【7/25頃②巻発売!】私を追放したことを後悔してもらおう~父上は領地発展が私のポーションのお陰と知らないらしい~

ヒツキノドカ

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採用面接/ユノ2

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「み、見せてください」

「はい。ぜひ確認をお願いします!」

 出来上がったポーションを見る。

 品質は……問題なし。ものすごく良質、というわけではないにしろ、こだわりが強いとよく言われる私から見ても十分商品にできるレベルだ。

「素晴らしい速さですね……それでいて下処理も正確でした。もしかしてこのポーションを作ったことがあったのですか?」

 私が聞くと、ユノさんは首を横に振った。

「いえ、そういうわけでは。調合の速さに関しては……前職が関係していまして」

「前職?」

 気になったので詳しく説明してもらう。

「僕が――失礼しました、自分が以前働いていた工房はとにかく人が少なく……それでいて工房長が利益のために無茶な依頼ばかり受けてくるせいで、どうしてもスピードを磨かざるをえなかったのです」

「ああ……」

 他の工房との競争の一貫で、大量の発注や納期の短い依頼をたくさん受注していた、ということだろう。そのしわ寄せが調合の現場に降り注いだと。

「一番酷い時期は一日千本近いポーションを調合していた時期もありました。広い工房には何人もの同僚が気絶して転がり、そんな中自分も意識をもうろうとさせながら必死に調合を繰り返すのです。残業は月三百時間、睡眠がとれるのは五日に一日……ふふ、あれを考えればあの工房は潰れてよかったとさえ……いえ、これは失言でした……ふふふ……」

「そ、そうですか」

 遠い目をして語るユノさん。

 これは壮絶な労働環境を経験していそうだ。

「……健康は問題ありませんか?」

「はい。持病はありませんし、長時間労働に耐えられる体力もあります」

 単純に心配して聞いただけなのだけれど、面接の一貫だととらえられた気がする。

「そんな経験があれば、どの工房でも即戦力だと思いますが……どうしてうちを希望してくださったんですか?」

 聞くと、ユノさんはこんなことを言った。

「過酷な環境で長く働いてきましたが、自分はそれでも構いません。ただ、意味があることをしたいのです。先のない工房を無理に生きながらえさせるのではなく、人の役に立つことがしたい……『緑の薬師』では、魔物除けのような特別なポーションを作っていらっしゃると聞きました。貴重なポーションですから、作り手も少ないと予想します。自分の生産力で、その貴重なポーションを少しでも多くの人に届ける手伝いがしたいのです」

 なるほど。

 いい動機だと思う。
 ランドとルークに視線をやるものの、二人とも特に質問はなさそうだ。

「ありがとうございます、最後に何か質問はありますか?」

「いえ、ありません」

「では、これで面接を終わります。結果は学院の事務局を通じてお伝えしますので、それまでお待ちください」

「はい!」

 その後は形式的な挨拶を交わし、ユノさんは退室した。

 ルークが尋ねてくる。

「アリシア、もしかして一人決まった?」

「はい」

 人格、さらには調合のスピード。どちらも素晴らしい。あんな人材逃すわけにはいかない。

 ……福利厚生はしっかり整えよう。
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