【BL】皇位を継げないオメガ皇子が、アルファ従弟を育てた結果

縁堂幸

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 エルネストが寝息を立て始めたのが聞こえ、ライナスは目を開けた。

「……いや。おかしいだろう」

 思わず独り言をこぼしてしまったが、エルネストが起きる気配はない。

 成人したアルファが同じベッドで休んでいるのに、何の警戒もなく先に眠るオメガなんているだろうか。ここにいる。ライナスの母方の従兄、エルネスト・アークライト皇子は不用心極まりない人だ。

 まあ不用心といっても、他のアルファに対しては人並み以上に警戒する。こんなふうに気を許しているのは自分に対してだけであることをライナスは嬉しく思う反面、もどかしくも思っているのだ。



――冗談で唇にキスなんて、するわけないじゃないか。

 しかしエルネストはいつもこうだった。

 ライナスが愛の言葉を囁いても、全部「面白い冗談だ」で済ませる。冗談ではなく本気ですと言っても、「今回の冗談は二段構えなんだね」と笑うばかり。

 皇宮に住むようになって十一年。エルネストに甘えすぎたせいで、もう唇を奪ったくらいでは何とも思ってもらえないのだろうか。だとしても、アルファから口づけされて少しも警戒しないのは、さすがに不用心すぎる。

「……まあいいか」

 別に焦ることはないのだしと、ライナスはいつものごとく、エルネストのうなじに自分の喉仏をぴたりとつけて、優勢アルファのフェロモンを放出した。エルネストに近寄ろうとするアルファを追い払うためである。

 明日の朝、支度のために湯を浴びるとほとんど落ちてしまうが、それでも虫除けの効果がある。ライナスのフェロモンを少しでも感じれば、余程の馬鹿でない限り他のアルファはエルネストに手を出さない。アルファとして、絶対にライナスに敵わないと本能で理解するからだ。

 初めてエルネストに出会った日。
 まだ第二性がわかっていないのに、ライナスは「この人と結婚するのだ」となぜか確信した。

 皇后似で美しい皇子様。自分は次男なので、もしエルネストがオメガで自分がアルファなら、皇太子になってエルネストを伴侶に迎えるのも夢ではないと思ったのだ。

 しかしエルネストがオメガだと判明した時、ライナスはまだ七歳。

 そのうち、兄のグスタフが皇太子教育を受けるという話が持ち上がって、ライナスは稀に見る早さでアルファ性に覚醒した。こんなに早く覚醒したということは優勢アルファの可能性があると主治医が言うので、ライナスのほうが皇太子教育を受けることになったのだ。

 二次性徴が現れる頃には本当に優勢アルファのフェロモンを扱えるようになったのだが、ライナスは今でも思う。兄のグスタフにエルネストを取られると思ったら嫌すぎた。エルネストと結婚するのは自分だという執念で、あんなに早くバース覚醒できたのだろうと。

 しかしエルネストは、ライナスの熱烈な好意にまるで気づいていない様子だ。先程だって、ファーストダンスの相手にエルネスト以外を選ぶように言われた。気に入ったオメガを選ぶとすれば、ライナスはいつもどおりエルネストをダンスに誘うことになるというのに。

「はぁ……どうしたら結婚してもらえるのかな」

 今日の様子からして、皇太子になった後で堂々とプロポーズしても「あはは! 今のは今年一番面白い冗談だ」なんて言われそうだ。

 溜息を吐き出して、ライナスもどうにか眠りについた。
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