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碧の翼③
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それから数日が過ぎた。
あのとき小さな箱の中で身を丸めていた魔鳥は、目を見張るような回復を見せ、いまでは部屋中を元気に飛び回るほどに回復していた。
ある朝――
リューネがまどろみの中で目を開けると、視界の端に小さな影が見える。
いつの間にか目を覚ました魔鳥が、枕元にちょこんと立っていた。
「おはよう…ふふ、僕を起こしに来てくれたの?」
甘く微笑みかけるリューネに、魔鳥は首をくるんと傾げて応え、頬にふわりと頭を擦り寄せてくる。
その羽は朝の陽光に照らされ、まるで空そのものを映したような碧い光を放っていた。
その日からというもの、魔鳥は何処へ行くにも一日中リューネにべったりだった。
庭に出れば肩に乗りリューネのピアスをつついたり、食事の支度中はキッチンのカウンターにとまり、洗濯をすれば干したタオルの上に。自分が眠るときは決まってリューネに頭を撫でて貰うまで眠りにつく事が無かった。
ある朝、バードフィーダーに果物を並べていたリューネは、ふと空を見上げた。
朝露に濡れた庭、穏やかに流れる雲、その中をすいすいと飛ぶ蒼い翼を携える魔鳥…。
その姿は、まるで空そのものが羽ばたいているようだった。
「…魔鳥ちゃん、じゃ、ちょっとかわいそうかな」
肩にとまって首をかしげるその鳥を見つめながら、リューネはふっと優しく笑った。
「ねぇ、君。碧い羽がとっても綺麗だから“ルリ”って呼んでもいい?」
その名は、宝石の“瑠璃”にちなんだもの。蒼く光るその羽を見て、自然と口をついて出た。
魔鳥はまるで理解したかのように「ピィ」と鳴き、リューネの頬に優しく寄り添う。
「うん、“ルリ”って響き、君にぴったりだね」
それからリューネは、”魔鳥ちゃん”と呼ぶのをやめた。
ルリはいつも傍にいて、名前を呼ばれるたびに嬉しそうに鳴いた。
一方、アルがまだベッドの中で眠っている頃になると、ルリは決まって彼の元へ飛んでいき、勝手に指先から魔力をごはん代わりに吸い取っていた。
目を覚ましたアルに「こら」と軽く額をつつかれても、ルリは悪びれずに「ピィ」と鳴き、むしろ得意げに嘴を鳴らす。
その日々の魔力補給のおかげか、ルリの成長は実に目覚ましかった。
一週間、二週間と過ぎる頃には、肩にとまるには大きくなりすぎてしまい、今ではリューネの膝下ほどの背丈にまで成長していた。
最近では、リューネが片腕を差し出すと、ルリはそこに堂々と乗って移動するようになっていた。
「お外、行く?」
そう問いかけると、ルリは首を傾げてから軽く羽ばたき、高く澄んだ空へと舞い上がった。
――けれど、どれほど自由になってもどこかへ行ってしまうことはなかった。
夕暮れが近づけば、ルリはいつもリューネの家に戻ってきた。
キッチンから見える大きな窓の前でちょこんと待ち、扉が開くとまるで「ただいま」とでも言うように部屋へ飛び込んでくる。
そして夜は、窓辺に用意されたふかふかのクッションの上で、穏やかな寝息を立てて眠るのだった。
そして日中お腹が減ると、魔道塔の最上階にひょっこり姿を現しては、テスの元で魔力をせがむのが日課となっていた。
「また来たのか。お前は腹が減った時だけ愛想よく擦り寄ってくるな…」
そんな呟きとは裏腹に、テスの声はどこか嬉しそうだった。
ぐんぐんと大きくなるルリの姿に、目を細めながら魔力を与えてやるのが日課になっていた。
蒼く輝くその姿は、塔の上にとまっているだけで人目を引き、やがて街の人々の間でも話題になる。
「ねぇ、見て。あれが王都に現れた魔鳥なんだって」
「こんなに美しい鳥、見たことないよ」
「なんだか、幸運を運んできてくれそう……!」
碧い羽を持つその魔鳥は、王家に縁ある存在として――
そして街の守り神のような存在として、街の人々に優しく見守られるようになっていった。
もちろん、サーシアもその後数日に一度は様子を見に現れていた。
「よし、今日こそ俺の魔力をたっぷり食わせてやるからな!」
意気込んで指先を差し出すものの、ルリは決まってぷいと顔を背け口をつける事は無かった。
「アルとテスの魔力と俺の魔力どう違うんだ?俺も同じ王族だし、なんなら俺の方が偉いのに…」
うなだれたまま転移していくサーシアの姿は、もはやこの家ではおなじみの光景になっていた。
「サーシア様、すっごくがっかりしてたね」
リューネはそんな背中を見送って、小さく笑いながらルリの頭をそっと撫でる。
「ルリ、次は少しくらいお相手してあげようね? ……なんて、無理かな?」
「ピィ」
ルリと過ごす穏やかで、あたたかな日々は静かに続いていった。
