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第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らして学園トップ共を蹴落とす)
第34話 探索前はやっぱり買い物でしょう(弟子は修羅場?に巻き込まれた)。
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『特別試験』とは年に二回、夏と冬の時期に行われる魔法試験。
生徒たちのランキングにも大きく影響しており、魔法科の生徒全員が気にしている大事なイベント。
唯一ランキングを全く気にしない普通科の参加者だけは極めて少数。場違いで居るのは一発逆転を狙う者や本当の変わり者か、望んでいないのになくなく受けている者。つまり……。
「俺だよ」
「ブツブツ言わずに準備をしたらどうだ? あと三十分だぞ?」
冷めたような桜香さんの声が聞こえるぅー。
不思議だなぁ。君の為に参加している筈なのに、対応が塩が多いぞぉー?
ちなみにバスで隣だった春野は元クラスメイトたちとチームを組んでおり、そちらへ合流して行ったからこの場にはいない。
「準備時間は一時間しかないんだから、無駄口せず急いで」
「はぁ、そうは言うが……」
いきなり過ぎて話が見えないと思わないか?
と言うわけで到着した辺りから話を少し戻そう。
目的地の迷宮洞窟。何処かの遊園地やドームの何倍はある土地で、見た目は外国の巨大なお城とビルが合体したような建物。
手続きさえしてあればバスに乗ったまま敷地内まで入れる。建物の近くの専用の駐車場からそれぞれ降りると、一度集まって三年の先生の説明を聞いた。主に内容は試験と注意事項だ。
試験の形式は『点数戦略』。
ダンジョン内部でポイントを稼ぎながら一週間過ごす。最初に二百ポイントが得られる。
ポイントの獲得方法は魔物を倒したり、出されたミッションをクリアする毎に得られる。生徒同士の戦闘も許されているが、それは特定の戦闘エリアのみで、エリア以外の場所での戦闘は条件が満たされない限り反則となり減点、悪質な場合は失格となる。
持ち物に関しての制限は原則ないが、使用制限、使用禁止に該当する場合はチェック対象となり、制限が掛かるか使用が禁止となる。
魔道具は学園で登録されている物は許されるが、未登録の場合はチェック対象となる。また未登録の魔道具や銃火器及び戦略兵器の使用は禁止である。薬、毒物などは即死や後遺症にならない物に限り使用が許される。
参加者は全員チーム形式。一人から五人まで可能で、人数が多いほど得られるポイントが分けられるが、一人の場合は失格の時点で終了となり負担も大きい。
チーム同士の共闘は認められているが、獲得したポイントの分配は話し合いか、最終的に監視者の判断で決まる(ミッションで決まっている場合はそちらに準ずる)。
ダンジョン内での移動の制限はないが、危険エリアとなっている場所の探索は推奨されず全て自己責任。
学園側が設定した戦闘エリアでは生徒同士の戦闘が認められているが、休憩エリア、補給エリアなどでは戦闘の一切を禁じる(休憩や補給の場合はポイントの消費があるので注意)。
六日目と最終日の七日目は獲得ポイントが二倍になり、戦闘エリアも休憩、補給を除いた全エリアとなる。
怪我などによる探索不能、もしくは気絶している場合は監視役の教員に入り口まで回収される。治療を受けて探索も再開出来るが、ポイントは半分となる。保有ポイントがゼロになった時点で失格。
成績は保有ポイントの合計とミッションのクリア数、最後に討伐した魔物のランクと数によって決定する。学生同士の戦闘は評価対象外。ただし、学園が用意した生徒を倒した場合は、別で報酬が与えられる。討伐して手に入れた素材やアイテムは、換金及び受け取り可能。
