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「全く、愉快な夢だったぜ」
目を閉じながら、そう一言放った。何処か違和感を覚えた。本来であれば、その放たれた言葉は壁にぶつかり辺りに散り散りに舞うのである。しかし、空気に馴染んでしまったようなそんな感覚と言える。
目を開くと青空が広がっていた。正しきリアクションとして用意しておいた、見たことない天井だというセリフは、空の青さに吸い込まれていったのであった。
「どこ、ここ!?」
何のドッキリに掛かっているのだろうか? にしても、俺は有名人でも何でもない。ただの高校生……ゲーマーだ。
感嘆符と疑問符が頭の中で飛び交っている。まるでFPSゲームの弾丸の様に……
ライトマシンガンの如く玉切れしなさそうな感嘆符と疑問符達。しまいには、爆弾の如く脳内ではじけ飛ぶ始末。
「いやいや、ないない。これも、何かの夢だ。明晰夢レベルの100の俺だったらほっぺたをつねれば夢から、痛って。醒めない」
俺の顔は青ざめた。
すぐさま、上半身を起こし辺りを見渡す。スライムがうごめく何の変哲もない草原だった。
「RPGだと……」
落ち着け、勇者夜桜海青。いや、勇者カイセイ。下の名前は小学生っぽいな。勇者ヨザクラ。濁点問題はこの際ほっておけ。
「おそらく俺はレベル1の勇者だとして、スライムを倒してレベルアップ・近くの王国を探すという二択を迫られているといったところだろう」
しかし、あたりを見渡せど王国はなかった。
「神のあれがチュートリアルだったとしたら……もっと誠意をもって聴くべきだったぁーー」
行動しなくては何も始まらないのも事実。手探りに地面を触っているとちょうど投げやすそうな石ころと出会った。
「とりあえず、これを投げてスライムにぶつければ倒せるはずだ。石の必要数は10個だ」
勝手な基礎知識として、スライムのHPは10であり、石ころを投げる事で与えるダメージは1だと認識している。
すぐさま、石を10個集め戦闘体制に入った。
「信じてるぜ、俺のコントロール」
1メートル先のスライムへと投げつけた。
命中した。
「ナイス、俺のコントロール!!」
背中に怖気がはしる。
スライムに目はないけれども、睨まれているような感覚。この身体目掛け殺気を飛ばしているとでもいうのか。
恐怖心のあまりターン制という常識を塗り替え、リアルタイムバトルへと変更した。連続投球は見事に全てスライムへと着弾し、俺は戦いに征したのであった。
はずだった……
スライムは、元気そうだ。元気に跳ねまわっている。俺は全力で逃走している。
「スライム思ったよりも足速いよ」
スライムに足なんて無い。
春に行われた、体力テストぶりの全力疾走だ。俺、4カ月も走ってなかったんだな。
足がもつれ大地へとダイブする。とっさに身を翻し、右手を突き出し、どこかで聞いた呪文をひたすらに唱えていた。
「ファイア! メラ! アギ! ひのこ! ブラックマジック!」
心からの叫びは具現化することなく、広大な草原の彼方へと散らばっていくのであった。
転生って何回まで出来るんだろうな。次は神様のいう事ちゃんと聴こう。そういや、冷房つけっぱなしだった。父ちゃん今月はしっかり稼げよ。
目の前でスライムがはじけ飛ぶ。
その光景に何とも言えない感動があった。
「うおおおお。俺のブラックマジックスゲェ――!!」
「いや、今スライム倒したの私なんだけど」
「えっ?」
「初めまして、私はレイ」
腰に剣を携えた少女に手を差し伸べられた。細いしなやかなその腕でスライムを倒したのが信じられなかった。何よりも可愛かった。
慌てて自力で立ち上がりズボンの埃を払った。って今気づいたけど学校指定のジャージじゃん。
「変わった服装ね。君の名前は?」
「俺?」
ゲーマーだからと言って、コミュ力が皆無なわけではない。最近のゲームにおいてコミュニケーションは攻略の為必要不可欠なのである。つまり、ゲーマーだからと言ってコミュ力ゼロというレッテルは、この世に存在しないのである。
「オレノナマエハ、ヨザクラカイセイデス」
「変わった、話し方ね」
「へへ」
「もっと肩の力抜いたら」
「チカラナンテハイッテナイデスヨ」
レイはあきれ顔で俺を抱きしめ、頭を撫でた。
