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エルゴ村2
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アルスとブレンダと呼ばれていた男女がこっちに歩いてくる。
「騒ぎの中で聞こえたけど、今査定されているルビーワイバーンはそちらの黒髪の彼が倒したんだって? ロナ、仕留めたのは君じゃないのかい?」
金髪のイケメン、アルスがロナに問いかける。
「それは……その、すみません、違います」
「そうか……仕方ないね。ルビーワイバーンの素材は惜しいけど、ギルドが買い取るなら、後でギルドから買い取ればいいだけの話だし」
俯いて、震えながら告げるロナに対し、残念そうな表情で言うアルス。
それからアルスは俺の方を向いた。
「ところで君は? どうしてロナと一緒にいるんだい?」
「俺はハヤミケントだ。森でロナがルビーワイバーンに殺されそうになってたから助けた。それで、この村まで案内してもらったんだ」
「ハヤミケントか……変わった名前だね」
アルスが首を傾げる。やっぱり雰囲気違うよなあ、この世界の名前と。
せめて俺も今後はケントと名乗ろうか。
「そうか。僕の仲間が世話になったね。少ないけれどこれはお礼だ。受け取ってくれ」
アルスはそう言ってから、懐から取り出した金色の硬貨を数枚俺に差し出してくる。それの価値はわからないが、硬貨の輝き具合からして、言葉通り少額ではないような気がする。
「……」
「どうしたんだい、こちらをじっと見て。僕の顔に何かついているかい?」
困ったような表情を浮かべるアルス。
表面上、アルスは義理堅い仲間想いの青年に見える。
けれど、本当に仲間想いならロナを一人で森に行かせたりするだろうか? どうも違和感が残る。
俺は硬貨を受け取らず、代わりにアルスへと質問した。
「アルス……でいいんだよな。お前、その子の仲間なんだよな? どうしてそんな小さい女の子を一人で危険な森に行かせたりしたんだ?」
この世界の常識なんて知らないが、少なくともこの点はおかしいと思う。
アルスは何を言っているんだとばかりに首を傾げた。
「適材適所さ。ロナは虎人族だよ? 強いし頑丈だ。だから魔物の狩りを任せた。何か不思議なことがあるかな?」
「ロナはルビーワイバーンに食われて死にかけたんだぞ」
「冒険者は命がけの仕事だよ。リスクを負うのは当然のことだ」
「……それでも、まだ子供だろう」
「仲間をどう扱うかは僕の裁量次第だよ。君の価値観を押し付けられても困る。単独でエルゴの森に向かったのはロナも納得したことだ。そうだろう、ロナ?」
「……はい。私、自ら望んで、森に入りました」
力なく頷くロナ。
本人がそう言うなら、俺がこれ以上口出しできることじゃないが……
「それじゃあ、僕たちは行くよ」
そう言い残して、アルスはロナともう一人の仲間の女を連れて去っていく。
「……」
去り際、ロナは何かを訴えかけるような目で俺を見ていた。
うーん……やっぱり気になる。
「……」
「む、どうしたんじゃケント。付与の書など出して」
「まあ、念のためっていうか」
さっき【スプリング】と【ストレングス】を探した時に目に入った魔術の一つを、去っていくロナの背中に向かって発動する。ロナは少し違和感を覚えたようだったが、今回の魔術は光ったりしないようで、特に気付かれることはなかった。
何事もなければいいが。
しばらくその場で待つと、ルビーワイバーンの査定を終えたギルド職員がやってきた。買い取り額は“一千二百万ユール”になったらしいが、そう言われてもよくわからんって。
ギルド職員いわくユールはこの大陸共通の通貨単位であり、この国では成人一人が一年に稼ぐ額が、おおよそ二百~三百万ユールなんだとか。もっとも稼ぐ地域にもよるから(都会だと物価に比例して賃金も高いらしい)一概にも言えないようだが。
要するに、ルビーワイバーンを売ったら数年遊んで暮らせる額になるということだ。
「ただ、うちのギルドですと今日中には全額用意するのが難しく……明日、もう一度来ていただけますか? 査定の証明書だけは先に発行しますので」
申し訳なさそうに言うギルド職員。
「あー……明日もう一度来るのは構わないんですが、実は今、手持ちがなくて。少しでも先に売却金をいただくことはできませんか?」
「わかりました。それでは、すぐに用意できる額ですと……二割ほど、前払いする形でいかがでしょう?」
「それでお願いします」
