神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜

ルド

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第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)

物語は【????】へ続く。

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「ッ──繋がった! 喚ぶぞ!」
「っ」

 光の召喚陣が展開される。強制召喚だ。
 強引に向こう側とのパスを繋げると同時に了解を取らずに召喚を行う。ご法度な召喚方法。相手から契約を破棄されてもおかしくないが……。

「頼む! 無事でいてくれ!」

 それでも俺は呼び出さないといけない。
 反応が消えた者の安否。一刻も早く向こう側で起きている異変を知らないとマズい気がした。




 夏休みの魔神騒動から一気に時期を超えて冬へ。
 マジで色々あった二学期を終えた冬休み。

「冷えますね。今日は鍋にしましょうか」
「いいなー。貰い物の餅が沢山あるし正確だから餅鍋なんてどうだ?」
「……ぷくぷく太りそうですね。私も女子なんですよ?」

 束の間の休息日をマドカと共に過ごしていた。空気も冷えた雪の季節である。
 ちなみに色々あった二学期と言ったが、師匠たちから特に指示はなかった。学園イベントが盛り沢山ではあったが、夏休みの時ほどの命懸けな騒動は皆無だった。

 面倒はあって疲れはしたが、それでも平穏と言っていい日々が続いていた。

「やれやれ、デリカシーがなくて困りますね」
「いや、そうは言っても少しくらい肉があったほうが健康的な…………?」

 雪降る商店街を歩いている最中であった。
 何気ない言葉のキャッチボールをマドカとしていたが、ふと立ち止まってなんとなく上げた手のひらを見つめた。

「刃?」
「……」

 そして思考が点となった。
 意味が分からず、どんな表情を浮かべていいかも分からず、ただ困惑したまま……

「クーちゃんとの繋がりが……
「え?」

 召喚の対象であるクマのクー。
 師匠の世界では守護獣を務めている頼りになる使い魔。
 そんな彼との契約で繋げた絆が突如消えた。

「契約が破棄されたと?」
「違う。契約は生きてる。問題は……」

 信じ難い。考えたくないが、最悪の展開が脳裏に過ってしまう。
 師匠から携帯を取り出して連絡を取ろうとしたが……

「通じない」
「刃……」

 他の連絡先にも試しにかけてみるが、どれも通じない。
 全員留守とはさすがに考えにくい。俺たちの知らない間に何か起きているのか?

「どうしますか?」
「……契約は破棄されてはいない。こっちから強引ではあるが、強制召喚をやってみる」

 言いながら人気ない場所まで移動する。
 ちょうどシュウさんが利用していたかつての廃墟。後にジィちゃんに頼んで買い取って改造した建物があったので中に入る。これで人の目は避けられる。

「始めるぞ」
「クーさん以外も呼んで見ます?」
「呼び出せなかったらな。今のところ他との繋がりに変化はない」

 今は反応がないクーを優先すべきだ。
 召喚のスキルを発動。手順を無視した強制召喚。

「『強制召喚』──“来い”クー!」

 無理やり異世界にいるクーへと繋げる。届いているかは賭けだ。
 眩しい光の召喚陣が展開される。向こうの了解も取らず、強引な召喚が成立した。
 光が爆散して衝撃で吹き飛ばされそうになった。

「うっ」
「せ、成功したんですか!?」
 
 衝撃に耐えたマドカと目を向けるが、召喚陣があった場所が煙で埋もれていた。
 微風を出して優しく吹き飛ばす。焦ったいが、見えない以上は慎重にすべきだった。

『……』
「クー!」

 なんとか召喚は成功したようだが、肝心のクーの様子は血塗れでどう見ても重傷だ! いったい何があった!?

「マドカ治癒だ! 急げ!」
「はいっ! クーさんしっかり!」

 触るのも危うそうなくらい茶色の毛皮が血で染まってボロボロだ。
 マドカが回復魔法で慎重に治癒を始めるが、意識が全然戻らない。相当なダメージを負っているが、いったい誰がこんな事を……!