――王都の空に、今日も蒼い羽がひらりと舞う。
あのとき小さな箱の中で身を丸めていた魔鳥は、目を見張るような回復を見せ、いまでは部屋中を元気に飛び回るほどに回復していた。
ある朝――
リューネがまどろみの中で目を開けると、視界の端に小さな影が見える。
いつの間にか目を覚ました魔鳥が、枕元にちょこんと立っていた。
「おはよう…ふふ、僕を起こしに来てくれたの?」
甘く微笑みかけるリューネに、魔鳥は首をくるんと傾げて応え、頬にふわりと頭を擦り寄せてくる。
その羽は朝の陽光に照らされ、まるで空そのものを映したような碧い光を放っていた。
その日からというもの、魔鳥は何処へ行くにも一日中リューネにべったりだった。
庭に出れば肩に乗りリューネのピアスをつついたり、食事の支度中はキッチンのカウンターにとまり、洗濯をすれば干したタオルの上に。自分が眠るときは決まってリューネに頭を撫でて貰うまで眠りにつく事が無かった。
ある朝、バードフィーダーに果物を並べていたリューネは、ふと空を見上げた。
朝露に濡れた庭、穏やかに流れる雲、その中をすいすいと飛ぶ蒼い翼を携える魔鳥…。
その姿は、まるで空そのものが羽ばたいているようだった。
「…魔鳥ちゃん、じゃ、ちょっとかわいそうかな」
肩にとまって首をかしげるその鳥を見つめながら、リューネはふっと優しく笑った。
「ねぇ、君。碧い羽がとっても綺麗だから“ルリ”って呼んでもいい?」
その名は、宝石の“瑠璃”にちなんだもの。蒼く光るその羽を見て、自然と口をついて出た。
魔鳥はまるで理解したかのように「ピィ」と鳴き、リューネの頬に優しく寄り添う。
「うん、“ルリ”って響き、君にぴったりだね」
それからリューネは、”魔鳥ちゃん”と呼ぶのをやめた。
ルリはいつも傍にいて、名前を呼ばれるたびに嬉しそうに鳴いた。
一方、アルがまだベッドの中で眠っている頃になると、ルリは決まって彼の元へ飛んでいき、勝手に指先から魔力をごはん代わりに吸い取っていた。
目を覚ましたアルに「こら」と軽く額をつつかれても、ルリは悪びれずに「ピィ」と鳴き、むしろ得意げに嘴を鳴らす。
その日々の魔力補給のおかげか、ルリの成長は実に目覚ましかった。
一週間、二週間と過ぎる頃には、肩にとまるには大きくなりすぎてしまい、今ではリューネの膝下ほどの背丈にまで成長していた。
最近では、リューネが片腕を差し出すと、ルリはそこに堂々と乗って移動するようになっていた。
「お外、行く?」
そう問いかけると、ルリは首を傾げてから軽く羽ばたき、高く澄んだ空へと舞い上がった。
――けれど、どれほど自由になってもどこかへ行ってしまうことはなかった。
夕暮れが近づけば、ルリはいつもリューネの家に戻ってきた。
キッチンから見える大きな窓の前でちょこんと待ち、扉が開くとまるで「ただいま」とでも言うように部屋へ飛び込んでくる。
そして夜は、窓辺に用意されたふかふかのクッションの上で、穏やかな寝息を立てて眠るのだった。
そして日中お腹が減ると、魔道塔の最上階にひょっこり姿を現しては、テスの元で魔力をせがむのが日課となっていた。
「また来たのか。お前は腹が減った時だけ愛想よく擦り寄ってくるな…」
そんな呟きとは裏腹に、テスの声はどこか嬉しそうだった。
ぐんぐんと大きくなるルリの姿に、目を細めながら魔力を与えてやるのが日課になっていた。
蒼く輝くその姿は、塔の上にとまっているだけで人目を引き、やがて街の人々の間でも話題になる。
「ねぇ、見て。あれが王都に現れた魔鳥なんだって」
「こんなに美しい鳥、見たことないよ」
「なんだか、幸運を運んできてくれそう……!」
碧い羽を持つその魔鳥は、王家に縁ある存在として――
そして街の守り神のような存在として、街の人々に優しく見守られるようになっていった。
もちろん、サーシアもその後数日に一度は様子を見に現れていた。
「よし、今日こそ俺の魔力をたっぷり食わせてやるからな!」
意気込んで指先を差し出すものの、ルリは決まってぷいと顔を背け口をつける事は無かった。
「アルとテスの魔力と俺の魔力どう違うんだ?俺も同じ王族だし、なんなら俺の方が偉いのに…」
うなだれたまま転移していくサーシアの姿は、もはやこの家ではおなじみの光景になっていた。
「サーシア様、すっごくがっかりしてたね」
リューネはそんな背中を見送って、小さく笑いながらルリの頭をそっと撫でる。
「ルリ、次は少しくらいお相手してあげようね? ……なんて、無理かな?」
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――王都の空に、今日も蒼い羽がひらりと舞う。
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