神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

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第3章 弟子の魔法使いは優等生達を欺き凌駕する(何気なく)。

第24話 真に欺いた者とは 暴力編(弟子は弱い者イジメが嫌いだった)。

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(大丈夫っ……バレてない。まだ、バレてないっ!)

 その者は自分に言い聞かせるように、平静を装っていた。

「ぎゃぁぁぁあああああ!?」

 最初に犠牲になったのは、ターゲットの龍崎を押さえていた男子。

 火系統・上級位魔法『豪炎弾ファイア・キャノン

 一度距離を取っていたが、牽制のつもりかそれとも恐怖からか、男子は火系統の上級位の魔法を発動した。
 顔を覆うくらいのサイズの砲弾のような炎弾。相当な魔力と速度も早く、直撃すれば軽い火傷では済まない筈。やり過ぎではないかと、その者も少なからず危惧していたが……。

「いったい、何がしたかったんだ?」

 その僅かなばかりの心配を、彼は得体の知れない恐怖で塗り潰した。

 迫ってきた炎弾を、彼は片手で弾いて難なく終わらせた。
 さらに軽いステップで男子へ急接近。放つ際に向けていた手首を掴むと……躊躇いなく砕いて曲げた。

「この程度の強化じゃ、無いのと対して変わらないぞ?」
「グゥアァアァァァア!? は、離してっ! 離して、くれっ!! 頼むタノ、うっ!」

 手首が別方向へ曲がり過ぎた所為で、男子が暴れることが出来ない。
 手首から走る激痛と彼への恐怖から、男子の戦意は一瞬のうちに砕け散り、腰も抜けているようでプルプル震えていた。

「秋斗を離せよッ!」

 警戒していたが、ついに我慢が出来なくなって、出口を塞いでいた男子が駆け出した。
 強化して勢いよく加速している。喧嘩慣れしているのか、男の頭を狙うように回し蹴りをかましたが。

「なんだ? やっと参戦か? その割には軽い蹴りだ」

 後ろから首を狙った一撃だったが、龍崎はビクともしない。
 つまらなそうに無表情で背後の男へ小首を傾げた。

「っ……この! バケモンがっ!」
「よせ直也っ! 不用意に突っ込むな!」

 そこでやっと金剛が叫ぶ。事態の急展開を考えると遅過ぎるくらいだ。

「ヒッ! やめっ……」
「秋斗!? うっ!」

 今度は殴り掛かろうとした直也に、龍崎は掴んでいた秋斗を盾にするように、直也へ向かって放る。
 秋斗は恐怖でなすがままに飛ばされて、直也が攻撃の直後だった為に、回避が間に合わずそのまま受け止めてしまう。

「ガッ!?」
「ギャァァァァ!?」

 その二人をまとめて串刺しにするような、槍のような鋭い蹴りが放たれた。
 実際に突き刺さっている訳ではないが、内臓を刺激するような強い衝撃が二人いっぺんに届いた。

(つ、強い……! 注意されてたけど、まさかここまでの強さを!)

 激しい衝撃と内部を刺激されて、男たちは嘔吐。それだけでは耐え切れず、気を失ってしまう。

「……」
「っ!」

 そんな二人を龍崎は見向きもしない。
 ただ次の標的である金剛を見据える。
 向けられるプレッシャーと倒れ伏せる二人の姿に、この中で一番戦い慣れてる筈の金剛ですら、緊張の面持ちで土系統の魔法を発動。

 上級位魔法『岩土の大槌ビックマット・ハンマー

 武器魔法で呼び出した巨大な大槌を構える。

「……」

 龍崎も上着の懐から、警棒のような金属の棒を取り出す。片手で構えてもう片方の手で手招きするように金剛を挑発する。

「っ……いいだろう。行くぞ!」

 その挑発を金剛は真正面から受けて立つ。
 強化で素早くなった身体能力を駆使して、振りかぶった大槌を龍崎へ叩き込む。

「……意外と速いな」

 その叩き込みを、龍崎は風のように流れるように躱す。
 感心したように呟くと、一歩前進。
 踏み込んで来た相手の間合い深くへ侵入した。

「っ!」

 ヤバいと野生の勘が騒いだか。
 間合いよりも内側へ侵入した龍崎に、一瞬で強張る金剛。
 何を感じたか超反応で顔を強引に逸らすと、そこを龍崎の金属棒の先端が通過。……頬を掠めた。

「へぇ、良い反応と反射神経だ」

 また感心する。今度のは少しだけ大きめ。
 だけどすぐ表情から消える。突き出した棒と同時に行った足払いで、金剛の丸太のような片脚。その関節部、膝を屈伸運動のように折る。

「ガゥッ!?」

 体をコマのように回転。その勢いの横薙ぎで、膝を折ったことで下がった金剛の頭を横から叩き込んだ。

「っ……!」

 しかし、金剛はそれだけでは倒れない。
 脳震盪は確実に起こしただろうが、膝を崩しているだけ。

「やはり頑丈だな。……だけど」

 龍崎は躊躇わない。
 本当に貧弱で欠陥品な普通科の生徒なのかと、疑いたくなるくらい容赦がない。

「俺ほどじゃないか」
「グッ……!?」

 今度は上から叩き込んだ。物か何かを叩き壊すように。 
 絶対人にやってはいけない威力で、龍崎は平然とやってみせた。

(これじゃ大人と子供の対決にしか見えない! あの金剛が手も足もでないなんて……!)

 流石の金剛が意識を保つのは不可能だった。
 崩れるように倒れ伏せたところで、様子見だった彼女もいよいよ覚悟を決めねばならなくなっていた。




「っ!」

 全速力で宝箱まで駆け出した。
 霧島と自分をガードする男子が驚く中、彼女は迷うことなく宝箱へ手を伸ばして───掴み取った。

「春野さん、何を!?」
「っ……春野! アンタ!」
「これさえ……あれば!」

 迷っている暇はない。龍崎がこちらへ目標を移す前に脱出しなくては。

(彼の暴行動画は撮れた! 宝箱も手に入れた! あとは……!)

「“惑わすは、我が誘惑の瞳”……『誘惑の魔眼チャーム・アイ』」

 自身の瞳に宿っている魔眼を発動する。
 それはサキュバスのように、世界中の男を魅了してしまう禁忌の魔眼の一つ。

 アイドルである彼女が不運にも宿してしまった。大騒ぎものの爆弾。
 自身どころかチームの破滅すらあり得る為に一部の者しか知らない。禁断の秘密である。

(っ……嫌いで嫌いで仕方ないけど! があれば……!)

 事実上、『第二姫門学園』を追放された理由の一つ。
 出来ることなら使わずに済ませたかったが、龍崎の予想以上の実力に春野も封じ手を解放した。

「これは……」

 戦闘を終えた龍崎が異変に気付いて、春野へ目を移した直後。
 倒された筈の男子二人。それにたった今倒した金剛からピンク色の魔力オーラを発し始める。そして……。

「ぐ、まだだ……!」

 意識を奪った筈の金剛がノロノロと立ち上がる。男子二人も呻きながらゆっくりと立ち上がって、虚な瞳で彼を睨んだ。
 それだけじゃない。戸惑っていた残りの男子も瞳が虚になる。ピンクの魔力オーラを纏って、体ごと視線を龍崎へ移していた。

「幻惑、いや魅了系の魔眼か。『色魔』の魔力なんて珍しい」
「へぇ知ってるんだ? 流石は筆記試験の上位者だねぇ」
「いや、驚きの方が勝ってる。その魔眼や魔力、よく仕事やバレなかったな」
「……っ」

 冷静に分析しつつも素直に驚いたと告げる。
 色魔の魔力は魔眼を宿したことで、彼女の中に生成された派生属性の一種。
 魔眼もそうだが、こちらも存在が明るみになれば、彼女の立場からしたら極めて致命的だが……。