「ちょっと待って、ちょっと待って」
呼吸が荒くなる。
「何してるの!?」
「何って、状態異常回復魔法を貴方に掛けたのだけれど?」
「状態異常? 俺が?」
「君のステータス異常よ」
「俺のステータス? そんなものが見えるのか?」
「ええ。このバングルを付けていればステータスを見る事が出来るわよ。そんな事、子供でも知っていると思うのだけれど」
俺はこの世界について何も知らない。むしろ誤った理解しかないのかもしれないと悟った。
「今までに見たことない状態異常の数ね。一体どうしたらこんなに状態異常が付くのかしら」
どうやら俺の干支一周分の生活習慣病がありとあらゆる状態異常を引き起こしたらしい。運動と食事がよろしくなかったのだろうな。
「そうだったのか、そんなに状態異常が付与されていたとは……心の準備も整ったし」
「何か言った?」
「いえ何も、早速状態異常回復の続きを」
「続きをって、もう終わったわよ」
「えっ。そうなの」
「それよりも、何処の王国から来たの? 見たこともない紋章ね」
俺のジャージには校章と夜桜と書かれいる。レイは不思議そうに眺めていた。
「えっと、ジャパン!!」
何となく英語で言ってしまった。個人的にはかっこつけたつもりではあったが、ジパングの方がかっこよかったかもしれない。
「失礼だけど聞いたこと無い王国ね。でも、あれだけの状態異常を抱えてどうやってここまでやって来たの?」
レイは、凄く不思議そうにこちらを見つめている。今までにこれ程の注目を浴びたことが無い。俺の体は異常を感じ掌に汗をかき始めた。
「それが、俺にもよく分からないんだ」
笑ってごまかした。
「頼む、この世界の事を教えてくれスライムの倒し方とか、俺はここで死にたくない」
「夜桜海青は、草原ごときで大げさね。教えてあげたいところだけれど、私にもやるべきことがあるのよ。他をあたってちょうだい」
「他ったって何処にも行き場所なんて無いじゃないか!!」
レイが俺の後方を指さした。
「ほら、王国があるでしょ。あそこでまずは装備を整えなさい」
不意に、例からモノが投げ渡される。
「バングルぐらいつけておきなさい。私はこれで失礼します」
「ありがとう」
面白そうな冒険が始まりそうだと、俺は確信した。
目を閉じながら、そう一言放った。何処か違和感を覚えた。本来であれば、その放たれた言葉は壁にぶつかり辺りに散り散りに舞うのである。しかし、空気に馴染んでしまったようなそんな感覚と言える。
目を開くと青空が広がっていた。正しきリアクションとして用意しておいた、見たことない天井だというセリフは、空の青さに吸い込まれていったのであった。
「どこ、ここ!?」
何のドッキリに掛かっているのだろうか? にしても、俺は有名人でも何でもない。ただの高校生……ゲーマーだ。
感嘆符と疑問符が頭の中で飛び交っている。まるでFPSゲームの弾丸の様に……
ライトマシンガンの如く玉切れしなさそうな感嘆符と疑問符達。しまいには、爆弾の如く脳内ではじけ飛ぶ始末。
「いやいや、ないない。これも、何かの夢だ。明晰夢レベルの100の俺だったらほっぺたをつねれば夢から、痛って。醒めない」
俺の顔は青ざめた。
すぐさま、上半身を起こし辺りを見渡す。スライムがうごめく何の変哲もない草原だった。
「RPGだと……」
落ち着け、勇者夜桜海青。いや、勇者カイセイ。下の名前は小学生っぽいな。勇者ヨザクラ。濁点問題はこの際ほっておけ。
「おそらく俺はレベル1の勇者だとして、スライムを倒してレベルアップ・近くの王国を探すという二択を迫られているといったところだろう」
しかし、あたりを見渡せど王国はなかった。
「神のあれがチュートリアルだったとしたら……もっと誠意をもって聴くべきだったぁーー」
行動しなくては何も始まらないのも事実。手探りに地面を触っているとちょうど投げやすそうな石ころと出会った。
「とりあえず、これを投げてスライムにぶつければ倒せるはずだ。石の必要数は10個だ」
勝手な基礎知識として、スライムのHPは10であり、石ころを投げる事で与えるダメージは1だと認識している。
すぐさま、石を10個集め戦闘体制に入った。
「信じてるぜ、俺のコントロール」
1メートル先のスライムへと投げつけた。
命中した。
「ナイス、俺のコントロール!!」