「どうやらクーの方は無事なようだな。見つけてくれて助かったぞジン」


 渋い口調の幼い声。ハッとして振り返ると召喚、いや転移が発動してこっちにやって来たのか!
 開かれたゲートから見覚えのある金髪の少女と女性が出て来た。

「マドカも久しいな。こんな再会になるとは本当に残念だが、ジークが用意していた転移ゲートが思わぬ形で役立った」
「あ、アンタは……」
「シャリアさん! それに……」
「久しぶりだねマドカ」
「シーリア、お前まで……」

 シャリア・インホード。師匠の世界の守護者の一人。マドカと同じで光の妖精族。妖精魔女とも呼ばれている。
 シーリア・インホード。シャリアの娘だが、背丈もありこっちがお姉さんに見える。

「二人はどうして此処に?」
「我々はクーたちをずっと探していてな。元契約者である私ならクーだけでも探れないかとずっと探索していたが、まさかお前たちが先に見つけるとはな」
「っ! 行方不明だったって事か? 連絡してくれたらすぐに強制召喚したぞ」

 そしたらもっと早く助けれたかもしれないのに。思わずシャリアを睨んでしまうが、シーリアが庇うように言葉をかけてきた。

「連絡を取りたかったけど出来なかったんだよ! 魔神たちがあっちこっちの世界で活発に動き出して、変なゴーレムまで出して来て! それが特殊な妨害電波を流すから別世界に出てる守護者たちとも連絡が取れなくてジークさんが……」
「ジークも外に出てる。多分別世界の連中たちに応援を求めに行ったんだろう」

 こっちの世界の魔神騒動はすっかり鎮火したと思ったら……。
 連絡が取れなくなっているのは魔神の奴ら所為って事か。

「……転移が出来るならなんでこうして俺の世界に直接来なかった?」
「妨害電波が影響して奴らが何処に潜んでいるか分からなくなってる。ちゃんと特定できるまで不用意に転移ゲートを使うなと言われた」

 魔神の奇襲を警戒してか。しかも此処は何度か魔神が襲って来た世界だから余計に来れなかったという訳か。

「それにジークが寄ると思っていた。その様子ではまだ来てないようだが」
「俺やマドカがいて、あとサナさんの双子娘もいるのが理由か?」
「……お前に助力を得るかは、正直我々の中でも意見は割れている。ジークや私などは強くは求めてないぞ?」
「本格的に魔神が動いるなら俺が動く十分な理由だ。奴らは俺の世界でも好き放題してる。野放しにして良い事なんてない」

 アイツはもう止められないと言った。なら絶対決着を付けてないといけない。

「終わらせるんだ。俺たちで」
「……仕方ないな」

 俺の意志をしっかり伝える。複雑そうにしながらもシャリアも頷いてくれた。

「当然私も付いて行きます。いいですね? シャリアさん」
「ハァー分かった分かった。だが、連れて行くメンバーの中にサナ弟子の娘共は含まれてないぞ?」

 マドカが当たり前ですよと主張していると、諦めたように溜息を吐いたシャリアが訂正。シーリアが付け加えて説明した。

「実力は認めてるけどまだまだ子供だから。非常事態に備えてこの世界に残しておくつもりだったの」
「ていう事は……」

 マドカだけ連れて行くつもりだったと? 絶対俺も行きますよ?

「言っておくが、マドカでもないぞ。そんな事したら絶対お前も付いて来るだろ」
「……もしかして」

 クーへの一定の治療が完了したマドカが小さく呟く。脳裏に思い当たる人物が浮かんだか?

「ちなみにマドカ、たぶん奴の事を考えてるかもしれんが、そちらはもっと違うぞ? そもそも奴は永久追放扱いだ。この世界から出た途端神々に魂ごと潰されるだけだ」
「あ、そうでしたね。では他に誰を……?」

 と、マドカの方も違うときた。じゃ誰なんだと俺もマドカも首を傾げる。

「その様子だと二人とも知らんようだな。
「彼って結構めんどくさがり屋だったから関わる気もなかったなんだろうねぇ。……あ、来たみたい」

 呆れた様子のシャリアとシーリア。シーリアが後ろの入り口の方を見て呟いたので俺たちも振り返ると……


「……転移の反応が二度もあったから来て見れば……アンタらか」


 扉を開けて入って来たのは、黒い学ランを来た青年だ。……魔力は感じるが、全然気配がなかったぞ?
 着崩した制服からして中学生だろうか。ボサボサした整ってない黒髪(走った影響ではなさそうだ)。なんか正気が乏しいボーとした瞳をしているけど……え、まさかの?

「こ、こいつなのか?」
「うむ、アイツだ」
「わ、私も知りません。どちら様なんですか?」
「仕方ないよ。私だってつい最近まで知らなかったんだから」

 困惑する俺とマドカ。マジかよと尋ねてみるが、シャリアはよく分からん硬い顔で肯定。
 シーリアの方も知っているようだが、なんか訳ありなのか。少し困った感じでマドカにフォローしていた。いや、フォローになってるのか?

「……特に無いなら帰っていいか?」
「いいわけあるかアホ。クーを回収するついでにお前を呼びに来たんだ」
「えー? 何で?」

 サナさんの娘たちも決して弱くない。彼女らを差し置いても優先される即戦力。……には全然見えないんだけど。

「本当に大丈夫なのか?」
「ハァ、ついでに自己紹介しておけ
「……そういえば初対面だったな。こりゃあうっかりした」

 特に表情を変えず男はこちらを見る。戦闘中の零さんのような冷たい無表情とはまた違う。本当にやる気のない無感情な顔がこちらに向けられた。

「初めまして神喰いブレイド先輩」
「せめてどっちかにしてくれ。いや、神喰いって……お前は知ってるのか?」
「一応は……じゃあ、ブレイド先輩?」
「悪い。普通に名前にして」
「了解、刃先輩。オレは桜飛鳥さくらあすか……向こうではアスカ・サクラです。まぁ、テキトーによろしく」

 あだ名でも普通にイヤだわ。
 男は特に表情を変えず了承した。適当でいいのか。

「ま、待ってください! え、?」
「? ああ」
「ん? あ……え?」

 慌てた様子でマドカが聞き返す。男、アスカは僅かに首を傾げつつ頷くが……サクラ?

「サクラって……確かトオルさんの師匠が」

 言われてふと記憶を探ると筋肉剣士トオルさんの師匠が……確かサクラだったような。そう確か……

「『無双』アヤメ・サクラだ。こいつはあの最強剣士だった女の息子だ」
「はい、息子です」
「私たちは全然知らなかった。知ったのは本当につい最近。彼がアヤメさんみたいに魔王の軍勢を狩まくっていたの。一人でね」
「友達いなかったから」

 シャリアは何とも言い難い顔で告げる。シーリアはなんか嫌っているようで無感情なアスカを睨み付けながら補足説明。……今さらっと魔王軍勢で言わなかったか? しかも一人で? 無感情でピースしているけど。友達いないのか。

「彼女曰く彼もそうだ。最強の剣士の称号はトオルが引き継いだが、無双の称号は彼が引き継いでいる」
「こんなやる気ゼロで枯れた流木みたいな奴だけど、紛れもなく無双の剣士。この男は魔王も斬れる『超越者SSランクよ」

 どうやらとんでもない戦力がこちらの世界にいたらしい。
 何でこの世界で学生をやっているのか知らないが、二人が強引にでも連れて行こうとした理由をよく理解した。



 物語は【オリジン・ユニヴァース】破滅への序章へ続く。



おまけ

「……帰っていいか?」
「ダメだと言ってるだろ」
「……本当に大丈夫なのか?」
「性格はアレだが、戦力としては信用できる……筈だ」

 ──ヤバい。不安しかないぞこのメンツ。
 そもそも俺たちだって準備もしてないし……腹を満たさないと戦も何もないか。

「まず飯を食うか。マドカ、鍋はどうする?」
「闇鍋一択。見えなければ栄養タップリなモノなので安心してください」

 そんな闇鍋聞いた事ないんですが……選択肢は残念ながらなかった。

*作者コメント*
 はい、というわけで次作は全員参加の『オリジン・ユニヴァース』となりました。
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