【最弱の勇者】身体レベル0のゲーマーが異世界転生しました。

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1章

2話

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「しかし、立派な王都だな」

この王都が栄えている証でもあるように、人々で賑わい荷馬車が行き交いしている。王都内に川が流れているようで水の都と言っても過言ではない。先ほど目にした自分の貧弱なステータスを忘れさせる光景だ。

荷馬車が運んでくるモノは種々様々。鮮度の高い果物や野菜、何に使うかよく分からない金属類なんかも運ばれてきているようだ。目を疑ったモノとすればモンスターを運び入れていたことくらいか。スライムなんかとは比較に出来ない強そうなモンスターだった。あれは生け捕りなのだろうか?

「そこの変わった服の旦那、果物はいかがかな?」

見た目アラフォー位のほっそりした小柄な男が話しかけてきた。って俺、旦那って言われる程、老けてないんですけど。

「悪い、金ならないぞ」
「なんだよ、無一文かよ。話しかけて損したぜ」

何て柄の悪い奴だ。

「ちょっと、待ってくれ」
「なんだよ、金ないんだろ。こっちは忙しいの、今日のノルマ捌かなきゃならねぇんだから」
「金はどうやったら手に入るんだ」
「はっ? お前正気か? 働き手何ていくらでも募集してんだろ」
「そうじゃなくて、モンスター討伐したりとか……RPGぽいことだよ」
「アールピー? お前、あれか? 冒険者にでもなりたいって奴か」
「そうだ。その冒険者になりたいって奴だ。たぶん」
「じゃあ、紹介してやるよ。冒険者志望の勇者さんよ。俺の名前はジェムって言うんだ。出世しても忘れるなよ。ついてきな」

この世界で冒険者ってそんなに立派な身分なのか? でも、勇者さんって言ってたよな。

ジェムに引き連れられ街路を進む。

もしかして、俺このまま奴隷商へ引き渡されるとかそんなことないよね。知らない人についていくなと母国ジャパンでは、教えられていたけれども……いっそのこと奴隷になって働いていた方がいいのか? プレイ時間で言えばまだ30分程度だ。この国、いや、この世界の事なんて何一つわかっちゃいねぇ。

さっきのスライム戦でも思ったが、この世界に俺の常識は通用しねぇ。とりあえず、まずは操作に慣れる。それが、ゲーマーである俺の見解だ。

「着いたぞ」
「もう、着いたのか。思ったよりも速かったな」
「とりあえず、中に入れって」

俺は、外観からは何屋なのか予想すら出来ない建物へと入った。扉が開かれ真っ暗な室内へと放り込まれた。

「これ、はめられたな」

不意に、明かりが灯る。

「ジェム、お客さんかい?」
「冒険者候補だよ」
「ほう、珍しいね。1日に2人も来るなんて」
「他にも候補がいたのか、珍しいこともあるもんだな」

冒険者候補が珍しい? 勇者という存在はあまり必要とされていないのか?

「私はカルタルニルよ。気軽にカルとでも呼んでちょうだい」

長身で程よく筋肉質な細い身体。長い赤毛をポニーテイルに結い上げた女性だった。

「ところでどうして冒険者になりたいと思ったの」
「この世界を生きるのに、それ以外の方法が思いつかなかったからだ」
「フフフ。面白い子連れてきたじゃないジェム」
「へへ、気に入ってもらえて何よりだよ」
「ここにいるジェムも、初めて会った時は冒険者志望だったのよ」
「やめろよ。その話は掘り返すなって。ほら紹介料100ペレよこせよ」
「いいだろう。面白そうな奴だおまけに20ペレつけとく」
「マジで、よっしゃ。じゃあ、俺は仕事に戻るから、分からないことがあればカルに何でも聞くといいよ。またな」

出世しても忘れるなよって言ってた奴が、飽きれるぜ。結局金かよ。悪い奴ではなくてほっとした。

「カルさん、冒険者ってそんなに珍しい職業なんですか?」
「いや、そんなに珍しくはないけれど飽和状態なのよね。故に新規冒険者がなかなか現れなくてね。このお店はね、かつて冒険者のスクールだったのよ。出世払いってことにしていたのだけれど多くの冒険者に踏み倒されちゃってね」
「やっぱり、金なんですね」
「お金は大事よ。自由の象徴よ」

お金を手に入れてからお金を手放した国は存在しない。お金にはとてつもない魅了の魔力がこもっているのかもしれない。世界が変われど、やはり、お金は重要であるようだ。

バイトしたこと無いけど……

「分かりました。出世払いでお願いします」
「じゃあ、此処にサインしてね。こんな紙切れ何の役にも立たないのだけれどね」

修繕工事が必要なんじゃないのと言わんばかりの店内を見れば、説得力あるな。いや、そんな言葉に説得力何て必要ないよ。

不敏に思い、明日にでも成果を出してやろうと思った。

「この世界で、冒険者って何をすればいいんですか? 草原のスライムを倒せば100ペレ位稼げますか?」
「面白い冗談ね。草原のスライムなんて1経験値位にしかならないでしょ。お金を稼ぎたければ草原を抜けないとお話にならないレベルよ。っで、冒険者ってのはね、人の為に働く職業なのよ」
「人の為に働く職業ですか」
「問題発生・問題解決・報酬金。このサイクルで冒険者は暮らしているのよ」

今まで、自分を喜ばせるためだけにゲームをしてきた俺には考えられないシステムだ。俺が考えていた将来図は、楽しい事・報酬金というサイクルを生み出す事だった。つまり、ゲームして稼げればなと思っていたのであった。

「でもね、最近の冒険者ときたら、報酬金が少ないだのめんどくさいだの、冒険者としての本分を見失っているのよね、あぁーー腹立ってきた」
「まぁまぁ、カルさん落ち着いて」
「つまり、その貧弱な体では問題解決すらできないという事なのよ」
「俺、運動だけは苦手なんですよね。ハハッ」
「私が、君の事を鍛えてあげる。そういえば、名前聞いてなかったわね」
「夜桜海青です」
「よし、初期装備貸してあげるから、草原へ行くわよ」

カルさんはそういうと、段ボールから初期装備一式を取り出し、俺へと手渡していった。

「これが、ショートソードで、これが防具(布)で……」

カルさんは、何だかとても楽しそうだった。俺は学校指定のジャージから初期装備を纏いようやく冒険者としてのスタートラインに立ったのであった。

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