背中に怖気がはしる。
スライムに目はないけれども、睨まれているような感覚。この身体目掛け殺気を飛ばしているとでもいうのか。
恐怖心のあまりターン制という常識を塗り替え、リアルタイムバトルへと変更した。連続投球は見事に全てスライムへと着弾し、俺は戦いに征したのであった。
はずだった……
スライムは、元気そうだ。元気に跳ねまわっている。俺は全力で逃走している。
「スライム思ったよりも足速いよ」
スライムに足なんて無い。
春に行われた、体力テストぶりの全力疾走だ。俺、4カ月も走ってなかったんだな。
足がもつれ大地へとダイブする。とっさに身を翻し、右手を突き出し、どこかで聞いた呪文をひたすらに唱えていた。
「ファイア! メラ! アギ! ひのこ! ブラックマジック!」
心からの叫びは具現化することなく、広大な草原の彼方へと散らばっていくのであった。
転生って何回まで出来るんだろうな。次は神様のいう事ちゃんと聴こう。そういや、冷房つけっぱなしだった。父ちゃん今月はしっかり稼げよ。
目の前でスライムがはじけ飛ぶ。
その光景に何とも言えない感動があった。
「うおおおお。俺のブラックマジックスゲェ――!!」
「いや、今スライム倒したの私なんだけど」
「えっ?」
「初めまして、私はレイ」
腰に剣を携えた少女に手を差し伸べられた。細いしなやかなその腕でスライムを倒したのが信じられなかった。何よりも可愛かった。
慌てて自力で立ち上がりズボンの埃を払った。って今気づいたけど学校指定のジャージじゃん。
「変わった服装ね。君の名前は?」
「俺?」
ゲーマーだからと言って、コミュ力が皆無なわけではない。最近のゲームにおいてコミュニケーションは攻略の為必要不可欠なのである。つまり、ゲーマーだからと言ってコミュ力ゼロというレッテルは、この世に存在しないのである。
「オレノナマエハ、ヨザクラカイセイデス」
「変わった、話し方ね」
「へへ」
「もっと肩の力抜いたら」
「チカラナンテハイッテナイデスヨ」
レイはあきれ顔で俺を抱きしめ、頭を撫でた。
「ちょっと待って、ちょっと待って」
呼吸が荒くなる。
「何してるの!?」
「何って、状態異常回復魔法を貴方に掛けたのだけれど?」
「状態異常? 俺が?」
「君のステータス異常よ」
「俺のステータス? そんなものが見えるのか?」
「ええ。このバングルを付けていればステータスを見る事が出来るわよ。そんな事、子供でも知っていると思うのだけれど」
俺はこの世界について何も知らない。むしろ誤った理解しかないのかもしれないと悟った。
「今までに見たことない状態異常の数ね。一体どうしたらこんなに状態異常が付くのかしら」
どうやら俺の干支一周分の生活習慣病がありとあらゆる状態異常を引き起こしたらしい。運動と食事がよろしくなかったのだろうな。
「そうだったのか、そんなに状態異常が付与されていたとは……心の準備も整ったし」
「何か言った?」
「いえ何も、早速状態異常回復の続きを」
「続きをって、もう終わったわよ」
「えっ。そうなの」
「それよりも、何処の王国から来たの? 見たこともない紋章ね」
俺のジャージには校章と夜桜と書かれいる。レイは不思議そうに眺めていた。
「えっと、ジャパン!!」
何となく英語で言ってしまった。個人的にはかっこつけたつもりではあったが、ジパングの方がかっこよかったかもしれない。
「失礼だけど聞いたこと無い王国ね。でも、あれだけの状態異常を抱えてどうやってここまでやって来たの?」
レイは、凄く不思議そうにこちらを見つめている。今までにこれ程の注目を浴びたことが無い。俺の体は異常を感じ掌に汗をかき始めた。
「それが、俺にもよく分からないんだ」
笑ってごまかした。
「頼む、この世界の事を教えてくれスライムの倒し方とか、俺はここで死にたくない」
「夜桜海青は、草原ごときで大げさね。教えてあげたいところだけれど、私にもやるべきことがあるのよ。他をあたってちょうだい」
「他ったって何処にも行き場所なんて無いじゃないか!!」
レイが俺の後方を指さした。
「ほら、王国があるでしょ。あそこでまずは装備を整えなさい」
不意に、例からモノが投げ渡される。
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