神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

ルド

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第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らして学園トップ共を蹴落とす)

第38話 藤原輝夜は大物喰いだが、石橋を叩くタイプ(弟子は学園から嫌われていた)。

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「これ以上は放置できないぞ藤原」

 藤原グループは第三層(川ばかりの赤い洞窟)を拠点としたのは三日目の昼頃。
 組んでいる他のグループとは第一層と第二層でコンタクトを取り、夜の時点で大半のチームが第三層へ到着していた。
 本来なら三層に一部、二層にチームを固めて、ミッションや魔物討伐を独占する予定だったが、予期せぬ異常事態にポイントが多く取れる第三層を選ぶしかなくなった。
 
 それがチーム男子の大武おおたけが進言している人物。ただの普通科ではいどころか、こちらの常識をことごとく凌駕している。リーダーの藤原が興味深々な相手……。

「放置できないとは?」
「龍崎だ。もう三日もトップを独走してるんだぞ。このままでは六日目からの二倍ボーナスでも追いつけなくなる」

 龍崎刃も第三層を現在拠点にしている。階層を降りるごとに難易度とポイントも高まるが、無理して降りる必要はない。龍崎がどう考えているか知らないが、初日に一層目を突破して以降、二層も早々して第三層には二日目から入り込んでいる。

 三日目の朝からさらに爆走しており、昼の時点で二位以下とのポイント差がとんでもないことになっていた。
 
「仮に最終日まで第三層に留まっていたとしてもこのペースではとても追い付けん。早急に手を打つ必要がある」

 このままでは最終日の一位は困難。大武はチームとそしてクラスの為にも今すぐ行動を起こすべきと藤原に申している。
 戦術クラスの白坂の幼馴染としてすっかり有名になった普通科の問題児。問題児の部分は魔法実習に殆ど参加しないところから付いたが、その為に彼の実力は全く明らかになっていない。完全な未知数となっている。
 その結果、彼の独走状態をもう三日も許してしまっている。

「そうは言いますが、では、どのように手を打つと?」

 藤原に反論意思はない。寧ろ一位を目指すなら龍崎の存在はすぐにどうにかしなくてはならないと分かってはいる。だが……。 

「直接的な妨害はルール上認められてません。さらにポイントの動きから彼の行動を予想する限り、戦闘エリアは避けているようです。戦闘エリアに入らない限り我々から手を出す術はありません」

 そう言いながら彼女は思い出す。
 外の店で鬼苑と会う前に連絡があったあの男との会話を……。




「今なんと?」
『学園側と話は着いた。龍崎を退学させる為に我々も動く事にした』

 ロクに連絡もない相手からの唐突な話。少なからず唖然とする藤原だが、男は知ってか知らずが彼女の戸惑いを晴らすように理由を語り出す。

『ここだけの話、龍崎家の力は今でも学園に大きな影響を与えている。龍崎家当主の龍崎鉄は前回の春野綾の件で介入した。龍崎刃の件では奴の深夜の不法侵入したという噂があったが、それももみ消したという話だ』
「前半は知ってますが、後半のはただの噂だと聞きましたが」
『倒れていた警備員が証言している。倒れて意識が完全に飛ぶ前、門の前で龍崎刃を目撃したらしい。意識が朦朧していたから証言としては弱いがな』

 監視カメラやセキュリティも引っ掛かっていない。結局その話はうやむやで終わったと思われたが、実は陰で彼の祖父が介入していたようだ。

『いくら創設者の一人であっても学園の秩序を脅かす行為を許す訳にはいかない。だが、証拠もなく生徒を処分する無謀者も学園側にはいない』

 居たら居たで困るがな。と男の苦笑いする。だが、すぐにその笑みも消える。

「それでこの試験を利用すると? 正確にはダンジョンですか?」
『そうだ。この試験の最大のデメリットは、ダンジョンである為に外部の監視が制限される事だ。一応発信機用のバッチは付けられるが、あれは分かるのは位置だけ、そこで何が行われているかは監視する学園側にも分からない』
「けどそれで仮に彼を報復したとしても、発信機の位置を履歴で調べれば誰がやったかと容疑者が浮かんでしまいバレる恐れがあります。そうなれば龍崎家に貴方が主犯だと知られる恐れがあるのでは?」

 この試験はたとえ最下位になっても退学になるようなペナルティはない。
 勉強などによる強制的な補習や成績も下げられるが、試験一つで重い処分を下すような試験があったら流石に問題になってしまう。

『報復ではない。彼の意志で学園を辞めて貰えればそれでいい』
「どれだけ彼を虐めても彼が同意しなければ自分の首を絞めるだけですよ? 最悪の場合、警察沙汰になりかねません」
『問題ない。この件では二校からも同意を得られている。オレも動くがオレが主犯とはならん』
「二校?」

 あくまでリスクが大きいと忠告するが、電話相手は臆した様子を見せない。それどころか得意気な口調で引っ掛かる言葉を口にする。
 少し思考を巡らせた藤原は、まさかいった表情で男の回答を待つと……。

『姫門学園からも話があったようでな。表向きはお互いの友好を築く為とあるが、その裏ではあの学園の支配者が動いている。オレの方とは別経由であるが、悪くない話だと学園側も了承した』

 そして男は六日目から、つまりほぼ全ての場所が戦闘エリアとなる六日目から彼を追い詰めるつもりだ。
 確かにその前では彼が戦闘エリアに入らない限り、こちらの反則となって最悪の場合は処分を受けてしまう。裏では学園側も龍崎をどうにしかしたいと考えているが、表向きは平等な学園だ。見捨てるとは人聞きが悪いだろうが、引き際は分かっている筈だ。





 集まっている面々に視線を向けると言い聞かせるように彼女は首を横に振る。

「間違っても強行な手段は取らないでください。彼がどれだけポイントを取っても六日目、最終日までは出だし無用です」
「だ、だが!」
「大武君、鬼苑君、白坂さん、そして四条君たちのその後の行動はどうですか?」
「い、今は四条を追うように皆が三層に到着したと聞いたが───ッ、いやそうではなくて!」

 決して主張を変えない。それは大武も同じのようだが、リーダーは彼女である。
 結局最後まで意見が合わさる事はなかったが、リーダーの指示の下、チームの面々は感情を押し殺して従った。


 そして、ダンジョン内での試験が開始されて───四日目。
 第一位の彼を蹴落とそうと上位チームたちが次々と第三層に集結していた。
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