そんなやり取りの末、俺は二百四十万ユールに加えて、残り九百六十万ユールと交換できる査定証明書を手に入れたのだった。
「騒ぎの中で聞こえたけど、今査定されているルビーワイバーンはそちらの黒髪の彼が倒したんだって? ロナ、仕留めたのは君じゃないのかい?」
金髪のイケメン、アルスがロナに問いかける。
「それは……その、すみません、違います」
「そうか……仕方ないね。ルビーワイバーンの素材は惜しいけど、ギルドが買い取るなら、後でギルドから買い取ればいいだけの話だし」
俯いて、震えながら告げるロナに対し、残念そうな表情で言うアルス。
それからアルスは俺の方を向いた。
「ところで君は? どうしてロナと一緒にいるんだい?」
「俺はハヤミケントだ。森でロナがルビーワイバーンに殺されそうになってたから助けた。それで、この村まで案内してもらったんだ」
「ハヤミケントか……変わった名前だね」
アルスが首を傾げる。やっぱり雰囲気違うよなあ、この世界の名前と。
せめて俺も今後はケントと名乗ろうか。
「そうか。僕の仲間が世話になったね。少ないけれどこれはお礼だ。受け取ってくれ」
アルスはそう言ってから、懐から取り出した金色の硬貨を数枚俺に差し出してくる。それの価値はわからないが、硬貨の輝き具合からして、言葉通り少額ではないような気がする。
「……」
「どうしたんだい、こちらをじっと見て。僕の顔に何かついているかい?」
困ったような表情を浮かべるアルス。
表面上、アルスは義理堅い仲間想いの青年に見える。
けれど、本当に仲間想いならロナを一人で森に行かせたりするだろうか? どうも違和感が残る。
俺は硬貨を受け取らず、代わりにアルスへと質問した。
「アルス……でいいんだよな。お前、その子の仲間なんだよな? どうしてそんな小さい女の子を一人で危険な森に行かせたりしたんだ?」
この世界の常識なんて知らないが、少なくともこの点はおかしいと思う。
アルスは何を言っているんだとばかりに首を傾げた。
「適材適所さ。ロナは虎人族だよ? 強いし頑丈だ。だから魔物の狩りを任せた。何か不思議なことがあるかな?」
「ロナはルビーワイバーンに食われて死にかけたんだぞ」
「冒険者は命がけの仕事だよ。リスクを負うのは当然のことだ」
「……それでも、まだ子供だろう」
「仲間をどう扱うかは僕の裁量次第だよ。君の価値観を押し付けられても困る。単独でエルゴの森に向かったのはロナも納得したことだ。そうだろう、ロナ?」
「……はい。私、自ら望んで、森に入りました」
力なく頷くロナ。
本人がそう言うなら、俺がこれ以上口出しできることじゃないが……
「それじゃあ、僕たちは行くよ」
そう言い残して、アルスはロナともう一人の仲間の女を連れて去っていく。
「……」
去り際、ロナは何かを訴えかけるような目で俺を見ていた。
うーん……やっぱり気になる。
「……」
「む、どうしたんじゃケント。付与の書など出して」
「まあ、念のためっていうか」
さっき【スプリング】と【ストレングス】を探した時に目に入った魔術の一つを、去っていくロナの背中に向かって発動する。ロナは少し違和感を覚えたようだったが、今回の魔術は光ったりしないようで、特に気付かれることはなかった。
何事もなければいいが。
しばらくその場で待つと、ルビーワイバーンの査定を終えたギルド職員がやってきた。買い取り額は“一千二百万ユール”になったらしいが、そう言われてもよくわからんって。
ギルド職員いわくユールはこの大陸共通の通貨単位であり、この国では成人一人が一年に稼ぐ額が、おおよそ二百~三百万ユールなんだとか。もっとも稼ぐ地域にもよるから(都会だと物価に比例して賃金も高いらしい)一概にも言えないようだが。
要するに、ルビーワイバーンを売ったら数年遊んで暮らせる額になるということだ。
「ただ、うちのギルドですと今日中には全額用意するのが難しく……明日、もう一度来ていただけますか? 査定の証明書だけは先に発行しますので」
申し訳なさそうに言うギルド職員。
「あー……明日もう一度来るのは構わないんですが、実は今、手持ちがなくて。少しでも先に売却金をいただくことはできませんか?」
「わかりました。それでは、すぐに用意できる額ですと……二割ほど、前払いする形でいかがでしょう?」
「それでお願いします」
そんなやり取りの末、俺は二百四十万ユールに加えて、残り九百六十万ユールと交換できる査定証明書を手に入れたのだった。
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