46 / 82
支部長
しおりを挟む
「答えなさい! ロイ、どこでその奴隷を手に入れた!?」
支部長が顔を真っ赤にして叫ぶ。
……なんで支部長はセフィラが奴隷(今は違うけど)だとわかったんだ?
奴隷、という単語に周囲から困惑の声を漏れる。
これはまずい。
「支部長、言いがかりはやめてください。彼女は奴隷なんかじゃありません」
「嘘を言うのはやめなさいっ! 証拠はあるんですよ!」
「は? 証拠?」
「その女のフードを取るのです! そうすればわかります!」
フードを取ればセフィラがエルフだということがバレる。
「それは……」
「できないんですか? 何かやましいことがあるんですか?」
なんて鬱陶しい言い方だ!
仕方ない。ここで下手に隠し事をしたほうが面倒になりそうだ。
「セフィラ。言う通りにしてやれ」
「……はい」
ぱさ、とセフィラが被っていたフードを取り、その美貌と特徴的な耳をあらわにする。
周囲に集まった野次馬たちも、セフィラのあまりの美しさに息を呑んでいた。
「ほぉーら、やっぱりエルフじゃないですかぁ! とぼけようとしても無駄なんですよぉ!」
そら見ろと言わんばかりに支部長が大声を上げる。
「確かにセフィラはエルフですが、それがなぜ奴隷なんて話になるんですか?」
「決まっています、エルフなんて珍しい種族はそうそういません。唯一、先日王都で開かれた王都での闇市――そこで売り出された奴隷以外にはね!」
王都での闇市。
セフィラはそこでジュードに買われたのだろうか。
というかなんで支部長はそんなことを知ってるんだ?
「私は今回の闇市にエルフが売りに出されると聞いて、ジュードに買いに行くよう頼んだのです。首尾よく引換券を手に入れ、あとは運ばれてくるのを待つのみでした」
支部長は興奮のあまり見境がなくなっているのか、衆目の前にもかかわらず語る。
「しかしジュードが直前になり、あなたに負けて失踪した! 預けておいた引換券も紛失し、奴隷商人からそれを手に入れる機会もなくなったのです!」
支部長はこちらに歩み寄ってきて、セフィラの前髪に手を伸ばす。
「ひっ……」
そして支部長は硬直するセフィラの前髪を上げ、隠していた色違いの目を露出させる。
うっとりと支部長は表情を緩める。
「ああ、なんと美しい……! 美しいエルフの容姿に加え、このオッドアイ! こんなレアなものはそうそうありません! 私はこの希少なモノを思う存分愛でることができるはずだったのに――」
「――何してる、この下衆」
俺は支部長の手首を掴み、捻り上げた。
「ぎゃあああああああああああああ! 痛い! 痛いっ!」
「彼女は奴隷でも、モノでもなく、俺の仲間です。勝手に触れないでもらえますか?」
さっきから聞いていれば自分勝手なことばかり。
セフィラのことを芸術品の一種だとでも思っているんだろうか?
まともな精神じゃない。
「は、離しなさいッ!」
「だいたい、左右で目の色が違うくらいのことがなんですか? そんなことの何が重要なのか、まったく理解できませんね」
目の色なんてセフィラの人間性とは何の関係性もないだろうに。
「――――――、」
視界の端では、なぜかセフィラが呆気に取られたように俺を見ていた。
それはまるで、絶対にありえないと思っていたことが実現したような。
そんな表情だった。
……なんだ? 俺は別に変なことは言ってないと思うが。
支部長は俺の手を振り払い、ぜえぜえと息を吐きながら俺を睨んでいる。
「そ、そのエルフを寄越しなさい。私のものですよ」
「セフィラは誰のものでもありません」
「金ならあなたが払った倍額、いえ三倍払います」
「いい加減にしてもらえますか? セフィラはもう奴隷じゃないんですよ」
金でどうこうできるものじゃない。
「このっ……<召喚士>ごときが私に逆らうつもりですかぁあ……! では力づくで奪うまでです!」
支部長は表情を歪めると、懐から何を取り出してくわえた。
……なんだあれ、笛か? 何をするつもりだ?
ビィイイイイイイイイッ――――
支部長が息を吐くと甲高い音が鳴り、すぐに人垣の奥から何かが飛び込んできた。
「ああ……あう、あ……」
「薬……くすりをくれ……ははっあははははは」
それは人だった。
しかし様子がおかしい。どちらもよだれをたらし、目の焦点が合っていない。
支部長が哄笑を上げる。
「ははははっ! 彼らは私の護衛ですよ! 『コンフィルの実』から作り出した薬物に依存した元冒険者で、薬欲しさに私の言うことなら何でも聞きます! また、その腕力は通常よりもはるかに強化されています!」
「なっ……」
こいつどうかしてるのか!?
