クズ王太子に婚約破棄された公爵令嬢、久しき日の約束を果たすと年下王子に溺愛される〜君との愛が真実だった?もう遅い〜

ゐをり

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四話 再開

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「お久しぶりです。殿下、その......お返事のことなのですが......」
「ん? あぁ、立ち話も何だから、まずは座っておくれ。」


 挨拶をしながら、アリアンヌは久しぶりに会うナイトレートのことを観察した。あの日も会ったには会ったのだが、状況が状況だった為にあまりナイトレートのことをにれていなかった。

 それにしても……大きくなりましたわね____

 アリアンヌが最後にナイトレート似合ったのは彼が10歳の時で2年前だ。成長期を迎えた少年の背丈が伸びるのは早いもので、以前あった時は自分の頭より拳一つ分ほど小さかったのだが、今ではその逆だ。

 まだ12歳である彼を見上げることになると思っていなかったアリアンヌは少々驚きながらも、向かいの席に座るナイトレートを凝視していた。

「それで......返事の方は......?」
「婚約のお話ですが......」

 ゴクリ、と唾を飲む音が静かな部屋に響く。この部屋にはアリアンヌとナイトレートしか居ないため、静かなのは当然である。

「慎んでお受け致します......!」
「そうか......やはりダメだよな......美しい貴女ならきっと各国の王太子や世界有数の権力者の子息から引く手数多......って今何と?」

 ナイトレートは予想外の言葉に思わず聞き返してしまう。

「ですから、殿下。婚約の件は正式に、お受け致します。」
「何!? ほ、本当に今『受けてくれる』と言ったのだな!?」

 ナイトレートがその場でガッツポーズをしてもう一度確認を取ろうとしてくる。

 ____殿下ってこんな性格だったかしら……? ってそれよりも!

 ____す、少し近くないかしらぁぁぁぁ!?

 そう、ナイトレート本人は極度に興奮しているため全く気がついていないが、今舞い上がっているナイトレートはアリアンヌに確認を取るために、鼻と鼻が触れる寸前の距離まで、顔を近づけているのである。

 アリアンヌは、ナイトレートからの評価からもわかる通り、美しい女性で、幼い頃から第一王子と婚約していた____が、言ってしまえばそれだけである。

  ヨハネはアリアンヌのことを心から大切にしていなかったので、体を重ねることはおろか、接吻や抱擁を交わすことすら、数えられる程度だったのである____

 そんなアリアンヌがいきなり、興奮した美少年に顔を近づけられるとどうなるだろうか。

 ____で、殿下ってこんなに格好良かったかしら......?

 これである。最早政略結婚とは何なのか、というレベルの即落ちである。元々アリアンヌはナイトレートに魅力を感じて婚約を承諾した訳では無い上、そもそも彼が人目に晒されることがない為あまり知っている者は居ないのだが、第二王子、ナイトレートはかなりの美男子である。今まで意識していなかった相手を不意に意識してしまえば、恋愛音痴のアリアンヌのお花畑思考は彼女自信には止められない。


「はっ!? も、申し訳ない! アリアンヌ嬢! つい一人で舞い上がってしまっていた! そ、それより、顔が赤いようだが......熱でもあるのか……?」

 言うまでもないが、ナイトレートは一般人はおろか、社交界ですら顔を知る者が少なく、存在自体が幻の様な存在自体である。その為、当然彼に女性経験など無い__為、ナイトレートはアリアンヌが風邪を引いたと思い込み、額と額を合わせて熱を測ろうとした。病弱で有名な彼が、熱のありそうな時何時も従者にそうされていたからである。しかし、そんなことを少し顔を近付けただけで恥ずかしがってしまうアリアンヌにしてしまうとどうなるか。

 ____ふぇ!? な、ないとれぇとでんかぁ!? あぁ、もうだめぇ……

「あ、アリアンヌ嬢ぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 何と普段無表情を貫く為に氷の令嬢とまで呼ばれたアリアンヌの脳がオーバーヒートして、顔を真っ赤にしたまま倒れてしまったのである。

 こうして、アリアンヌはナイトレートの住む離宮の医務室に運ばれることとなった____因みに、ナイトレートがお姫様抱っこで運んだのだが、アリアンヌはそれを知る由はない。

 
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