つまり探索しながら魔物を倒してお題もクリア。狙われても負傷なく勝って休憩して先生たちの面倒にならないよう注意。最後の辺りでポイントを稼ぎまくって乗り切れば……ほぼ安泰という事だ。
「用意ならもうしてあるぞ?」
俺と桜香は他の生徒たちと一緒に、いくつもある施設の売店へ来ている。ほぼ一年全員でも余裕の広さと品揃えである。
一週間でも流石に持って来る量は多い者が多数。バスや配達では大変なので売店の利用を許可されているが、全て個人の実費。こういった場所の商品は基本高いので、俺は自前である程度用意して、食材関係をこちらで買う事にしたのだが……。
「手提げカバンだけしか見えないけど」
肩にかける程度の普通の鞄(魔道具の鞄も存在する)だが、一応頑丈な素材で出来ている。別に異世界の素材とかではなく、中身も普通である。とても一週間分の食材や生活用品が入るとは思えないので、疑わしそうな桜香の視線も納得だ。チームで上手く分けるようだが、それでも一人分は結構ある。
「それだけでいいわけ?」
「あとは中で取るよ。一週間分でも一人じゃ厳しい」
思ったよりも短いが、普通に量を考えると最低でもかなり荷物になる。
一人で動く事に決めた俺の頭には、最低限以下の荷物が手提げ鞄で既に収まっていた。
格好は学生服であるが、学園のは動き易く色々と頑丈な作りになっているので、むしろこちらの方はいいと俺と同じように使っている者も少なくない。桜香も制服である(下はスカートだけど絶対になんか大丈夫なのを履いてる)。
「どうしてチーム申請を拒否した? 私はてっきり一緒のチームに入るのかと思っていたが」
「手伝う方法は何もチームに入る事だけじゃない。俺の場合、裏方のほうが性に合ってるし、ダンジョン内じゃ別行動にしよう」
なんて半分本当だが、もう半分は嘘である。
春野の一件で組んだ鬼苑との協定があるので、同じチームだと嫌でも関わってしまう。もう十分関わってはいるが、サシの勝負に割り込むような空気の読めないキャラのつもりはない。
まぁ、姑息過ぎる搦手なら俺が割り込む余地は結構ありそうだが。
「自分たちの問題だ。手を貸すとは言ったが、最終的なケジメはお前でつけろ」
それっぽく言っているが、要するにメンドクサイから後は任せます。いや、面倒臭いので大事なところは特にヨ・ロ・シ・ク! みたいな感じである。完全に他人事だー。
「わ、分かってる! それくらい……ちゃんと自分で決着は付けるさ」
「ならいい」
分かっちゃったかー。けどこれで桜香に引っ付いている必要がなくなった。
予想外なルールもあるし、様子見という事で初日から二、三日は落ち着きたいですねぇー。
「ジ~ン」
「ミコか」
「四条……尊」
なんてところで……背後から猫みたいなアイツの声がした。
肩を組んでミコが悲しげな顔で覗いてきた。なんで暗いの?
「どうして白坂なんかと~?」
「チームは一緒じゃねぇぞ?」
「組んでるって噂どころか、付き合ってるってどういうことだよ~?」
「付き合ってない」
変な噂が広がっている。鬼苑の仕業かと思ったが、俺の行動も原因しているらしいとマドカは苦言を漏らしていたが……。
「つ、付き合ってるわけないだろう!」
桜香さーん? そんな動揺していたら勘違いされるでしょー?
「白坂……テメェ」
ほら、ミコ君が深読みしちゃってるじゃん。
だが、公衆の面前。試験直前だし流石に落ち着かせるミコは、白坂に向かってハッキリと宣戦布告する。
「フン、お前とはこれまで色々とあったが、いい加減どっちがジンに相応しいか、この試験でハッキリさせないか?」
なんかイケメンがすっごいキメ顔でとんでもない事を言ってる。
「ジンは──オレのだ! 裏切り者のお前らなんかには絶対にやらねぇー!」
おかしい。ジンは男、ミコも男なのに、聞いていると昼ドラにしか思えない。
偶々近くで聞いていた女子たちがザワザワ。男子たちはギョッとした顔で俺たちを避けてる。……既にダメージがでけぇー。
「私だって負けない……」
ちょっと白坂さんー。なに対抗意識持ってんの?
「誰の挑戦だって逃げない。受けて立つぞ、四条尊!」
お前が戦わないといけないのは鬼苑亜久津でしょうが。なんで修羅場みたいになってる。
「はぁ、頭いてぇー」
不安しか感じない二人のバカみたいな会話。とりあえず効き目の良い頭痛薬も追加で買っておこうかと、二人を置いて俺はドラックストアへ立ち寄ることにした。
「なんだか盛り上がってるなぁ、藤原よ」
「そうみたいですね。鬼苑君」
ちょうど少し離れたテーブル席で、二人の一年トップが対話を楽しむ。
お互いに背後に強そうな配下の生徒を並べながら、余裕な顔でふと彼らの光景を眺めていた。
「おまえも仕掛けるのか? 龍崎によ」
「そうですね。それも面白そうです」
他愛もない会話だが、どこか異様なプレッシャーが掛かる。
無関係の者どころか関係者の部下たちも立ち去りたい気持ちである。唯一鬼苑の後ろに控える双子の外国人だけは平気そうな顔で、気になるのか二人ではなく刃たちの方を見ていた。
「おまえも、ということはそちらも?」
「ああ、折角の追加ルールを利用しない手はない。そのついでに桜香の相手もするさ」
「相手をするのは、本当に白坂さんだけですか?」
その双子が見ている先を見れば違うと断言できる。それだけ彼女らの視線には、明確に彼を倒したいという闘争心が滲み出ているのだから。
「ああ、その辺りはおいおいな。おまえも狙ってるんじゃないのか?」
「ふふふ、さぁ、どうでしょうか」
正直なところ四条尊の相手で忙しくなりそうだが、彼らは親友同士。四条尊を追い詰められば必然的に彼が立ち塞がってくるのは時間の問題だ。ならいっそのこと……。
「なら、もう一度組んでみますか?」
「こっちは欠員がいるんだ。おまえの遊びに付き合っている暇はない」
「なるほど、それは残念」
あっさり突っ撥ねられたが、藤原は全く気にした様子はない。
残念と口では言っているが、鬼苑とのやり取りはただの確認程度。彼の意志が自分の予想と違っていた場合の保険でもあったが……。
(仮に私が彼を狙ってもこちらが彼に付く可能性は低いですね。なら鬼苑君たちのグループは後回し。先に……)
「彼女を……取るとしますか」
「……」
聞こえていたが、面倒だと鬼苑は何も聞き返さない。
短いようで長い準備タイムは終わって、いよいよダンジョン内部へ。
*作者コメント*
さむくなるとねむい。よるたいへん
久々に尊君が登場しました! わ、忘れてなんかありませんよ?
一応それっぽい試験内容にしましたが、ルールのところでおかしな点があるかもです。そこはご了承ください。
生徒たちのランキングにも大きく影響しており、魔法科の生徒全員が気にしている大事なイベント。
唯一ランキングを全く気にしない普通科の参加者だけは極めて少数。場違いで居るのは一発逆転を狙う者や本当の変わり者か、望んでいないのになくなく受けている者。つまり……。
「俺だよ」
「ブツブツ言わずに準備をしたらどうだ? あと三十分だぞ?」
冷めたような桜香さんの声が聞こえるぅー。
不思議だなぁ。君の為に参加している筈なのに、対応が塩が多いぞぉー?
ちなみにバスで隣だった春野は元クラスメイトたちとチームを組んでおり、そちらへ合流して行ったからこの場にはいない。
「準備時間は一時間しかないんだから、無駄口せず急いで」
「はぁ、そうは言うが……」
いきなり過ぎて話が見えないと思わないか?
と言うわけで到着した辺りから話を少し戻そう。
目的地の迷宮洞窟。何処かの遊園地やドームの何倍はある土地で、見た目は外国の巨大なお城とビルが合体したような建物。
手続きさえしてあればバスに乗ったまま敷地内まで入れる。建物の近くの専用の駐車場からそれぞれ降りると、一度集まって三年の先生の説明を聞いた。主に内容は試験と注意事項だ。
試験の形式は『点数戦略』。
ダンジョン内部でポイントを稼ぎながら一週間過ごす。最初に二百ポイントが得られる。
ポイントの獲得方法は魔物を倒したり、出されたミッションをクリアする毎に得られる。生徒同士の戦闘も許されているが、それは特定の戦闘エリアのみで、エリア以外の場所での戦闘は条件が満たされない限り反則となり減点、悪質な場合は失格となる。
持ち物に関しての制限は原則ないが、使用制限、使用禁止に該当する場合はチェック対象となり、制限が掛かるか使用が禁止となる。
魔道具は学園で登録されている物は許されるが、未登録の場合はチェック対象となる。また未登録の魔道具や銃火器及び戦略兵器の使用は禁止である。薬、毒物などは即死や後遺症にならない物に限り使用が許される。
参加者は全員チーム形式。一人から五人まで可能で、人数が多いほど得られるポイントが分けられるが、一人の場合は失格の時点で終了となり負担も大きい。
チーム同士の共闘は認められているが、獲得したポイントの分配は話し合いか、最終的に監視者の判断で決まる(ミッションで決まっている場合はそちらに準ずる)。
ダンジョン内での移動の制限はないが、危険エリアとなっている場所の探索は推奨されず全て自己責任。
学園側が設定した戦闘エリアでは生徒同士の戦闘が認められているが、休憩エリア、補給エリアなどでは戦闘の一切を禁じる(休憩や補給の場合はポイントの消費があるので注意)。
六日目と最終日の七日目は獲得ポイントが二倍になり、戦闘エリアも休憩、補給を除いた全エリアとなる。
怪我などによる探索不能、もしくは気絶している場合は監視役の教員に入り口まで回収される。治療を受けて探索も再開出来るが、ポイントは半分となる。保有ポイントがゼロになった時点で失格。
成績は保有ポイントの合計とミッションのクリア数、最後に討伐した魔物のランクと数によって決定する。学生同士の戦闘は評価対象外。ただし、学園が用意した生徒を倒した場合は、別で報酬が与えられる。討伐して手に入れた素材やアイテムは、換金及び受け取り可能。
つまり探索しながら魔物を倒してお題もクリア。狙われても負傷なく勝って休憩して先生たちの面倒にならないよう注意。最後の辺りでポイントを稼ぎまくって乗り切れば……ほぼ安泰という事だ。
「用意ならもうしてあるぞ?」
俺と桜香は他の生徒たちと一緒に、いくつもある施設の売店へ来ている。ほぼ一年全員でも余裕の広さと品揃えである。
一週間でも流石に持って来る量は多い者が多数。バスや配達では大変なので売店の利用を許可されているが、全て個人の実費。こういった場所の商品は基本高いので、俺は自前である程度用意して、食材関係をこちらで買う事にしたのだが……。
「手提げカバンだけしか見えないけど」
肩にかける程度の普通の鞄(魔道具の鞄も存在する)だが、一応頑丈な素材で出来ている。別に異世界の素材とかではなく、中身も普通である。とても一週間分の食材や生活用品が入るとは思えないので、疑わしそうな桜香の視線も納得だ。チームで上手く分けるようだが、それでも一人分は結構ある。
「それだけでいいわけ?」
「あとは中で取るよ。一週間分でも一人じゃ厳しい」
思ったよりも短いが、普通に量を考えると最低でもかなり荷物になる。
一人で動く事に決めた俺の頭には、最低限以下の荷物が手提げ鞄で既に収まっていた。
格好は学生服であるが、学園のは動き易く色々と頑丈な作りになっているので、むしろこちらの方はいいと俺と同じように使っている者も少なくない。桜香も制服である(下はスカートだけど絶対になんか大丈夫なのを履いてる)。
「どうしてチーム申請を拒否した? 私はてっきり一緒のチームに入るのかと思っていたが」
「手伝う方法は何もチームに入る事だけじゃない。俺の場合、裏方のほうが性に合ってるし、ダンジョン内じゃ別行動にしよう」
なんて半分本当だが、もう半分は嘘である。
春野の一件で組んだ鬼苑との協定があるので、同じチームだと嫌でも関わってしまう。もう十分関わってはいるが、サシの勝負に割り込むような空気の読めないキャラのつもりはない。
まぁ、姑息過ぎる搦手なら俺が割り込む余地は結構ありそうだが。
「自分たちの問題だ。手を貸すとは言ったが、最終的なケジメはお前でつけろ」
それっぽく言っているが、要するにメンドクサイから後は任せます。いや、面倒臭いので大事なところは特にヨ・ロ・シ・ク! みたいな感じである。完全に他人事だー。
「わ、分かってる! それくらい……ちゃんと自分で決着は付けるさ」
「ならいい」
分かっちゃったかー。けどこれで桜香に引っ付いている必要がなくなった。
予想外なルールもあるし、様子見という事で初日から二、三日は落ち着きたいですねぇー。
「ジ~ン」
「ミコか」
「四条……尊」
なんてところで……背後から猫みたいなアイツの声がした。
肩を組んでミコが悲しげな顔で覗いてきた。なんで暗いの?