支部長が顔を真っ赤にして叫ぶ。
……なんで支部長はセフィラが奴隷(今は違うけど)だとわかったんだ?
奴隷、という単語に周囲から困惑の声を漏れる。
これはまずい。
「支部長、言いがかりはやめてください。彼女は奴隷なんかじゃありません」
「嘘を言うのはやめなさいっ! 証拠はあるんですよ!」
「は? 証拠?」
「その女のフードを取るのです! そうすればわかります!」
フードを取ればセフィラがエルフだということがバレる。
「それは……」
「できないんですか? 何かやましいことがあるんですか?」
なんて鬱陶しい言い方だ!
仕方ない。ここで下手に隠し事をしたほうが面倒になりそうだ。
「セフィラ。言う通りにしてやれ」
「……はい」
ぱさ、とセフィラが被っていたフードを取り、その美貌と特徴的な耳をあらわにする。
周囲に集まった野次馬たちも、セフィラのあまりの美しさに息を呑んでいた。
「ほぉーら、やっぱりエルフじゃないですかぁ! とぼけようとしても無駄なんですよぉ!」
そら見ろと言わんばかりに支部長が大声を上げる。
「確かにセフィラはエルフですが、それがなぜ奴隷なんて話になるんですか?」
「決まっています、エルフなんて珍しい種族はそうそういません。唯一、先日王都で開かれた王都での闇市――そこで売り出された奴隷以外にはね!」
王都での闇市。
セフィラはそこでジュードに買われたのだろうか。
というかなんで支部長はそんなことを知ってるんだ?
「私は今回の闇市にエルフが売りに出されると聞いて、ジュードに買いに行くよう頼んだのです。首尾よく引換券を手に入れ、あとは運ばれてくるのを待つのみでした」
支部長は興奮のあまり見境がなくなっているのか、衆目の前にもかかわらず語る。
「しかしジュードが直前になり、あなたに負けて失踪した! 預けておいた引換券も紛失し、奴隷商人からそれを手に入れる機会もなくなったのです!」
支部長はこちらに歩み寄ってきて、セフィラの前髪に手を伸ばす。
「ひっ……」
そして支部長は硬直するセフィラの前髪を上げ、隠していた色違いの目を露出させる。
うっとりと支部長は表情を緩める。
「ああ、なんと美しい……! 美しいエルフの容姿に加え、このオッドアイ! こんなレアなものはそうそうありません! 私はこの希少なモノを思う存分愛でることができるはずだったのに――」
「――何してる、この下衆」
俺は支部長の手首を掴み、捻り上げた。
「ぎゃあああああああああああああ! 痛い! 痛いっ!」
「彼女は奴隷でも、モノでもなく、俺の仲間です。勝手に触れないでもらえますか?」
さっきから聞いていれば自分勝手なことばかり。
セフィラのことを芸術品の一種だとでも思っているんだろうか?
まともな精神じゃない。
「は、離しなさいッ!」
「だいたい、左右で目の色が違うくらいのことがなんですか? そんなことの何が重要なのか、まったく理解できませんね」
目の色なんてセフィラの人間性とは何の関係性もないだろうに。
「――――――、」
視界の端では、なぜかセフィラが呆気に取られたように俺を見ていた。
それはまるで、絶対にありえないと思っていたことが実現したような。
そんな表情だった。
……なんだ? 俺は別に変なことは言ってないと思うが。
支部長は俺の手を振り払い、ぜえぜえと息を吐きながら俺を睨んでいる。
「そ、そのエルフを寄越しなさい。私のものですよ」
「セフィラは誰のものでもありません」
「金ならあなたが払った倍額、いえ三倍払います」
「いい加減にしてもらえますか? セフィラはもう奴隷じゃないんですよ」
金でどうこうできるものじゃない。
「このっ……<召喚士>ごときが私に逆らうつもりですかぁあ……! では力づくで奪うまでです!」
支部長は表情を歪めると、懐から何を取り出してくわえた。
……なんだあれ、笛か? 何をするつもりだ?
ビィイイイイイイイイッ――――
支部長が息を吐くと甲高い音が鳴り、すぐに人垣の奥から何かが飛び込んできた。
「ああ……あう、あ……」
「薬……くすりをくれ……ははっあははははは」
それは人だった。
しかし様子がおかしい。どちらもよだれをたらし、目の焦点が合っていない。
支部長が哄笑を上げる。
「ははははっ! 彼らは私の護衛ですよ! 『コンフィルの実』から作り出した薬物に依存した元冒険者で、薬欲しさに私の言うことなら何でも聞きます! また、その腕力は通常よりもはるかに強化されています!」
「なっ……」
こいつどうかしてるのか!?
65
あなたにおすすめの小説
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。
全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。
才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる