうだ。

「この事は後に調べることにして。今はベルちゃんの方をなんとかしないと⋯⋯
このままだと魔力暴走起こして、私の部屋が吹っ飛んでしまうか。心の隙間から契約悪魔に呑み込まれて、体を乗っ取られるか⋯⋯」

 どっちも良くない結果だ。早く闇魔力に囚われたベルちゃんの自我を取り戻さなければ。

 囚われる意識を呼び覚ます為には、私から相手の意識空間に入り込まないと⋯⋯

 (あっ、そういえば⋯⋯あの悪魔くん、大人しくしてけるかなぁ⋯⋯)

 彼の閉ざされた心に精神を繋げ潜る。
 魂を引き込まれる感覚の最中に。ふとっ思い出したかつてボコボコに調教した悪魔の存在を、なんとなく口ずさむと程なくして深い眠りに落ちた。
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