【7/25頃②巻発売!】私を追放したことを後悔してもらおう~父上は領地発展が私のポーションのお陰と知らないらしい~

ヒツキノドカ

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ポイズンワイバーン対策のポーションを作ろう!2

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『ピギュアアアアアアアアアア! オギャァアアアアアアアアアア!』

 ズガドドドドドドド!!!

「……これも駄目ですか」

 とんでもない音を立ててガラス管の中で猛り狂う粘性ゴーレムを見ながら呟く。

 ポイズンワイバーン特有の臓器『製毒臓』の特徴を模倣させているこのゴーレムが暴れ回っているということは、試したポーションが逆効果だったことを示している。

「ここ数日で色々と試しましたが、成功の兆しすらありませんね。先生が現実的ではないと言い切っただけのことはあります。他のアプローチもどんどん試していかないと」

「アリシアよ。もうあきらめた方がいいのではないか?」

「何を言うんですかランド。新しいポーション作成には回り道がつきものですよ。ここからが本番です」

 ここ数日で駆除ポーション関連の知識も溜まってきた。巻き返していこう。

「み、三日で三百五十二種類……記録と分析、仮説、計画しながらこれって、意味がわからない……! 前職とはまた違った方向性の疲労が……!」

「頭から煙が出る……」

 ちなみにユノとスピラの二人は休憩中だ。ユノは調合台に、スピラはここ数日で愛車と化した荷車にそれぞれ突っ伏している。

 休憩がてら今後のことを話しておこう。

「二人とも、少しいいですか? そのままでいいので聞いてください」

「は、はい?」

「何でしょうかアリシア様」

「今日まで色々と試してきましたが、流通量の多い素材だけでは製毒臓を無毒化するポーションを作るのは難しそうです。よってここからは稀少性の高い素材も使っていかなくてはならないのですが、残念ながら学院の倉庫や街の素材店にあるぶんではまるで足りません。そもそも置いていないものもあります」

「学院にも業者の方にも、これ以上無理を言うのははばかられます……今でもすでに私が調合素材を求めに行くと『お前どんだけ素材使うんだよ!? 百人がかりでポーションの大量生産でもしてるのか!?』と悲鳴が上がるほどですから……」

 スピラが複雑そうに言う。素材調達を一手に引き受ける彼女には思わぬ苦労をかけているのかもしれない。
 まあ、どのみち稀少素材を大量に集めるのは無理だ。

「というわけで、稀少素材を安価な素材で代用します」

「そんなことができるんですか?」

「できます。ですが工夫が必要になります。二人とも、私がやった講演には参加していましたか?」

 私が聞くと、ユノさんとスピラさんは頷く。それなら説明の手間が省ける。

「おさらいも兼ねて簡単に話しますが、たいていの調合素材には複数の魔力波長が流れています。普通に【調合】スキルを使うと、その中でももっとも強い魔力波長がポーションの素材として使われます。しかし【調合】スキルをコントロールすることで、弱い魔力波長を意図的に拾い上げることができます」

 私が言いたいことを理解したのか、ユノさんが女の子顔負けの可愛らしい顔を青ざめさせた。
 スピラさんは真剣な表情で私の話を聞いている。スピラさんはまだわかっていなさそうな気がする。

「あの、アリシア様。それはつまり……僕たちにもそれをしろと? 稀少素材の魔力波長を持つ安価な素材を使って……?」

「その通りです」

「え」

 ユノさんの確認に対して頷くと、スピラさんも遅れて表情を引きつらせた。

「あ、アリシア様! さすがにそれは無理があるかと! 講義を後ろで聞いていた熟練の教師たちも呆気に取られていたような技術ですよ!?」

「もちろんお二人に任せる素材は比較的処理が簡単なものに絞ります。いくらお目当ての魔力波長を含んでいても、それが弱すぎると拾い上げるのは難しいですから」

「しかし……!」

「あの技術が驚かれたのは、そもそも練習したことのある人が少ないからだと私は思っています。効率的な練習方法もしっかり教えます。心配いりません。うちで働いてくれている調合師の子は十二歳ですが、しっかりこれをマスターしています」

「「十二歳の子が!?」」

 言うまでもないがレンのことだ。本人は疲れるからやりたくない、と言っているけれど、十歳の頃からしっかり習得している。

「ど、どのように練習すればいいのですか?」

 スピラさんの言葉に私は用意しておいたポーションを取り出した。

「魔力感知ポーションを使います。二人とも、飲んでみてください」

 私が渡した『魔力感知ポーションⅢ』をそれぞれ飲む二人。効き目を抑えているのは強力なものを飲むと初心者には危ないからだ。

「なんだか視界が……」

「妙な色が見えますね。これは……?」

「そのまま調合素材を見てください」

 試しに近くにあった癒し草、キリハキダケを見せてみる。

「癒し草のほうはピンク色の流れが……しかしキリハキダケには複数の色が混ざり合って見えます」

「これが魔力波長ということですか? 目で見えるなんて!」

 驚きつつ、色んな素材を眺める二人。しかしすぐにふらふらと目を回してその場に座り込んでしまう。

「き、気持ち悪い……!?」

「目が回ります……!」

「魔力の流れは常に揺らいでいますからね……船酔いのような症状が出ますが、そのうち慣れるので安心してください」

 さて、説明の続きだ。

「この状態で【調合】をすると、魔力の流れがどう変化するのかが見えます。見えただけではどうしようもありませんが、【調合】スキルをどう使えばどう魔力波長が変化するのか観察できます。それを手がかりに【調合】スキルのコントロール方法を覚えてください。この感覚には個人差があるので、地道に繰り返すしかありません」

「……地道に繰り返せば、アリシア様と同じことができるようになりますか?」

 スピラさんが真剣な表情で聞いてくる。

「はい、できます。お二人なら間違いなく」

「――わかりました。頑張ります!」

「僕も必ずマスターしてみせます」

 頼もしい。……二人とも魔力波長酔いで顔は真っ青だったけれど。

 ひとまず今日の作業はこれで終了だ。
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