「どうして白坂なんかと~?」
「チームは一緒じゃねぇぞ?」
「組んでるって噂どころか、付き合ってるってどういうことだよ~?」
「付き合ってない」
変な噂が広がっている。鬼苑の仕業かと思ったが、俺の行動も原因しているらしいとマドカは苦言を漏らしていたが……。
「つ、付き合ってるわけないだろう!」
桜香さーん? そんな動揺していたら勘違いされるでしょー?
「白坂……テメェ」
ほら、ミコ君が深読みしちゃってるじゃん。
だが、公衆の面前。試験直前だし流石に落ち着かせるミコは、白坂に向かってハッキリと宣戦布告する。
「フン、お前とはこれまで色々とあったが、いい加減どっちがジンに相応しいか、この試験でハッキリさせないか?」
なんかイケメンがすっごいキメ顔でとんでもない事を言ってる。
「ジンは──オレのだ! 裏切り者のお前らなんかには絶対にやらねぇー!」
おかしい。ジンは男、ミコも男なのに、聞いていると昼ドラにしか思えない。
偶々近くで聞いていた女子たちがザワザワ。男子たちはギョッとした顔で俺たちを避けてる。……既にダメージがでけぇー。
「私だって負けない……」
ちょっと白坂さんー。なに対抗意識持ってんの?
「誰の挑戦だって逃げない。受けて立つぞ、四条尊!」
お前が戦わないといけないのは鬼苑亜久津でしょうが。なんで修羅場みたいになってる。
「はぁ、頭いてぇー」
不安しか感じない二人のバカみたいな会話。とりあえず効き目の良い頭痛薬も追加で買っておこうかと、二人を置いて俺はドラックストアへ立ち寄ることにした。
「なんだか盛り上がってるなぁ、藤原よ」
「そうみたいですね。鬼苑君」
ちょうど少し離れたテーブル席で、二人の一年トップが対話を楽しむ。
お互いに背後に強そうな配下の生徒を並べながら、余裕な顔でふと彼らの光景を眺めていた。
「おまえも仕掛けるのか? 龍崎によ」
「そうですね。それも面白そうです」
他愛もない会話だが、どこか異様なプレッシャーが掛かる。
無関係の者どころか関係者の部下たちも立ち去りたい気持ちである。唯一鬼苑の後ろに控える双子の外国人だけは平気そうな顔で、気になるのか二人ではなく刃たちの方を見ていた。
「おまえも、ということはそちらも?」
「ああ、折角の追加ルールを利用しない手はない。そのついでに桜香の相手もするさ」
「相手をするのは、本当に白坂さんだけですか?」
その双子が見ている先を見れば違うと断言できる。それだけ彼女らの視線には、明確に彼を倒したいという闘争心が滲み出ているのだから。
「ああ、その辺りはおいおいな。おまえも狙ってるんじゃないのか?」
「ふふふ、さぁ、どうでしょうか」
正直なところ四条尊の相手で忙しくなりそうだが、彼らは親友同士。四条尊を追い詰められば必然的に彼が立ち塞がってくるのは時間の問題だ。ならいっそのこと……。
「なら、もう一度組んでみますか?」
「こっちは欠員がいるんだ。おまえの遊びに付き合っている暇はない」
「なるほど、それは残念」
あっさり突っ撥ねられたが、藤原は全く気にした様子はない。
残念と口では言っているが、鬼苑とのやり取りはただの確認程度。彼の意志が自分の予想と違っていた場合の保険でもあったが……。
(仮に私が彼を狙ってもこちらが彼に付く可能性は低いですね。なら鬼苑君たちのグループは後回し。先に……)
「彼女を……取るとしますか」
「……」
聞こえていたが、面倒だと鬼苑は何も聞き返さない。
短いようで長い準備タイムは終わって、いよいよダンジョン内部へ。
*作者コメント*
さむくなるとねむい。よるたいへん
久々に尊君が登場しました! わ、忘れてなんかありませんよ?
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