「……違うか。既にバレたのか。だからお前は焦って無謀な……」
「この状況でも、よく口が回るねぇー!」

 動揺を隠すように支配済みの男子たちの感情を操作。
 彼女に対する魅了を増幅。さらに龍崎に対する憎しみを増幅させて、彼への敵意をより高めた。

「さぁみんな───やって?」

 可愛らしい声音だが、浮かべている笑みには闇があった。
 告げると彼に背を向けて出口へ走った。

「待て! っ……」

 春野へ駆け出そうとした龍崎。
 しかし、立ちはだかる彼女に魅了された鬼苑の手下だった男子たち。
 迷いもないのか、強烈な殺気が放ち向かって来た。

「ウォォォォォ!」
「ふっ!」

 肉体強化のアップしている。速度も上がった拳や蹴りを繰り出して来る。
 龍崎も冷静に受け流して蹴りや手刀を浴びせているが、耐久力もアップしたか、食らい付いて来る。

「行かせねぇ……行かせねぇぞォ!」
「フンッ!」

 伊達に不良グループではないようだ。
 格闘では勝てないと理解して、男子の一人は龍崎にしがみ付いて足止めを。
 金剛は隙を狙って背後からハンマーで龍崎に襲い掛かる。

「邪魔だ」

 腰にしがみ付く男を払い金剛のハンマーを躱す。

「止まれ! 『穿つ火炎の槍ファイア・スピア』ッ!」

 出口へと消えた春野を追いかけようとしたが、また別の男が立ち塞がり中級位魔法の火の槍を飛ばして来る。
 普通に当てても効果は薄いと考えたか、足元を狙って彼の足をとにかく止める。
 鬱陶しそうに龍崎は顔を歪めている。すると唯一操られていない彼女が動いた。

「龍崎ッ! ここはアイツはアタシに任せて! 強いならアンタはとにかくコイツらを黙らせて!」

 そう言って霧島も出口へ駆け出す。
 聞いていた他の男子が彼女を止めようとするが、龍崎が先回りして横蹴りで吹き飛ばす。

「……ああ、分かった」

 今度は彼が出口を塞ぐように彼らに立ち塞がる。
 持っていた金属棒が二本に折って左右で構えた。

「調子に乗るなよ欠陥品が!」
「行かせねぇ! 絶対にッ!」
「止めてみせる!」

 三人のオーラがより彼らを惑わせる。
 殺意を増大させると、一斉に襲い掛かろうとしたが。

「……」

 標的は一瞬で見失った。
 ほんの瞬きの間に。


「ど、何処に!」
「こっちだ」
「……い、いつのまに」

 慌てて彼を探そうとした金剛だったが、意外にも彼はすぐ見つかる。
 いったいいつ移動したのか、出口を見ていた彼らの背後で、二本の棒を構えて静かに立っていた。

「ミヤモト流……二刀剣術を見せてやろう」

 瞬間、龍崎刃は風になった。
 静かで透き通るような微風となって、隠し部屋を満たした。





 しかし次の瞬間、隠し部屋の入り口が突然爆発した。
 出入り口が塞がれてしまった。


*作者コメント*
 久々に魔法登場! バトルもですが。
 忘れそうだけど、この物語は一応魔法世界です!

 展開はほぼ刃無双です。あんまり接戦になりません。
 彼の魔法レベルは低いですが、それ以上に戦闘レベルが鬼級なので、一般の魔法学生じゃ相手にもなりません。ぶっちゃけると超手加減してます。

 ネタバレになるので、戦闘描写に関するコメントは控えますが、現在の彼の戦闘力は異世界ならSランクよりのAランクかBランク(チート能力の暴走やチートアイテムを使えばSSランクに到達して越える可能性もあります)。

 元の世界なら【魔法師】、相性次第なら【魔導師】にも勝てるくらいには、既に強いです。
 単純に異世界のレベルがおかしいだけ(笑)。
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