ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ

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ブラックダック

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「……ただいま」
「おかえりなさい、クレイさ――何があったんですか!?」

 出迎えてくれたミリルが、俺の背後で群れをなしている黒カルガモを見て目を丸くしている。
 まあ、そうなるよな。

「クレイ、アナタそれどこで拾ってきたのよ」

 ティアが呆れたように聞いてくる。

「拾ったっていうか……偶然助けたらついてくるようになったっていうか」

 この黒カルガモたちはあれからずっと俺たちの後をついてきた。
 落ち着かないんだが、かといって俺に懐いているのにゴーレムで追い払うのも何か気が引けて、結局拠点まで連れてきてしまった。

「しかもこいつら、妙に頭がいいんだよ」
「頭がいい?」

 これはやって見せたほうが早いだろう。俺は黒カルガモたちに向かって声を張る。

「よし、整列!」
『『『グワッグワッグワッ!』』』

 黒カルガモたちは俺の号令に従い横に十、縦に三羽の列を作る。

「十歩前進!」
『『『グワッグワッ』』』
「停止、反転」
『『『グワッ!』』』
「翼を広げてポージング!」
『『『グワァッ!』』』

 ビシィッ!

 三十羽の黒カルガモは羽を掲げて雄々しいポーズを決めた。

 その様子は壮観と言えなくもない。

「と、まあこんな感じで人の指示をよく聞くんだよな。結構凄くないか?」
「クレイ、アナタちょっとこの子たち気に入ってるでしょ」
「……何のことかな」

 ティアにジト目で見られた。

 まあ、正直ちょっと悪乗りしたのは認める。
 面白いくらい言うことを聞くから、トレント狩りをしながら色々試していたんだが、ものの見事に全部習得してしまった。

「というわけなんだが……こいつら、飼ってもいいか?」
「別にいいんじゃない? アナタが作った拠点なんだし」

 と、ティアはあっさり頷いた。

「……」

 一方ミリルは何かを考え込むような顔をしている。
 ミリルは反対なんだろうか?

 そんなことを考える俺に、ミリルはこんなことを言った。

「クレイ様、この子たちに害虫対策をしてもらうのはどうでしょう?」
「害虫対策を?」
「はい。具体的なやり方ですが――」

 俺は真剣な様子で説明をするミリルの言葉に耳を傾けた。




『『『グワッグワッグワッ!』』』

 畑の中に黒いカルガモたちが突撃し、野菜の隙間にクチバシを突き入れる。
 そしてそこにいる、作物にこびりついた害虫たちをばくばく食べる。

 おお……

「うまくいきそうですね!」

 その様子を隣で見ているミリルがにっこり笑う。

「そうだな。それにしてもよく思いついたな、あいつらで害虫駆除なんて」
「アヒルを農業に取り入れるやり方を聞いたことがあったので」

 黒カルガモたちには作物ではなく、害虫のみを食べるように指示して畑に放す。
 そうすることで畑のよくない虫はあっという間に駆逐されていった。

 おまけに黒カルガモたちの排泄物はそのまま上質な肥料になる。
 これは自動ゴーレムにはない利点だ。

 何となく連れ帰った黒カルガモが、こんなに戦力になるとは。

「っていうか、アヒルじゃなくてブラックダックよ」

 ティアがミリルの言葉に訂正を入れる。

「名前の雰囲気からして、もしかしてあのカルガモたちは魔物なのか?」
「ええ。あ、魔物と言っても人を襲ったりはしないから安心していいわ。本当は警戒心が高いんだけど……クレイにはすっかり懐いてるわね」
「珍しいのか」
「そうね。この森に住んでる者の中で手懐けられたのはクレイだけよ。サンダーバードたちもそうだけど」

 ふうん。
 助けたのは偶然みたいなものだけど、懐かれてると言われるとちょっと嬉しい。

『『『グワッグワッ』』』

 害虫の撲滅を完了させたブラックダックたちが戻ってくる。

 俺は何となく先頭にいるやつの頭を撫でた。

「よーしよし。よくやったなー」

 ほうほう。スピカとはまた違った感触だが、なかなかの手触りだ。

『『『……!』』』
「ん? どうしたお前ら目を輝かせて――うわぁああああああああ!?」

 ブラックダックたちがいきなり襲い掛かってきた。

 襲い掛かってきたというか、俺の手目がけて殺到してきた。
 自分も撫でろと言わんばかりに頭をこすりつけてくる。
 数が凄い! 何だこの状況!?

『『『グワッ』』』

 満足したようにブラックダックたちは拠点の隅へと去っていった。

「……本当に懐かれてるわね」
「そういう次元じゃないだろ、もう……」

 一瞬恐怖すら感じたからな。

「……」

 ちなみにミリルはちょっとうらやましそうにブラックダックたちを視線で追っていた。
 魔物と張り合ってどうする。

 ティアが感心したように言う。

「ブラックダックが人に向かっていくのなんて初めて見たわ。あの魔物、いつもは狩られてばかりだから」
「そうなのか」
「南に住んでる“赤狼せきろう族”は、ホーンウルフを使って狩ったりしてるわね」

 こともなげに言うティア。

 そうかそうか、ホーンウルフで。
 ……んん?

「ティア、今ホーンウルフがどうとか言ったか?」
「言ったけど?」
「俺、あのカルガモ……じゃなくて、ブラックダックを襲おうとしてるホーンウルフを撃退したんだが」
「――そのホーンウルフ、殺してないでしょうね?」

 ティアが急に真顔になった。

 おい、やめろよそのリアクション。不安になるだろ……

「い、いや、殺してない。一匹気絶させただけだ」
「そう、なら問題ないんじゃない? 彼らも狩猟犬の一匹が気絶させられたくらいで報復なんてしないでしょう」

 あっさりとティアはそう言った。

 ティアがそう言うなら問題はないんだろうが……このあたり、そろそろ聞いておいたほうがいいかもしれない。

「ティア、この森について色々聞きたいんだが、いいか?」
「? 別にいいけど」

 この森に暮らす俺たち以外の存在。
 もめ事を起こさないためにも事前情報は持っておいたほうがいいだろう。

 隣人トラブルはごめんだ。
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