神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

ルド

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第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)

第69話 神側と魔神側の世界を越えた目的(弟子は女神を知らないが、想像はできた)。

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 次元を越える塔の内部。配下もいない一室で黄金の人外は憤怒の声を漏らしていた。

『おのれぇ……死神ィ!』

 溶けかけた震える右手を金色の魔王ファフニールは睨み付ける。原因でもある黒色の男を思い浮かべて恨みの全てをぶつけていると……。

「酷いザマだねぇー。ファフニール君?」
『クッ、貴様か』
「急な来訪でビックリしたよ。予定より随分早くない?」

 と、そこへ突如現れたのは仮面を付けた真っ白な髪の女性。龍崎刃と対決している魔神だ。

『神々の探索範囲が思ったより鬱陶しくてな。時間を短縮させて貰った』
「なんかー、集まってるみたいだけどいいの?」

 正確な人数や脅威は不明だが、魔神の彼女はちゃんと感知していた。お呼びでない来訪者たちの存在を。

『ふん、問題ない。あとこの地にある『棺』を手に入れさえすれば』
「出来ると? 此処は君が思っているよりも手強いメンツが揃っているけど」
『貴様、挑発のつもりか?』

 挑発的に魔神は笑みを見せる。魔王が殺気ととも睨み付けるが、風のように受け流す。

「まさかー、けどここでヘマしたら───分かってるかい?」
『無論だ。だが、成功した時はそちらも約束を果たしてもらう』
「ああ、故郷か……達成した暁には返してあげるよ」

 ニコリと微笑む。相変わらず信用ならない笑みであるが、魔王となった守護獣の彼にもう後は残されていなかった。




「あのー、なんでオレは縛られてるの?」
「では本題に入ろう。神喰い」
「あれぇー!? まさかの無視!?」

 ヴィットと名乗った男(変態)が叫ぶ。なんか移動したらまた鎖が飛び出て拘束されていた。今度は女の声はなくあっさり縛られて、ハッキリ言って情けない姿。ちょっと涙目じゃないか?

「本題に入る前に【神喰い】と呼ぶのは止めてください。ソレは一番隠している事なんです」
「……失礼。では龍崎君と呼ばせてもらおうか。私はシュウでは構わない」
「だったら俺の方も刃で構いません。多分歳的にもそちらが上なんで呼ぶ捨てでも大丈夫です」

 そんな上下関係よりも呼び名の方が問題なんだ。桜香は引き離せたが、単語を覚えられてたらもの凄く面倒だぞ。

「ではジン君、君は師であるシルバーより最近各異世界で発生している盗難事件について何か聞いているか?」
「師匠から聞いたのは、犯人は魔王で盗まれたのは保管していた貴重な魔法類。相手は次元を行き来可能な乗り物を持っている程度です」
「十分だ。さっき言った通り犯人は魔王。それは間違いない。で、どういう訳かいろんな世界を自由に回っており、その度にいろんな物を盗んでいるらしい。その代わり派手に動き回った為、位置に関しては大分掴めれるようになった」

 ちょうどこっちの面倒で色々と師匠に聞いていたが、正直訊かれるまで忘れていた。ゴタゴタの最中だったし。

「神々の推察から魔神側は何かしら大きな儀式を計画していると考えた。そこで中立派である私の世界の駄女……女神様の指示で次に狙われるであろうこの地に先回りして来たというわけだ」

 うん、今駄女神とか聞こえたけどスルー。直後縛られていた変態(ヴィット)が何か納得した様子で天を仰ぐ。……悟りでも開いた?

「なるほど、色々と分かった。そちらの魔法使いさんはオレ……というよりオレのバックにいる女神達が信用できないって事か?」
「察しが良くて助かるよ【四神使い】。今は二柱のみのようだが、私は女神と名乗る神を全く信用していない」

 死んだような目でダークサイド剥き出しな顔で言ってる。絶対過去に女神関係で何かあった顔だ。有無言わせない無茶苦茶な圧力を感じる。というかやっぱりこっちも異世界人か。

「男の神族より女の神族の方が感情論で暴れる傾向がある。身に覚えがあるから抵抗を諦めたんだろ?」
「あー、こっちも一応重要な物を盗られて取り返しに来たんだけど」
「厳しい話だ。そちらの女神達が暴走しないと誓うなら考えてもいいが……ハッキリ言って最大級の契約を交わしたとしても信じ切れないな」
「……可能な限り努力するからマジで頼む。此処まで来て何もしないは通じないから!」
「……」

 そんな感じで凄い渋々といった様子ではあるが、シュウさんはヴィットの拘束を解いた。女神と思われるあの女の声はしなかったのは、きっとヴィットが独り言で必死に言い聞かせたからに違いない。こっちも結構苦労してるな。というかどんだけ危ないんだよ女神って。

「つまり俺たちの役割はもうすぐ来るっていう『盗人魔王』を倒して盗品類を回収するって事ですか」
「ああ、少し違う。その倒す役目に私やクレハは含まれてない。中立派バランサーの我々はあくまでサポートがメイン(個人的な性格もあるが)。その魔王を倒すのは君と間も無く増援に来るシルバーや守護者たちだ」
「え、戦わないって……師匠も来るんですか!?」

 そこ一番重要じゃん! 魔王と同じくらい常識崩壊人な師匠が此処に来るの!?

「何か遅れているようで守護者の誰かが先に来るそうだ。申し訳ないと思うが、こちらはこの世界に対する被害軽減を中心にやらせてもらう」
「それは正直困るが、師匠たちの来訪の方が大問題なんです……」

 ヘタしたら魔王や魔神よりも厄介になる。とそこへ女性の声が聞こえて来た。

「あの……話の方は済んだんですか? さっき言ってた時間もう過ぎてますよ?」
「ん? ああ、ちょうど終わったところだよ。凪さん」

 とそこへ別の女性の声が聞こえる。別室で待機していたのか、タイミングを図っていた様子で同年代と思われる黒髪の女性が部屋に入って来た。

「紹介したいメンバーはもう二人いるが、今は彼女の紹介を優先しよう。そちらの四神使いと同じで別世界の住人だ」
「九条凪。よろしく」
「よ、よろしく」

 また別世界の人って……しかも服装からしてこっちとそんなに変わらない日本出身か? こんなに異世界転移が連続で起きて大丈夫なのか?

「すぐに動こう。凪さんに伝えた時間も大分過ぎてる」
「女神の使者が相手だと貴方が神経質になるからでしょ」

 何処からともなく手元に出した懐中時計を開いて時間を確認。ちょっと厳しそうな顔をするが、隣のクレハさんという女性が呆れていると咳払いして誤魔化した。……時間って何?

「さっきも説明したが、何度も次元移動と盗みを働いた事で奴らの移動先をある程度把握できるようになった。逆算して時間も割り出せるくらいにな」
「シュウの魔術って移動先と思われるこの周辺に結界を貼って置いたのよ。結界と言っても待機状態の為に障壁のような機能はないわ。代わりに探知機能が備わってて異次元から入り込んで来た相手も捉えるの」
「時間に関してはやはり誤差が生まれる。反応がないところを見るとまだ来てないか範囲外なんだろう」

 気付かなかった。そんな魔法、魔術?で街を覆っていたのか。さっきの鎖といい、魔術ってどういう分類なんだ?

「あ、師匠が関わってるならマドカにも知らせないと」

 桜香に見られるとマズイと思って置いていったが、この状況なら合流した方がいい。スマホを取り出してマドカと連絡を取ろうとしたが……。

「メッセージが来てる……え?」

 マナーモードにしていたからマドカのメッセージに気付かなかった。開いてみるとそこは少々意味分からない奇妙な文面が書かれて、どういう事なのかと首を傾げていると。

「ジン君、こっちも来たようだ」

 シュウさんが呟いた途端、部屋の窓がガタガタと音を立てる。次に強い地震でも発生したかのような下から衝撃。……それが何かが落下した振動と音、それに衝撃なのだとすぐさま外に出た俺たち全員が理解した。





「悪いなお嬢ちゃん、こっちも急いでんだ」
「う! ……貴様っ」

 そう言って凶悪な形相をした大柄の男(新たな不審者)は立ち去ろうとする。
 倒れている桜香はなんとか立ち上がろうとするが、峰で打たれた一撃が彼女の体を麻痺させている。……何故こうなったか、理由はもう一人この場にいる女の子。

「まったく、筋肉ダルマが騒ぐからです」
「チビ助がいきなり声かけて来た所為だ! 暗殺者かとビックリしたんだぞ!」

 マドカ・イグス、桜香が通う学園の魔法教員。幼馴染の刃とはサボり魔と補習担当者の関係で学園では少し有名であったが……。

「失礼な人です。それよりも私は彼の元に行きます。これ以上騒ぐならもうフォローしませんので」
「元々する気もないだろ。オレだってを見つけたらすぐ戻らないといけないんだよ!」

 戦闘が起きていると通報があって、近くの彼女が来てみれば……マドカと大柄の男が人気のない裏道で対峙していた。夢かと桜香は目にした光景に対して何度も疑ったが、残念ながら男性よりも先生である彼女の方が結構容赦なかった。

「マ、マドカ先生……あなたは一体っ」
「すみません白坂さん。出来れば貴女には見られたくありませんでした」

 男が乱入した桜香を沈黙させるまで手を出さなかった。つまり彼女は……。

「行きましょう。、貴方もこれ以上この子に関わるのはやめなさい。彼の逆鱗に触れたくなければ……」
「げ、まさかと思ったが、そういう事か? だったら先に言えよ」

 男は髪をガシガシ掻いて嫌そうに愚痴る。マドカは呆れて桜香は二人の様子に困惑する。そうこうしていると大きな地響き、それに爆音が響き渡って桜香は思わず目と耳を塞いだ。

「ッ、今度は何……が」

 すぐに目を開けたが、その時にはマドカも男も姿を消しており、離れたところで煙が上がっている。
 なんとか起き上がる桜香は唖然とした様子で立ち上る煙を見上げた。
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